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日誌 2023 10.17~18

10月17日 選択可能性と偶然

今日も1日、店番中は取材を受けていた。話せることは洗いざらい話したと思う。取材してくれた記者のNさん、良い人だったな。
夕方にオハラさんが来て、庄司さんから託されたガジュマルの苗木を渡す。このガジュマルは元々沖縄のとある公園に生えている古いガジュマルの木で、その公園がいつもデモの出発地になっているらしい。沖縄と関わりの深い庄司さん。スピリットを各地に根付かせるように、枝から増やした苗を配っている。僕は去年受け取り、大事に育てているところだ。
オハラさんは選択可能性と偶然について最近考えていると言っていた。それは都市と田舎の環境とも似ている。都市には様々な人がいて、様々な場所がある。暮らす人々は自分と趣味趣向の合う人や場所を選択する余地がある。それは豊かなことである反面、恣意的でコントロールされた環境に自閉してしまう可能性を含んでいる。一方、田舎には選択の余地があまりない。そのコントロール不能な環境が、全く異なる他者と接する時間や機会を増やす場合がある。それはしんどい面もあるが、考えやふるまいの小さな衝突や軋轢は新たなコミュニケーションの知恵を生む可能性がある。コントロールされた結果ではなく、偶然の連なりによって形づくられるものが多くあるはずだ。
オハラさんの話しを聞きながらそんなことを考えた。そしてそれは、慣行農法の畝と自然農の畝に似た話しだと思った。期待する過程がそれぞれに異なる。福岡正信の本を読んでみて欲しいと思って、『わら一本の革命』を勧めたら買ってくれた。読んでどんなことを考えたのか、また教えてもらえたら嬉しい。

夜は毎週火曜日恒例、カントクとの晩御飯会。ただいま〜と言ってドアを開けると、カントクがいる日。晩御飯のおかずの種類がいつもの倍になる日。みちくんがはしゃぐ日。週に1度じゃなくて、2度3度あってもいいな。


10月18日

ゾンビが出てくる街に暮らしているのに、ゾンビゲームを毎日プレイしている夢を見た。なんでわざわざこんなことやってるんだろうと思うと同時に目覚め、そしてまた寝た。次は「◯◯することと事物をジッと深く見つめることでタイムトラベルが可能だ。」と言われ、それを試したら僅かに時空に歪みが生じた夢を見た。◯◯が何だったか、目覚めると同時に忘れた。

今日はみちくんが遠足へ行く日。「今日は遠足だって!」と言うと、みちくんは「おーたんは?あーたんも?(父ちゃんは?母ちゃんも?)」と尋ねてきた。一緒に行くよと答えたらたまらなく嬉しいようではしゃいでいた。僕らは親も一緒に行くものだと家を出る直前まで勘違いしていた。ごめんみちくん。いってらっしゃい(笑)
みちくんを見送った後、なにやらケケで「旅をする木」メンバーたちが楽しげにピクニックみたいなことをしているのが見えたから突撃してみた。奴らは本当に楽しいピクニックを朝から堪能していた。クッキーとコーヒーでまったりしながら子どもらの送迎へ向かうつもりらしい。最高じゃねえか。
子ども園から帰宅し、僕は『汽水空港台湾滞在記』の3刷り目の入稿作業にとりかかる。3刷り目には2020年2月以来、台湾へ行けずにいる3年半の間に考えていたことや現在の心境を書いた文章を付け足した。増補改訂版というやつだ。残念ながら今月末に大阪であるアジアブックマーケットには間に合いそうにないが。
入稿を終え、りょーじあみこが2人でやってる自然農田んぼの稲刈りを手伝うことにした。着いたら結局、居るのはモーニングファーマーのメンバーたちだった。モーニングファーマーの田んぼは無農薬無肥料だけどトラクターで耕している。りょーじあみこは耕さず、完全に自然農でやっている。1家庭で自然農の田んぼをやるのはきっと大変だろう。田植えを想像するだけで、どうすればあれを毎年やる気合いを絞り出せるのだろうと僕は思う。でもりょーじあみこは来年もやる気満々のようだった。ストイック。凄すぎるぜ。
明日はモーニングファーマーの稲刈りの続き。我が家に9時に集まり、再び竹切りからスタートすることになった。「また明日」と言って、それぞれの車で畦道を1列で進む。なんかのクルーズのようで楽しかった。

5時前にみちくんを迎えに行く。最近は毎日、「んごうしおるよ。ほら。(ダンゴムシおるよ)」と言って、子ども園のそばのダンゴムシスポットへ連れていかれる。でも、先週辺りからダンゴムシは姿を消した。もう冬眠をはじめたのかもしれない。カニももういない。帰り道に畑に寄って野菜を収穫。そのまま僕とみちくんは薄暗くなるまで散歩をし、リンちゃんモカちゃん(近所のチワワ)の家の方へ向かう。ちょうど飼い主のおばちゃんが家の前にいて、わざわざリンちゃんモカちゃんを連れてきてくれた。チワワは気性が荒い場合が多いけど、彼らはとても穏やかだ。僕はリンちゃんモカちゃんを優しいね~と言って撫で、おばちゃんは犬に対して丁寧なみちくんの振る舞いを見て同じく優しい子だね~と言ってみちくんを撫でる。

晩ごはんは米粉ヌードルでつくったパッタイ。むちゃくちゃ美味かった。みちくんもパッタイが大好きなようで、特にトッピングのレモン汁に夢中だった。レモン汁を舐めてちょっと酸っぱいような顔をした後に「あまい」と言う。酸っぱさの奥にある甘みをよく感じているようだった。ナンプラーとレモン汁の相性の良さは最高で、この味付けがあらゆる料理の中で僕は一番好きかもしれない。レモンを育てなければと思う。

晩ごはんを食べてから、先日の運動会の様子が収録されたDVDをみんなで鑑賞する。みちくんはあらゆる掛け声を覚えていて、映像と一緒に雄叫びをあげたり踊ったりしている。画質の粗さが昭和的で、もう既に20年後から今を見ているような気持ちになった。ふとアキナを見ると窒息死しそうになってうずくまっていて、何かと思うと演目の「うさぎなんだよね」がパッケージには「うなぎなんだよね」と間違えて表記されてあって、それに死ぬほどウケているらしい。
寝る前、みちくんは「おーたん(父ちゃん)」と「あーたん(母ちゃん)」を交互に繰り返し、僕らは呼びかけに応じてその都度「はーい」と返す。みちくんも嬉しそうだけど、僕は多分それ以上に嬉しい。



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