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メモに残すのも大変です

もう本当に書くことが無くなったので、エッセイのお題を書き出してみた。

書くことが無いということで困っているのに「じゃあ、お題を探してみましょう」と、無いものを探す禅問答のような回答にたどり着き、部屋をぐるっと一周見渡し、そのあたりにあるものをひたすら書き留める。それに加えて書いている途中に思いついたものや、最近使ったものなど単語を簡単に一ページにまとめた。いざやってみると、書くことがなかったというよりもただ単に思いつかなかっただけだったのかもしれない。とにかく、身の回りにあるものの単語を書き並べると、一つくらいは形になるように思えた。

「将棋」「パソコン」「パスタ」「ボールペン」「サラダ」などなど。総勢30個のお題リストの完成だ。ここまでくれば一か月くらいは毎日書いても大丈夫な予定だ。これらについてエッセイで語るたびに、ページから消していき全部消えたら、いよいよ本当にもう書くことが無いということになる。しかし、一つのお題でボリューム的に足りない場合は他のお題も複合して書くことを考えるとまだまだ油断はできない。

私の書くエッセイというのは日常にあるちょっと気になったことに対してそれがなぜ気になったのかと考えながら、自分の感情を掘り返す作業である。気になったことそのものよりも「どうしてそんなことに気を取られたのか」という自分のルーツに迫る作業に近い。日々目にする新しいものと、ギャップを感じる古い自分との摩擦やギャップを言葉にする、というとかっこいいけれど、妙に気になってしまったことを書き留めて「こういう理由で気になってしまったのです」という自分なりの落としどころを見つけて安心したいという部分がある。だから、身の回りにあるものを一度単語という形で意識しなおせば、間ぁ何か一つくらいは書けるだろうという思惑の元、メモ帳に書き記していった。

ひと段落して、パラパラとメモ帳をめくると少し昔に書いたメモがたくさん見つかる。怒ったみたいな文字もあるし、冷静に説明するための内容をまとめているページもある。一ページごとに情緒が安定しないのは、まさに私のメモ帳だという妙な納得感があった。

イライラした時や、そわそわと落ち着かないときは、エッセイでなくてもメモ帳にひたすら書き出すと落ち着くことが多い。高校生の時からA5くらいの大きさで100ページほどたっぷりかけるノートを持ち歩くようになった。そして、内容を問わずひたすら書き込んで、自分の気持ちを落ち着ける。気になったことはとにかくメモして、一旦頭から追い払う。

私の頭は覚えておくことと処理をすることに使えるエネルギーが少ない。なので、何かを考える時も「問題を覚え」て「それを解く」というのを同時にすることがほぼできない。覚えておくために使うエネルギーと、問題を解くことに使うエネルギーは共用らしく、エネルギーが最大100あるとするなら、覚えておく時点でもう50くらい使ってしまう。本来の半分の力で、重要な問題を処理しようとするととてもとてもいい案など浮かばないので、その覚えておく係をメモ帳に代わってもらっている。

しかしメモをする時も大事だ。

覚えておく能力が壊滅的ということは、メモをする時にも余計な情報を入れてはいけない。特にうっかり入れてしまいがちな余計な情報はメモを書いている時に「早く書かなきゃ」と思うことである。

冗談のような話なのだが、この「早く書かなきゃ」と思うということは「早く書かなきゃ」というフレーズを覚えておくこととして脳みそがカウントしてしまう。つまり「メモしたいアイデア」があるのにそこに「それを早く書かなきゃ」と思った瞬間、せっかく思いついたアイデアに【早く書かなきゃ】というフレーズが上書き保存される。

パソコンで言うなら、メモ帳アプリを立ち上げて散々書き記した2000文字のエッセイに「早く書かなきゃ」と言う文字が上書きされて、せっかく書き記した2000文字が全部消えるくらいのものである。その後、それを反省して「ゆっくり書いていい」と意識したところ、せっかく思いついたアイデアが【ゆっくり】に上書きされてしまった。メモ帳には「ゆっくり」の「ゆ」を書いたあたりで「あっ、違う」と思いなおしたが時すでに遅く【あっ、違う】という言葉が脳の記憶容量を奪い取ってしまったため、何を思いついたのかすっかり忘れてしまった。もう、ここまで来ると自分の記憶が全然信用できない。

何度か試行錯誤をするうちに、一文字ずつしっかり書くか、とんでもなく汚い文字で最初から最後まで書ききるかの2択となった。ゆっくり書くと、時間はかかるが書いている途中で忘れてしまうことはほとんどない。しかし、そのまどろっこしさは、途中また新しいことを思いついても書くことができない。今書いているものを優先して、新たな思い付きは忘れてしまうことも覚悟しなくてはいけない。

一気に書くと、あまりに汚い字なので1分後にはもう何の文字わからなくなっている。書き終えた後は早めに、清書をする必要があるのだが、書いた後はもうすっかり満足してしまって清書などほとんどしない。残るのはいつも何を書いたのやらよくわからないメモである。

さっきお題を書いたメモはどうだったかと見返してみたが、こちらはちゃんとギリギリ読める文字で書かれている。まだ読めえるだけで、いずれ何と言う文字だったか忘れてしまうかもしれない。それまでに、30のお題を全て消費しきることが当面の目標である。

ずらっと並んだお題の中に書かれている「メモ帳」という単語を見つけ、二重線で消し去った。

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今日消費したお題:メモ帳

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