新入社員研修での気づき【2023-1】

今年も4月からIT企業の新入社員向けにプログラミング研修の講師をしている。研修は3ヶ月なのでまだ終了していませんが、1ヶ月ちょっと経った段階で気づいたことをまとめてみる。

社会人スキルの評価軸は不要

私が講師を実施している研修事業は、テクニカルスキル(システム開発に必要なスキル。いわゆるプログラミングスキル)と社会人スキル(ビジネスマナーをはじめとする、社会人として働く上で必要になるスキル)の2つの軸で新人を教育することをサービスのウリとしている。
そのため、研修生の評価もテクニカルスキルと社会人スキルの2つの軸で評価している。だけど、社会人スキルの評価軸って実はいらないんじゃないかと思うようになった。

なぜなら、テクニカルスキルと社会人スキルは、ほとんどの場合比例していて、相関関係があるから。つまり、テクニカルスキルが高い人は社会人スキルも高いし、逆にテクニカルスキルの低い人は社会人スキルも低い。
なぜそのようなことになるのか。
テクニカルスキルが高い人の行動や特徴から原因を考察していく。

テクニカルスキルが高い人の行動

  • 研修が始まる前からeラーニングなどで事前に学習している

  • 講義中は集中して話を聞き、よくメモを取っている

  • 日々予習復習をしている

  • わからないことは積極的に他の研修生や講師に質問している

  • 書籍や他の学習サービスを使って色んな手段で学習している

テクニカルスキルが高い人の特徴

  • 論理的思考力が高い

  • PC操作に長けている

  • 興味・関心が高い

  • 学ぶことを楽しんでいる

  • 自分に自信を持っている

テクニカルスキルが高い人の行動で上げている行動は、IT業界に限らず、社会人として成果を出せる人の行動と言える。
まず、何事にも事前に準備して取り組む姿勢で評価が上がる。
また、周りの人に積極的に質問している人は、その時点でコミュニケーションの面でプラス評価になる。
テクニカルスキルの高い人は周りから質問されることも多いので、人に教える場面も多く、その点でもコミュニケーション面でプラス評価になる。

テクニカルスキルの高い人は、論理的思考力が元々高い人が多い。
研修では報連相も質も評価対象になるが、論理的思考力が高い人は文章構成の組み立ても上手なので、報連相の評価も上がりやすい。
また、テクニカルスキルの高い人は演習や課題もすぐに終えることができるため、提出物が期限を過ぎることがない。
提出物が期限内に提出できない場合は遅延の報告を求めているが、そもそも遅延することがない人は評価が下がる要素が少なく、結果的に評価が上がる。

テクニカルスキルの高い人は、自分がプログラムをできることを理由に自信を持っている人が多い。
結果的に、研修内での発言が増えるし、積極性が高くなって評価が上がる。
グループでの活動でもリーダーシップを発揮する人が多く、グループに対する貢献度も高くなる。

上記の理由から、テクニカルスキルの高い人は社会人スキルも高くなる。
逆に、テクニカルスキルの低い人は、事前学習や、日々の予習復習ができていなかったり、わからないことがあっても積極的に質問できない人が多い。
論理的思考力も低くて報連相が下手だったり、自分に自信がなくて発言が少なかったりする。

結果、ほとんどの場合、テクニカルスキルの高い人は社会人スキルの評価も高いし、テクニカルスキルの低い人は社会人スキルの評価も低い。
ということで、テクニカルスキルの評価を見れば社会人スキルの評価がわかるので、社会人スキルの評価軸は不要だなと思うようになった。

もちろん例外はある。
目に見えて一生懸命頑張っているが、それでも理解が追いつかない人もいる。テクニカルスキルはないがコミュニケーション力が高くて周りから慕われるような人もいる。それはそれで評価すべきだが、単純に社会人として仕事で成果を出せるかという観点で言えば、テクニカルスキルと社会人スキルは比例している。

規律がないと格差が生まれる

私は現在沖縄で研修を実施しているが、同じ研修事業は東京や大阪などでも実施している。東京や大阪での運用方法についてあまり詳しくは知らないのだが、少なくとも沖縄よりはルールが多く、規律をガチガチに固めて運用している印象がある。教室によって違いがあると顧客からのクレームにも繋がる可能性を考えると仕方ないのかもしれな。

一方で沖縄は東京からはある程度独立していて、あまりルールを作らずに、できるだけ自由をモットーに運営している。
その結果どうなったかというと、沖縄では大きな格差が生まれてしまった。
東京でもできる人とできない人の差はあるだろうけれど、おそらく沖縄はそれ以上の格差が生まれている。

