眠れぬ夜に聴こえる子守唄

どうにもこうにも寝付けない夜だった。

梅雨が明けて唐突に訪れた暑さのせいなのか、それとも日中の昼寝のせいなのか、真っ暗にならない夜のせいなのか。

夜が明るいと感じるようになったのはいつからだろう。

新宿という街の夜に慣れたからかもしれない。
都会の夜に月の灯りなど必要ない。
もう私が知っている夜に真っ暗な夜などないのだ。

ひどく寂しい気持ちになった。
布団に横たわる私の耳に、遠くの方の車のエンジン音が届く。
車が止まる音がする。
信号が変わったのだ。
誰のためにその車は止まったのか。
考えると恐ろしくなる。
誰のために信号は赤に変わったのか。

誰も渡らない横断歩道の信号のことと、歩行を焦らす無意味な点滅と、律儀に停車する車の色を考えた。
赤じゃなくて、青だといいな。
特に理由はないけれど。
またこんなことを考えるから眠れなくなるのだ。

鳥のさえずりがきこえてきた。
朝がはじまる音がする。

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