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2023.10.01 2023-24LaLiga第8節 ジローナvsレアル・マドリー

・はじめに

おはようございます。こんにちは。こんばんは。
この試合はなんか書きたくなったので久しぶりに書きます。
観戦直後、衝動的にnoteアプリを起動していましたが、その割に書くのに時間がかかっていますね。俺は弱い。

以下、スタメン。

両チームのスターティングメンバー

ホームのジローナは昨季からちょこちょこメンツが変わっている。
CBにはバイエルンを退団してフリーになっていたブリント、バルセロナからローン移籍してきたエリック・ガルシアのコンビを起用。
昨季アンカーを務めてチームの要になっていたロメウがバルセロナに去り、穴をダビド・ロペスが埋める。
注目選手は左WGを務めるサヴィオ
ジローナと同じシティ・フットボール・グループの傘下であるトロワから今夏移籍してきた19歳の左利きブラジル人WGは、今季好調のジローナを引っ張るネクストスター候補らしい。

マドリーはヴィニシウスがスタメンに復帰。
結果を積み上げチーム内外から信頼を掴みつつあるホセルと最前線でコンビを組む。
この試合のサプライズ要素は、昨季レ・ブルーから輸入して緊急時に流用したカマヴィンガの左SBを今季も取り入れたこと。
今季4-◇-2システムを基本布陣としていることもあり、SB(大体フラン)に大外の上下動を強いるメカニズムになっていた中、その位置でカマヴィンガを起用するアンチェロッティの意図にも注目が集まった。

実際蓋を開けてみると、両者のこのシステム配置図はあくまで初期配置図にすぎないことが分かるのだが。(現代サッカーなんて大体そう)

・試合内容

・可変×可変

両者の保持メカニズムを大まかに掴む。

○ジローナ
・保持ターンはすかさずダビド・ロペスが2CB間にサリーして3バックを形成
・左SBのミゲルが自由自在に動く
・左IHアレイクス・ガルシアがアンカー位置に降り、右IHエレーラはよりゴール方向/前ベクトルが強めな役割分担
・右大外は右SBヤン・コウトが担当、ツィガンコフは中央に寄りつつラインブレイクを積極的に狙う
・左大外はサヴィオの個をアイソレーションで活かす

ジローナの保持局面概略図

ミゲルがしっちゃかめっちゃか動くのが目立つ。俗に言う偽SBの1.5倍ぐらい自由に動く。アンカー、ドブレ・ピボーテの片割れ、攻撃志向のIHぐらいの位置まで前方へ出ていくことも。

その他ジローナの保持で目立ったのが、即座にダビド・ロペスが両CB間に落ち、3バックを形成すること。自動プログラミングが如く落ちる。
マドリー2トップに対する数的優位担保、前述のミゲルの解放、ブリントやエリック・ガルシアが得意とするプレーエリアの関係性が大きく作用しているのだろう。

キープレーヤーのサヴィオは大外で個を活かすためのアイソレーション
しかし、サヴィオに対してマドリーは、バルベルデとカルバハルで上手く受け渡す/チャレンジ&カバーの徹底を集中して行えていた。
ここは単純な対人能力も信頼できる2人だし。
試合を通して目立った仕事をさせなかった。

○マドリー
・後方ビルド隊で2CBとクロース&チュアメニの4枚は固定、そこに適宜カマヴィンガやバルベルデのサポートが+1されて2-3の形にも
・バルベルデは基本的にベリンガムとの距離感も考えつつ右IHとして振る舞う、カルバハルのポジションにも合わせて右大外に出るシーンもあり、管轄エリアが膨大
・ヴィニシウスは内外を使い分けるが、左大外へ出る機会が多め
・ホセルが中央〜右寄りで奥行きを担保
・ベリンガムは左のハーフレーンを中心に動く(左IHチックに)

マドリーの保持局面概略図

まず触れておくべきはカマヴィンガ。
左SBをスタートポジションとしてヴィニシウスやベリンガムのサポートに奔走。
カマヴィンガをこの位置に置くと、2CBと3MFの2-3ラインで組む後方ビルド隊の3を担うことができ、バルベルデを前方へ解放できることも大きなメリットの1つである。