ルールを決めずに自由を尊重するということは、研修生側に主体性が求められることになる。
その結果、自分で考えて行動できる人(主体性がある人)は、成長のスピードが早いが、自分で行動を決めることができない人(主体性がない人)は、どのように勉強して良いのかがわからず、思い通りに伸びないという状況が発生している。

日本も国全体で格差がかなりあるけれど、自由を尊重しているアメリカではより大きな格差がある。それと同じことかもしれない。
ルールや規律を多く作ることは、実力ある上位層を縛り付けることになるが、実力のない下位層にとっては何も考えずに指示に従っていれば生きていけることになる。
ルールや規律がないと、上位層にとっては縛りがなくてのびのびやれるが、下位層は誰かからの指示ないと動けない。
人数の規模が国であっても教室であっても、規律を作ることのメリットとデメリットは変わらないのかもしれない。

学校や塾で実力によってクラスをA・B・Cのように分けることがあるけれど、研修でも教育の質をあげようと思うと実力によってクラス分けすることが必要なんだろうと思う。

質問数の減少

例年の研修と比較して明確に変わったと思うことがある。
それは、講師への質問の数が減ったこと。

要因はいくつか考えられるが、明確に1つ思い当たるものがある。
それは、ChatGPTの使用を許可したこと。

演習問題や課題でChatGPTにコードを丸々作成させることは流石に禁止にしたけれど、理解を深めるためのツールとしては有効に活用して良いということにしている。
結果、みんなわからないことはChatGPTに聞くようになった。それで理解が深まってコードが書けるようになれば良いけれど、明らかに人に聞いた方が早いのでは?と思うことをずっとChatGPTと睨めっこして演習が進まない人が多くなっている。

規律がないことで格差が生まれていることを先に述べたが、ChatGPTでも同じことが起きている気がしている。
理解度が高い人はChatGPTを有効に使っていて、レベルの高いプログラムをどんどん作成していく。
逆に理解度が低い人は、ChatGPTへの質問も下手で、有効に使うことができずに理解が遅れたままになっている。人に説明することもできずに理解が遅れている。

ChatGPTの利用を推奨したことは、結果として格差を広げることにつながっているだけなのかもしれない。

質問数が減ったことの弊害

ChatGPTの使用を制限するつもりはないが、1つ、質問数が減ったことの弊害がある。それは、教材の改善がしにくくなったこと。
講師への質問がないので、教材のどこが分かりにくいのかがわからない。
演習問題もみんながどこに苦戦するしているのかがわからない。
分かりにくい箇所や難しい箇所は教材を適宜修正して改良していきたいのだが、いかんせん質問がないので、どこを改善すべきかが分かりにくくなった。

理想としては、OpenAIのAPIを使って独自に質問フォームを作成しておくべきだったかもしれない。
研修生がAIに投げる質問を収集できれば、教材の改善にも使えるし、質問の仕方についてのフィードバックもできた。
来年以降も私が研修事業に関わるのであれば、そのような仕組みを作ることを検討したい。

アシスタントなしは辛い

昨年と一昨年も同じく研修を実施していたが、その時は1人アシスタントがいて、研修の業務を手伝ってもらっていた。今年は研修生の人数が若干少ないという理由から、アシスタントはおらず1人で研修を運営している。
それがかなり辛い。。
アシスタントには席替えの配置を決めてもらったり、報告書作成を手伝ってもらったり、理解度が低い研修生のサポートを手伝ってもらったりしていた。そのほか、細かい雑務を結構任せていたのだが今年はアシスタントがいないので、諸々の雑務を1人で全てやらなければいけない。
1つ1つの作業は難易度が高いわけではないが、マルチタスクが苦手なのでやることが多いと優先順位がつけられずに頭がいっぱいになる。
また、今年はカリキュラムの内容を一新したこともあり、日々のテストや演習問題も作成が間に合っていないものが多く、それらを作成しながら、講義もして雑務をこなすのはしんどい。
研修生の人数が何人であれ、研修をする上でアシスタントの存在は欠かせない。

プログラミングを学ぶ土台

これは以前にも書いたことがあるかもしれないが、改めてプログラミングの習得が早い人の特徴をまとめたい。

  • メンタル

    • 危機感(問題意識)を持っている

    • IT技術に対して興味・関心が高い

  • スキル

    • PC操作のスキルが高い

    • 論理的思考力、抽象化能力、読解力が高い

プログラミングを学びたいと思っている人、学んでいるが結果が伸びない人は意識してほしい。興味も危機感もない、かつPC操作が苦手だとどうやってもプログラミングは身に付かない。


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