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新潟のお米と未来に向けて

レシピ名 「雪蔵貯蔵米のインサラータ・ディ・リーゾ」

早速自ら、タイトルでいきなりハードルを上げてしまっている気がする。笑

今回、少しだけレシピを考える機会があった。テーマは「米」(新潟県産のもの)。
改めて「お米」と向き合い、探ってみると、いろいろなシェフやレシピ本、研究などの跡を見つける。曲がりなりにも、「日本酒ベンチャー」なスタッフであった時もあったので、色々とワクワクし始めていた。

と、同時にここ2年くらいのなんとも言えない気持ちをこめなきゃいけないと勝手に思ってしまっていたのだった。笑

「飲食店への時短営業の要請」「酒屋への酒提供飲食店との取引停止要請」
都内でも、新潟に帰って来てからも。酒屋さんや、酒蔵の方に会うと「大変だけど頑張るよ!」「いやー、農家さんになんてお願いしようか。。」「まだお酒もいっぱいあるからね…飲んでね!笑」

なんて…
「米」ひとつとっても、いろいろな人が関わっていて、「美味しいもの」を「美味しいタイミングで食べてもらう」ことが出来なかったのではないかと思っていた。それはその人達の影の努力や苦労を知っているから、余計に悲しかった。
料理をやっていてもまさに同じではないかと思っていた。農家、漁師、精肉店。飲食に関わる様々な業者、いろいろな苦悩を聞いていた。

それでも、何も出来なかった。

せめて、今回は「米」だけにでも、何か新しい回答を見つけたかった。
そんな勝手な思いの末に、たどり着いたのは「インサラータ・ディ・リーゾ」。
それも「雪室貯蔵」したお米を「水車精米」したコシヒカリを使った、お米のサラダだった。

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材料と作り方

ざっくりとだが、まずは材料と簡単なレシピだけ載せておく。
と、いろいろな下処理があるが、noteやクックパッドで公開されているレシピを参考にしているものが多く
・白菜漬けなどは土井善晴先生のレシピ
・お米のチップスはnote,の樋口直哉さんのレシピ
打ち豆や柿酢なども探すとすぐに出てくるかと思う。
よって、今回のレシピはそういったレシピを基に成り立っていて、工程としての目新しさは全く無かったと思う。
(強いて言えば、通常のインサラータ・ディ・リーゾでは、夏場にフレッシュな野菜とともに冷たく出すものだが、ほぼ野菜のみの構成で、しかも保存や発酵などを少し使用して、ほんのり温かい状態を目指しているところは特徴かも。)

[材料]
・米(「炊く用」と「米のチップ」2種分)
・トマト
・原木しいたけ(A)
・白菜漬け(B)
・打ち豆オイル漬け(C)
・パルミジャーノ
・塩
・オリーブオイル
・柿酢(D)
・黒胡椒
・大葉(E)
※(A)~(E)は下記で他材料と共に、下準備としてあらかじめ用意しておく。

◯作り方
⑴トマト、白菜漬け、しいたけ、打ち豆のオイル漬けをそれぞれ小さくカットする。
トマトは半分にカットし、タネを除き、3mmくらいに。白菜漬けは芯と葉の部分が1:1の比率になるような分量で、芯はトマトと同じ、葉は5mm程度に。しいたけと打ち豆は5mm程度に、割いてある軸も同様にする。
⑵米は軽く洗い、30分程度水を切った状態で吸水させる。鍋に移し、通常よりも気持ち少なめの水と共に中火~強火で炊き始める。6分程度で沸騰してきたら中火から少し弱め、ふつふつ湧く程度で更に6~7分炊いていく。(炊き上がったら13分蓋をしたまま放置する。)
⑶⑴のカットした野菜達に、味をつけていく。
オリーブオイルを全体に回し、軽く混ぜたら柿酢と塩を入れてさらに馴染ませる。
⑷炊き上がった米の粗熱が軽くとれたら、こちらにも柿酢を少し馴染ませる。そこに⑶を入れ、全体を混ぜたら仕上げとして黒胡椒、大葉の粉を入れてさっと混ぜて盛り付けていく。
⑸お皿に盛りつけたら、パルミジャーノを上から掛ける。最後に米のチップスを上から割りながら乗せたら完成。

「雪室貯蔵」 「水車精米」 「氷温熟成」

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お米は実際に見に行かなければと思い、南魚沼にある「吉兆楽」さんを見学させて頂いた。そう、僕は農家さんではなくお米屋さんに行った。

こちらの取り組みに関しては、以下のHPにも少し紹介されている。
(なんなら楽天のオンラインストアでも紹介されていて、お米も買えます。)

「雪室貯蔵」は新潟など積雪のある地域であれば、イメージもつきやすいだろうが、冬の間に雪を貯蔵庫の近くに入れて、その雪の冷たさや湿度を利用して空気循環でお米を保存する部屋を冷やしている。
(その為、1年経つ秋口ぐらいにはこのように雪に米の匂いや汚れとなる物質が吸着され、雪自体がフィルターのような役割も果たしている!)

