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NO.7『覚悟』

母と共に歩む毎日。向き合うのは母だけじゃない、周りの家族とも色々ありまして。
こんな事がありました。ちょっと聞いて~。

へっぽこ娘

母にとって私は二女で、長女の姉と長男の弟がいる。二女の私が何故母と同居しているかと言うと、それなりの事情があってのことだ。それを書いていると長い話になるので割愛するが、それぞれの配偶者も含めて姉弟はとても仲が良いことだけは伝えておこう。高齢になった母のことも姉を中心に3人で相談しながらここまできている。姉家族も弟家族も私が仕事などで大変なときは母を快く預かってくれるし、姉は母が病院にかかる時もわざわざ付き添いに来てくれる。私は、姉弟がいつも協力体制でいてくれるので本当に助かっているし、安心して母をみることができている。

特に姉は、長男の嫁として義兄の両親が高齢になってから同居し、亡くなるまでの間さまざまな福祉サービスを利用しながらできる限りの介護をしてきた経験がある。老人介護や認知症に関して知識も豊富で、色々な面で教えてくれたり、助けてくれたりしている。

先日も仕事でどうしても母の面倒を見られない日があったので、母を二泊三日で姉の家で預かってもらうことになった。「あーホント助かる。安心して仕事ができるし、少し息抜きができるなぁ」と姉夫婦には心から感謝した。姉も「たまには2人で少しゆっくりしてね」と言って快く3日間預かってくれた。

姉と私は姉妹なので何かと話す機会が多いのだが、姉はいつも、いざという時は長男である弟中心にということを大事にしていて、弟夫婦には何でも知っていてもらおうという姿勢でいてくれる。それは私にとっても非常にありがたいことだった。だから今回も3日間母を預かって感じたことや母の様子をつづった結構長い文章を、姉弟のグループラインに流してくれた。ところが今回それを見て、私には何とも言えない感情が湧いてきたのだ。

  • 母のトイレの様子、こんなだったので、こんな風に介助しました。

  • 着替えはこんな感じでした。ここは一人ではできないから手伝う必要ありますね。

  • このような訳の分からないこと言っていましたが、こんな風に否定せずに聞いてあげたら落ち着きました。

  • 夫(義兄)がとにかくすべてを肯定して母に接してくれたので上機嫌で過ごせました。

姉のラインは、おおまかにはこんな内容で、こと細かくその時の状況が書かれていた。きっと姉は全く悪気なく、弟夫婦にも今の実態を知らせようと、母の様子をありのまま報告してくれただけだと思う。でもそれを読んだ私の心の中はモヤモヤしてとても複雑な気持ちになってしまった。「トイレ?着替え?いちいち報告しないけど私は毎日それにつきあってるよ。全部わかっている」「そうだよね。否定せずにすべてを肯定して聞いてあげれば機嫌よくすごせるよね。3日くらいなら私だってできるわ!」姉はそんなことを言っていないのに「否定的に接しているから母も機嫌が悪くなるんだよ。認知症の人とは肯定的に接しなきゃダメなんだよ」と暗黙に言われている気がして本当に悲しくなった。やっぱりそうできない私が悪いんだよなと、勝手に自分を責めてしまい、久しぶりに浴室でシャワーを浴びながら60過ぎたおばさんが声を上げて泣いてしまったのだ。

このコラムを読んでくださっている方は、このへっぽこ娘の日常の母への接し方がだいぶおわかりだと思うし、感情的になりやすい性格も分かり始めているのではないかと想像するが、一番の協力者である姉の言葉からこんな気持ちが湧いてきてしまった。毎日自分がやっていることがすべて否定されたような気がして、だいぶ落ち込み、しばらく立ち直れなかった。

誰も悪くない。そう思って数日自分の心と向き合ったけど結論は出なかった。ただ私はやっぱり自分がやっていることを誰かに認めてほしかったのかもしれないと思った。それをたまたま話した職場の同僚は、悲しかった気持ちをただそのまま聞いてくれた。認めてくれた。私の心はそれだけで救われ、おかげさまで落ち着きを取り戻すことができた。
そして、そのことがあってから私の何かが変わったのを感じた。何故か母がとても愛おしくなった。もう母を姉や弟に預けたくない。預けるのはやめよう。そんな気持ちが湧いてきたのだ。預かったときの姉の大変さを知って、もうそんな段階ではないのかもしれないと思った。大変なときはショートステイに預けながら私がみていこう!そんな覚悟がひそかに決まった。

聞いてくれてありがとう。


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