そんなバルベルデは攻守で膨大なエリアを管轄する。
左サイドの密集に加勢することは勿論、カルバハルが基本的に大外を駆け上がりボールの終着点を担当する右サイドにおいても、彼一辺倒になる味気無さの解消と負担低減のために、解放されたバルベルデが外に出ていくシーンも観られた。

後方ビルド隊のカーストトップはクロースで、それを補佐するチュアメニの気の利き方も抜群。

前線はヴィニシウスに自由が与えられており、得意の左大外をメインポジションにする意識がこの試合は高かった。
その分真ん中(時には右サイド)で奥行きと基準を作ってくれるホセルの存在も頼りになっており、チームバランスが配置的・役割的観点の両面で向上。

今季のマドリーのアイコンであり、これまでトップ下でチームの核を担っていたベリンガムに関しても、このシステム構造ではタスクの色を少々変える。
次の項でもう少し細かく触れる。


・三人寄れば左ユニットの機能美

左SBカマヴィンガ、左WGヴィニシウスという組み合わせの良さは昨季から発現していたもの。
昨季との相違点は左IH気味に振る舞ったベリンガムの存在である。
この3人が組む左サイドのユニットは攻守で非常に機能的。
まずは守備。

マドリーの守備の一例図

この日のマドリーは非保持で基本的にベリンガムを左IHへ落とす4-4-2ブロックを採用。
クロースを外側の守備に走らせる非現実的な可変コストの関係と、昨季の泣きどころ“ヴィニシウスの背中“をベリンガムの強度で補う。(ちなみにクロースはサイドに出張して守るのは苦手だが、相手が自分のテリトリーに入ってくる場合の狭め守備範囲ならまあまあ上手く守るぞ)
カマヴィンガやクロースが前方へ迎撃に出た時には、その裏で空いたスペースを埋めるようにカバーする気の利き方も目立った。
これにより、左サイドのウィークポイントを隠す守備構造を実現。
序盤こそ大外に誰が出ていくかが曖昧で被クロスからピンチを招くシーン等があったものの、試合を通してアジャストしていった後はかなり安定感があった。

次は攻撃。

前半28分18秒あたりのシーン
前半28分56秒あたりのシーン

前半28分あたりの2つのシーンを例に。
どちらにも共通しているのが“引き付ける動き“と“生じたスペースへ走る動き“
引き付け方はヴィニシウスのように大外で脅威を植え付けても良し、カマヴィンガのようにボールを受けに来る中盤の選手的に振る舞って囮になるも良し。
3人とも走力と技術を高い次元で備えているため、ボールの受け手、裏へのアタックといった役割を誰が瞬時に対応しても機能する。
そこにクロースやバルベルデが絡んでくるため、更に的が絞りづらくなっていく様はジローナにとっては悪夢のよう。
一部分を切り抜いたが、左サイドでできるユニットは、「ボールホルダーへのサポート」、「ラインブレイク」、「やり直して逆へ展開するための受け皿になる」といったタスクの循環をそれぞれで回しつつ、良好な関係性を試合を通して維持できていた。
(実際に先制点も左サイドからベリンガムがアウトサイドキックで送ったものであり、チュアメニの初ゴールに繋がるCKは左サイドに密集を作りつつ寄ってきたバルベルデのミドルシュートを起点に得たものだったりする。)

これまでトップ下として王様になっていたベリンガムをもう1人の王様ヴィニシウスの側で走らせ、それぞれの最大化に近づける良い関係性
ベリンガムの運動量と強度はクロースやヴィニシウスのウィークポイントを隠し、昨季はカマヴィンガが独力で奮闘していたサポートランも担うことで彼の負担軽減とゲームメイクのプレーを促す効果も。
まさに全能の化け物である。€103mだって、安いね〜。


・活かす強度とカウンター、現状のスカッドバランスとゲームプランの再考

後半はより4-5-1というかヴィニシウスが守備でも左大外にいる時間が長くなった気がする。
サヴィオが右サイド(マドリーの左サイド側)にポジションを移してきたのも多少関係しているのかもしれない。あとは3バックに2トップでは特に制限効果が薄いことも感じ取ったとか。