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また、吉兆楽さんの取り組みとして他とは圧倒的に違うのが「氷温熟成」である。
これは「氷温協会」の認定にもなっている取り組みで、それを利用して「1年を通して、どのタイミングでも美味しいお米を食べてもらえるように」と取り組まれている技術だ。
先程の、「雪室」以外に「氷温庫」を用意してあり、その中で何度かに分けて「雪室貯蔵」されたお米を「氷温熟成」して、お米の旨みや状態をコントロールしている。(雪下人参やジャガイモの保存のようなイメージよりも更にしっかりとした管理の下、その他お肉や魚などにも応用されている。)
「新米」の状態ではもちろん美味しいが、それにも劣らない美味しい状態をキープしていく為である。その結果、1年を通してどのタイミングでも美味しいお米が食べられるそうだ。

更に、今回のレシピの中で大きく関係していて、ポイントとなるのは「水車精米」である。先程の「氷温熟成」では、精米時に糠による劣化に弱くなってしまうのでやらないのだが、「雪室貯蔵」しているお米を水車を使った精米をすることでまた違った旨みの方向性を生み出しているのではと考えたのが今回のレシピだった。

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「雪室貯蔵」する事で、お米の中の水分が落ち着く。それは南瓜や冬瓜のような、収穫後に一定期間置く事で、野菜の中の水分が均一化されるようなイメージで安定してくる。それはお米も一緒で、確かに収穫したてのお米には「香り」があり、それが「新米=美味しい」の圧倒的ポイントだと考えた。
どうしても古くなっていくお米には、その香りは失われていく。しかし、水分量がある程度均一化されたお米は、香りも食味もバランスが良く、美味しいと感じるポイントが多い。そこに、水車を使って20時間精米する事で、糠と一緒にいる時間が生まれる。現代ではそこにメリットではなく、糠の匂いや色がついてしまうということが「デメリット」であるとされている。しかし、今回のレシピでは糠と一緒に精米されることで、「旨みと糠油がコーティングされる」と考えられないかと思った。
(下記の本では「24時間熟成精米」という方法で精米すると、米の甘みは14%アップ、旨味は54%アップするとの事。品種にもよるが、一般的な精米だと還元糖は802ppm、アミノ酸は133ppmだが、24時間熟成精米だと還元糖は918ppm、アミノ酸は205ppmになるそう。)

伝えたいことは山程あった。でも答えはまだなかった。

少し中途半端な紹介になってしまっているかもしれないが、もっと伝えたいことはやっぱり実際に食べてもらわなければならなかったと思う。その上で色々な意見を聞いてみたかった。

「なんで新潟のお米を使うのか?」
倉庫やお米の案内してくれた方にそう聞かれた時に、答えが出せなかった。
一生懸命に考えたつもりになっていて、実はその根幹的なところを考えられていなかった。
レシピを調整しながら、ふと兵庫の日本酒蔵を見学させてもらった時の事を思い出した。

「毎年少しづつだけど、お酒をそれぞれ保管しておくんだよ。」
「僕らもそれを定期的にテイスティングして、熟成や保管の意味を考えるんだ。」
と。

今すぐ答えは出せないかもしれないが、去年も一昨年も報われなかったお米やお酒が世の中には一杯あった。
「美味しい」の一言の為に頑張っている人達が、少なからずいる事を少しだけ知っている。それをなんとか伝えたかった。

しかし、今回は僕にはチャンスがなかった。と言うよりも、自分のミスでかなり迷惑をかけてしまいました。(本当にすみません。)
そんな連絡をお米屋さんに連絡したところ

「今回だけじゃない。」

そう言葉を添えて連絡して頂いた。
その一言で僕は報われたし、もっと頑張らなきゃなと思っている。
いつかそんな思いを載っけた料理をまた作れるように頑張りたいと思う。

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