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私は「できない」と言えない

プライド、ってなんなんだろう。

あの人はプライドが高い、プライドはあってないようなもの、プライドが高くてもろくなことがない、やっぱプライドがなくっちゃ、みたいな使い方を、よくされる。当たり前に使われている言葉に対してふと疑問を持ったとき、私は意味を調べてみる。

プライドとは、自尊心、自負心、または誇り、ということである。良い意味と悪い意味のある言葉であり、良い意味では自分の能力に自信があり、他の人がその自分の力を認めて正しく評価をするべきだと思うこと、悪い意味では、過剰な自尊心から傲慢な態度になっていること、となる。

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この定義では、良い意味と悪い意味がある、と書いてある。自尊心や誇りを持つのは、少なくとも悪いことではなさそうだ。とくに近頃は自己肯定感ブームと言ってもいいくらいによく聞く言葉だし、自分で自分を認めてあげる行為や心の動き=プライドだとするなら、高めのプライドを持つのも良いことのような気がしてくる。

だけど、悪い意味もある。「過剰な自尊心から傲慢な態度に」なるのは、良くなさそうだ。天狗になっている、鼻持ちならないヤツ、みたいな印象がある。ちなみに「傲慢」の意味を調べてみると以下のように書いてある。

思い上がり、おごり高ぶり、他人に対して見下すような態度で接するような様子を形容する表現である。

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よくないですねえ、これは! 非常によくない。人を見下すなんて、生きてるなかで一番やっちゃいけないランキング上位に殿堂入りしていそうだ。あまりにも高い自尊心=プライドを持ちすぎてしまうと、いずれ人を見下すようになってしまう。とても、よくない。

よくない、とはわかっているのだけれども、それを大前提としたうえで、あえて言う。私は、プライドの高い人間だ。

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なぜそう思うかって、私は「自分のできないことをできないと言えない」からである。正直に「できません」「わかりません」「教えてください」が言えない人間なのだ。

この性質は物心ついたころにはすでに備わっていて、おかげで学生時代、新入社員時代は大いに苦労しましたよ。「わからない!」と思っても、先生や頭の良い子たちに「教えて……」なんて、まさに口が裂けても言いたくねえと思っていた。めんどくさい。私は、私が非常にめんどくさい。

だから、死ぬ気で教科書を読み込んだり、解答を丸暗記して問題の傾向を掴もうとしたり、過去問をやりまくったり、思いつく限りのあらゆる対策をしました。おかげで成績がすこぶる悪い、ってことにはならなかったんですが……。社会に出るとそうはいかないのが不思議。

きっと、社会には「コレ!」って提示できる正解がないからですよねえ。上司や先輩であったとしても、正解がわからない場合もあるし、なんなら各々が信じる各々の正解に沿って仕事をしていたりする。人によって正解が違うって、どんなゲームなの?

そんな社会の荒波に放り出されても、私のプライドは高いままだったので、素直に「わかりません」「教えてください」も言えず、あっという間に仕事のできない人間(というか、自分で考えて動けない典型的な指示待ち人間)になってしまいました。あーあ。

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会社員を辞め、フリーランスになってからは、「プライドばっかり高くてもそれをアピールする相手がいない」=「上司も先輩も後輩もいない世界で、一人粛々と仕事をしているから、高いプライドがあってもなくても関係ない」状態になったので、幾らかはマシになっているかと思う。

むしろ自分から「大丈夫ですかね、私?」と限りなく下手に出て教えを請わないと、誰も何も教えてくれないスーパーサバイバルな世界である。ゲームで例えたら、チュートリアルもないままいきなり武器や防具を持たされ、モンスターがウヨウヨしている草原のど真ん中に放り出されるような感じだ。こわい。ふあん。そんな苦境で同じ人間を見つけたら、プライドなんて発揮してないで「ここはどこ?どうすればいいの?教えて!?」ってなるじゃないですか。そんな感じ。

私はいまだに、素直に「コレができません」とは言えない心根を持っている。だけど、働き方とか、働く環境とかで、マイナス面はカバーできるのかもしれないな……なんて、そんなことを思っている。

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