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「第2のふるさと」を探して

「古い空き家を、中古の軽自動車ほどの値段で購入し、リノベの助けを求めたら、全国から人が応援に来てくれた」(若い夫婦の話)
「鹿はいても人が近寄らない、山間に開いた焙煎珈琲店に、評判で遠方から人が通うようになった」(Uターンした店主曰く)
季節に合わせて百通りの手仕事をする(これを百姓という)、脱資本主義の村づくりを始めた移住者の若者たち。
築百年以上の木造建築を再生し、城下町に新しい街並みを作る外国人。
農薬のない里山を探して日本全国を旅し、安心の棲家に辿り着いた家族。

自然環境や建物に、新しい価値を見出し、持続可能な地域づくりをする人が今や全国各地にいるはずだ。

観光庁は「第2のふるさとづくり」と称して「何度も地域に通う旅、帰る旅」を推奨している。

私は昨年40年ぶりに東京から九州に戻り、各地を旅した。博多に住み「唐揚げ」で有名な故郷の中津市には「ふるさと現物納税」と称して何度も通っている。地元に泊まり、食事をし、土産を買って帰るだけだが、何より冒頭で紹介したような、人との新しい出会いが新鮮で、繰り返し足を運ぶ理由になっている。

「暮らすように旅をする」ことが可能な時代となり、気の向くところ、好きなところ、縁のあるところに、自分の第2のふるさとを持つのは素敵なことかもしれない。

それでも、知らない地域で暮らすのはハードルが高いと言う人がいるだろう。しかし、少し勇気を出して話かけ、一人でも知り合いができると、その土地への親近感は各段に変わり、新しいふるさとの発見につながるに違いない。

地域の魅力は、自然や文化遺産だけでなく、そこに住む人たちにあると思う。農業や漁業の従事者がいて、工芸やアートに携わる人、学芸員、老舗の店主や料亭の女将がいる。そして、寺や神社を守る人、古くからの祭りや民話を受け継ぐ人がいる。更には、おしゃれなカフェを運営し、クリエイティブな仕事に携わる移住者もいるだろう。こうした人たちとの出会いは、自分の人生の幅を間違いなく広げるはずだ。

地域には課題もあるが、観光や農業の強みを活かして、いち早く循環型社会へと移行するチャンスがある。訪れる人と住民との間に、フラットな交流が始まれば、必ずや化学反応が起こり、地域に新しい価値が産まれるだろう。100年先を考えてじっくりと、子や孫の目線で、共に地域の未来を描いてはどうだろうか。私のふるさと探しは始まったばかりだ。

(2022年9月20日 投稿)

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