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【こんな映画でした】681.[フレンジー]

2020年 9月26日 (土曜) [フレンジー](1972年 FRENZY イギリス/アメリカ 116分)

 ヒッチコック監督作品。これもカラー。ロンドンが舞台。切り裂きジャックの伝統(?)のある場所での事件に仕立てられているのかもしれない。この作品もヒッチコック作品の二つの傾向の内の一つで、無実の罪で警察に追われる人物を描く。真犯人はほとんどすぐに、観客には分かるようになっている。

 ついでに言えば、今回のヒッチコックのカメオ出演もすぐに分かる。さて女優はまず元妻役でバーバラ・リー=ハント。撮影当時36歳で、なかなか綺麗な人。もっとも殺されてしまうので、苦悶の演技をしなければならないのだが。

 無実の罪に陥れられるのは、主人公リチャード・ブレイニー。俳優はジョン・フィンチ、撮影当時30歳、初めてだろう。そしてもう一人、今の主人公の恋人役の女優も良い感じであった。もちろん殺されてしまうのだが。

 原題の「FRENZY」は「逆上させる」「逆上」「狂乱」「激しい興奮」「精神錯乱」「熱狂」とかの意味があるとか。

 欧米ではこの手の事件が結構あるように思える。データはなく、偏見かもしれないが。その原因には、社会のあり方が大いに関係していると思われる。狩猟民族的な思考も関係しているのかもしれない。

 つまり男性の圧倒的優位な社会。しかしそこに目覚めた女性・権利を主張する女性が登場し、彼女たちに圧倒されだしたなさけない男どもが、そのような逆恨み的な犯行へと走るのかもしれない。

 あるいは母親と息子の関係の隠微さもあるかもしれない。息子としては母親に無限の愛情を注いでもらいたいのに、母親はそうはしない。あるいはそういった欲求に気がつかない。そこでやはり「かわいさ余って憎さ百倍」ということにも。

 調べればそういったことの分析があるとは思う。そしてもう一つ、あえて言うなら宗教、キリスト教に伏在する問題かもしれない。建前は、父と子と精霊、というが、縋る時は聖母が出てくる。厳しすぎる倫理が、人間の精神をダメにしてしまうかもしれない。

 ただ、いずれにせよ不幸なことだ。日本社会ではこのような犯行は少ないと思われるが、根っこは同じことなので、また別の形で噴出しているのかもしれない。

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