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10月14日

 「温度計はそこまで気にしないでいいですよ。それよりも火をよく見て。いまの温度の火を覚えるんです」

 温度計のない昔、職人たちは火を見ることで温度を測り、器の焼成の具合を知ったという。そう話すのは小鹿通窯(こがようがま)の主人・門馬経臣(もんま つねおみ)さん。門馬さんが会長を務める東和町の玄平窯(げんぴょうがま)で穴窯を焚くというので、ぜひにとお願いをして一日だけ窯焚きに参加させてもらった。

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 通常なら夜通し火を焚く穴窯を、玄平窯では夜9時に火を落とし、翌朝8時からまた火入れする。3日目だけ夜通し火を焚いて翌朝8時には窯焚き終了。そんな離れ業ができるのも長年の技と良質な窯があってこそ。

 あたりの畑を見てまわり、小鹿通窯のギャラリーをのぞいていたら、窯焚きの12時間などあっという間で、持っていった文庫本は読むひまもなかった。熟練たちの合間で薪をくべたのなど2時間程度だが、黄色に緑に踊る炎はいまも目の前に揺らめいている。

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