卵の大きさ、なぜ違う?

突然ですが質問です。皆さん、魚はどうやって生まれると思いますか?
多くの人は、「魚は卵から生まれる」というイメージを持っていると思います。その通り、ほとんどの魚は卵生であり、卵から生まれます。

魚だけではありません。
カイメン、クラゲ、サンゴ、貝、フジツボ、エビ、カニ、ウニ、ナマコ、ヒトデ、ホヤ……
海にすむ無脊椎動物も、大半が卵から生まれます。

しかし、一概に卵といっても、その性質は生物種ごとに異なり、非常に多様です。

など…卵にもいろいろあるのです


この中で今回は、卵の大きさについて、ちょっとした解説をしたいと思います!

なぜ、大きい卵を産む生き物と、小さい卵を産む生き物がいるのでしょうか?一緒に考えてみましょう!

まず、卵が大きいことのメリットは何でしょうか?

卵には、母親から分け与えられた栄養が「卵黄」として含まれています。簡単に言うと、お弁当のようなものです。卵の中では、生まれる前の赤ちゃんがこのお弁当から栄養を吸収して生存し、成長していきます。

しかし、食べ続ければ、お弁当はやがてなくなってしまいます。栄養がなければ赤ちゃんは生存も成長も不可能となり、死んでしまいます。
餓死する前に自分でエサを探し、食べなければなりません。

よって、赤ちゃんはお弁当がなくなりそうなタイミングで、卵の外に出ます。
これが「卵から生まれる」ということです。

生まれた時、赤ちゃんが成長していればいるほど、赤ちゃんはエサを探し、食べやすくなります。
また、体に蓄えた栄養の量は、エサを食べずに生き延びられる時間に直結します。

これを左右するのがお弁当の量、すなわち卵の大きさです。卵が大きいほどお弁当の量も増え、長い間卵の中で成長し、栄養を蓄えることができるようになります。

つまり、卵が大きいほど、生まれた後の一個体の生存率が高くなるということです。

ここで、一つの考えが頭に浮かんできます。

「大きい生き物は大きい卵を、小さい生き物は小さい卵を産むのでは?」

確かに、体が大きい生き物は、小さい生き物に比べて、肝臓など貯蔵機能をもつ器官も大きくなります。
たくさんの栄養を蓄えられますから、たくさんのエネルギーを費やすことができ、卵も大きくできるのです。

ラボのネコザメ。子供なので体長20cmほど。
引用: https://rwynw.lobjetdev.shop/index.php?    main_page=product_info&products
_id=13758

ネコザメの仲間の卵。


実際に、親個体の全長およそ90cmのネコザメは、長さ10~15cmの非常に大きな卵を産みます。全長50cm程度の魚では、このサイズの卵は産めませんよね。

他の大きい魚も見てみましょう。

引用:https://diver-online.com/archives/go_to_diving/5058


こちらはマンボウです。
親個体の全長は少なくとも1mを超え、2m以上にもなるマンボウ。
その卵の大きさは………およそ1mm

あれれ〜?

そう、「大きい生き物は大きい卵を、小さい生き物は小さい卵を産む」というのは、必ず当てはまるわけではないのです。

卵を産む生き物には、大きい卵を少数産む「大卵少産型」のものと、小さい卵を多数産む「小卵多産型」のものがいます。

先ほど解説した通り、卵が大きいほど一個体の生存率は高くなります。
ただし、親が繁殖に費やせるエネルギーには限界があります。よって、卵の大きさを大きくするほど、卵の数は少なくなってしまうのです。

先ほど例に出てきたネコザメは、魚としては非常に大きな卵を産みます。しかし、一度に産める卵の数はたったの2個と、極端な大卵少産型であることがわかります。
一方で、同じく例に出てきたマンボウ。こちらは巨体の割に非常に小さな卵ですが、一度になんと数千〜数千万個もの卵を産むといわれています。その巨体を、多産に活かしているわけですね。

卵の数が少ないと、捕食や環境の変化といった厳しい条件にさらされたとき、全滅してしまう可能性が高くなります。
逆に、卵の数が多ければ多いほど、厳しい条件下でもたまたま生き残る個体がおり、99%が死んでも1%の生存だけで元をとれるようになります。

よって、不安定な環境下で有利なのは小卵多産型であると言われています。

一方で、一個体の生存率が高い大卵少産型は、生物間の競争に強く、安定した環境下で確実に子孫を残しやすいと言われています。

つまり、生き物はその戦略によって、限られたエネルギーを「大きな卵を産む」ことに費やすものと、「卵をたくさん産む」ことに費やすものに分かれているのです。

これが、大きい卵を産む生き物と、小さい卵を産む生き物がいる理由です。


卵の大きさについて、アクアリウムラボで展示した生き物の中からわかりやすい例を探してみました。
(※展示は既に終了しています)

/大卵少産型です\

こちらはヒョウモンダコです。体長は10cm程度とタコの中でも小さめですが、長径1cmほどの米粒のような卵を産み、大事に抱きかかえます。
体長60cmにもなるマダコの卵が長径2.5mmであることを考えると、近い種類の生き物でも戦略に違いがあることが見て取れますね。

/小卵多産型。小さい泡みたいなのぜんぶ卵\

こちらはハリセンボンです。卵は直径1.7mmほど。先々週の記事でも紹介された通り、ハリセンボンとマンボウはどちらもフグの仲間です。どちらの卵も分離浮性卵といい、1個1個がバラバラに浮かび海中を漂う性質を持ちます。ただ浮かんでいるだけなので、他の生き物からしたら食べ放題です。そのため、できるだけ数を多くしてわずかでも生き残るようにしていると考えられています。
下手な鉄砲も数打ちゃ当たる、とはこのことですね。

以上、卵の大きさについてのお話でした。




今回このお話をしたのは、他でもありません…


いずれ始まるのです、卵に関連する━━


━━企画展が。



To Be Continued

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?