見出し画像

はじめに / 設計に対する想い

私たち「きとか」は豊田の里山にある設計事務所です。
モットーは暮らしを豊かに美しく。
建築作品をつくるのではなく、お施主さんと一緒によりよい暮らしをつくることを大切にしています。

山と田んぼに囲まれた自宅兼事務所。

ものをつくるということ

私たちは家をつくったり建築を生み出すということについて考えている中でテキスタイル / ファッションデザイナーであるヨーガンレール氏(1944-2014)のものづくりに共感し感銘を受けました。
彼は自然と共存する上で「物をつくって売る」ということの責任を感じながら、ものづくりしていた数少ないアーティストでした。
物を生産する=いずれゴミになるものを生産しているということ。
やがて全てがゴミになるからこそ一つ一つのプロダクトに対して責任をもって丁寧に慎重につくり、素材やそれらが生産される背景まで重要視していました。
彼の生み出すものは「いつか不要になった時には地球の環境を汚すことなく土に還るもの」であり、つくる過程においても一貫した考えのもとにつくられていました。
そして自然に敬意を払いながら彼が生みだしてきたものは静かでありながら心揺さぶられる美しいものでした。
彼のものづくりに対する姿勢に共感し、私たちもそうありたいと考えています。

ヨーガンレール氏の仕事

ヨーガンレール氏は90年代後半、自給自足をめざして沖縄・石垣島に家をたて、月の3分の1を農作業に費やしていました。
晩年は石垣島に流れつく大量のプラスチックゴミから拾い集めたもので、
美しいランプを製作することに注力していました。
2014年、製作のためゴミ拾いに戻った海岸で事故のため亡くなりました。

自室に残された走り書きのメモより
「人間の行いはますます無責任で、次世代にあまりに無頓着だ。
私は少し遊び心のある方法で、人々に問題を気づかせたいと思う。」

プラスチック製品を嫌っていた彼が、最後はプラスチックのゴミから美しい物を生みだそうとしていたことの意味を私たちは汲み取らなければならないと思っています。

石垣島のビーチでゴミを拾うヨーガンレール氏
「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」東京現代美術館 2015

使用する素材について

なるべくその土地のものを。こちらは三河赤土。

基本的にきとかでは自然に還る環境負荷の少ない素材を選んでいます。
木や土、石や鉄など自然素材のものを使い、新建材(※注釈あり)を極力つかわないように意識しています。
やむをえない場合は、有害性はもちろん原材料、製造・廃棄における環境負荷を精査し、必ずメリットとデメリットをお施主さんに伝えています。
私たちがお施主さんに考えを押し付けることはできませんがまずは知ること、そして理解いただいた上で選ぶことが第一歩だと考えています。
ものをつくる立場にいる限り、そのことを説明する責任があると思っています。

天龍杉を選びに材木やさんへ。
土壁から芽が。

※新建材とは------合成樹脂を多用した均質で安価な建築材料。
スチロール,ウレタンなどの断熱材、合板、石膏ボード、塩化ビニル(ビニールクロスなど)ポリエステル、など壁や家具、接着剤に使われるもの。

文:みもと

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?