また、2-0状況のマドリーはよりブロックを組んで待ち構えることを意識する。(前後分断プレスっぽい雰囲気も漂うが...)
前述の4-5-1型と、ヴィニシウスの気まぐれで彼が前に残ってベリンガムが左サイドも守る4-4-2型を使い分けつつ、前から積極的にというよりは攻撃を受け止めながら中盤の網で絡め取ってショートカウンターを狙う。
そこで生まれたのが3点目のベリンガムのゴール。
これは手数をかけずに自陣ブロックで引っ掛けた勢いそのままにカウンター発動した流れからである。

マドリー3点目のシーン

このシーンは前線3枚(ホセル、ベリンガム、ロドリゴ)のプレスが躱され、前進されたところから始まる。
ヤン・コウトのパスを受けたサヴィオに対し、後方ブロックから迎撃気味にボール奪取したチュアメニがベリンガムへ繋いでカウンター発動。
そのまま上がってきたチュアメニ→ホセルと繋ぎ、早めに足を振り切ったホセルのシュートのこぼれ球をベリンガムがボレーで沈めた。

チュアメニのボール奪取と状況判断は今季ずっと冴えており、奪取したボールをそのまま攻撃フェーズに繋げることができるのも魅力。

カウンターをシュートで完結させる意識を持ったホセルも流石で、このような意識の積み重ねが直近の調子に影響していることも伺える。

終盤のマドリーはベリンガム→セバージョスの交代を皮切りに、ブロック強度をある程度維持したまま、奪えばそのボールを保持し、前線のアタッカーで人数をかけすぎずに押し込むといったプレーを志向。
セバージョスは被ファールも上手く使いつつボール保持に貢献、ベリンガムクラスとまでは言わないが強度を担保できる運動量も強み。
後半87分で投入されたバスケス、ブラヒムも少ない手数でボールキャリーという役割を遂行。
そして、このまま試合は3-0で勝利を収める。

改めて現在のマドリーのスカッド構成を考えた時、やはり先行逃げ切りをメインプランにしたい
クロースやモドリッチのゲームコントロール能力は言わずもがな、セバージョスの運動量とテクニックはクローザー向き、メンディーあたりを投入すれば露骨に守備シフトを組むことができる。
逆に言えば、攻撃の切り札的な存在が少ないと言う寂しい事情も見え隠れする。(そういった意味でもブラヒムにも期待がかかってくる現状にも納得感は出る)
如何に逆境に強く、大逆転でファンを惹きつけられるチームと言えど、試合を通してリードを保ってゲームの主導権を握り倒すような試合ができればシーズンを通しての負担も減るはず。
それを実現できそうな人材が多いだけにそんな夢想をしてしまうのは私だけでしょうか。
まず序盤のシュートをしっかり沈めましょう。

・まとめ

可動域の広い選手達を多くピッチに散りばめ、保持の軸にクロースを置くこの試合のバランス感覚は、昨季の文脈も踏襲しつつ今季の強みも活かした良いバランスであった。
得点自体もホセルやベリンガムといった新加入組が記録したもの、今季やっと欠かせない軸となっているチュアメニのマドリー初ゴールなど、かなり充実した内容。
ケパをGKに据えて無失点なのも大きい。

今回はメンディー、フランのレスト的な意味合いも大きかったようであるが、チームのあらゆる局面に莫大なメリットを産むカマヴィンガの左SB起用は積極的に活用してほしい。
本人の意思や中盤での充実のプレーぶりを考えると躊躇するのも分かるが。

選手個々の特徴と志向を掛け合わせ、自然発生的に最適バランスを発現させることにおいてアンチェロッティの右に出る者はおらず、この試合もそれをまざまざと見せつけられた形。
今後どう変容していくのかは分からないが、1つ良い形が見えた収穫の多い試合だったのではないか。

・おわりに

カマヴィンガは左SB!ベリンガムは左IH!ヴィニシウスは左WG!という思想の強いサッカーファンである筆者の1つの願望が叶った試合でもある。
この試合を今季のマイルストーンにしよう。

稚拙な文章、お読みいただき誠にありがとうございます。
今季は気が向いたタイミングでレビュー書いたり書かなかったりします。多分。

※画像はTACTICALista様、レアル・マドリー公式様を使用しております。

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