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2023.06.05 LaLiga第38節 レアル・マドリーvsアスレティック・ビルバオ

・はじめに

おはようございます。こんにちは。こんばんは。
偉大なるバロンドーラーをはじめとした4名の退団が連日発表され、心休まる暇が無い中、1年を締めくくる最後の試合がやってきました。
ここまで37試合書いてきたレビューも今季はこれで終わりです。

以下、今シーズン最後のスタメン。

両チームのスターティングメンバー

DFラインはリュディガーの左SBにナチョのCBという組み合わせを前節から継続。
サプライズとなったのが中盤の構成で、セバージョスを左、カマヴィンガを右のIHに配置。
両者ともに左IHを得意とする選手で、この試合ではセバージョスが優先される形に。
最前線はベンゼマをブラジルコンビが挟み、有終の美を飾ってやろうという姿勢。
対するアトレティック・クルブは4-2-3-1の布陣。
両翼にイニャキとニコの兄弟コンビを採用
トップ下のサンセは188cmのサイズと技術を兼ね備えた23歳で今後も注目のアタッカー。

・試合内容

・意図が見えない保持スキーム

今季のマドリーの保持の特徴として挙げられる主なポイントは
「①ヒエラルキーの頂点はあくまでもクロース」「②中盤空洞化は厭わない」
「③U字循環の終着点になるボールサイドに人を集める」
といった点。
この特異性は時に相手を混乱に陥れるが、逆に意図が見えないまま悪い方向へ振れることもある。
この試合は後者寄り、残念ながら。

マドリーのボール保持概略図

基本的にはGKも使いつつ2CBでボールを繋ぎ、クロースが引き取って攻撃のスイッチを入れる。
しかし低めの位置でボールを持ってルックアップすれど、アトレティックが形成する4-4-2ブロックは無理して前に出て来ずにライン間管理を意識しつつ、コレクティブに陣形を保つ。
すると、コンパクトになったライン間でボールを受けることを嫌ったマドリー両IHが引いて受けるシーンが増え、中盤が空洞化する
その結果、ブロックの中でボールを受けて中継点になってくれる選手がいなくなり、相手のDFの1列目、2列目のラインを超えることが難しくなるといった現象が多発していた。

相手のブロックの外周をU字循環でなぞってみたり、クロースtoカルバハルのサイドチェンジをしてみたりといったお馴染みのアプローチも見せるが、エレーラ、ベスガのドブレ・ピボーテと逆サイドのSHのスライドの徹底により、あっという間にサイドからスペースを奪い取られる。

時折りライン間に顔を出したロドリゴがアクセントを加えた時や、ヴィニシウスが長距離のボールキャリーで陣地を大きく進めた時には多少ゴールに迫ることができていたが、個人技頼みの散発的な攻撃ではやはり簡単にはゴールを割らせてもらえない。

このように特に意図の見えないボール循環を繰り返して時間を浪費する中で無駄なパスの試行回数が増える分、ミスが出た際にはプロテクト能力の低いクロース脇を狙われる、もしくはサイドの快速アタッカーによるカウンターを食らうなど、ネガトラの部分で自らの首を絞めるような時間が序盤は続いていた。


・機能不全の右サイドと活かせない逆足IH

この日の攻撃がピリッとしなかった1つの要因が右サイド。
上で述べたアトレティックの中盤ラインのボールサイド圧縮により、その反対サイドには比較的スペースが空いており、クロースからカルバハルへのサイドチェンジはこの日も多く観られる形であった。
しかし、カルバハルが外でボールを持ってからの味方のサポート、選択肢がいつにも増して少ないのがこの日の停滞感に影響していたではないかと推察。

カルバハルが外でボールを持ってからフォローとしてやってくる機会が多くなる(はずな)のは同サイドのロドリゴやカマヴィンガ。
しかし、前者は中央寄りエリアでのプレーを好み、後者は低い位置でのビルド局面とネガトラ待機に関与する場面が多い。
それにクロースのサイドチェンジ速度のボールスピードも相まって、カルバハルへの迅速なフォローが提供できず、右サイドでノッキングが生まれるシーンが散見。

そしてこの日のトピックである「カマヴィンガの右IH起用による右サイド逆足IH配置の実現」というレア配置による恩恵も活かしきることができなかった印象。

右サイド起点の攻撃の1シーン

そもそも大外の幅と深さを担うカルバハルへボールが渡った時点でさほどサイド深部を攻略できていないため、相手のDFラインに対して大きな幅の上下動を強要できない点が痛かった。
相手のラインアップのタイミングで逆サイドの裏へ抜けた選手へのペナ角クロスは刺さるが、そのシチュエーションが創れていない。
そして、今季ずっとのしかかっていたボックス内不在問題もこのシチュエーションで改めて顕在化し、クロスターゲットの不足感も否めず。
また、そこまでラインを押し下げられていないため、ボックス手前からミドルシュートを放つスペースも少ない。

純な右WGがいないスカッドの歪さにおける右SBの考え方。
そして中盤唯一の左利きであるカマヴィンガの活かし方。

プレッシャーの無かったこの試合はチャレンジの過程と捉えられるが、またすぐ始まる来季に向けて改めて整理し直したいポイントが1つ浮き出た試合となった。
(個人的にはシティを真似て?右SBにCBチックな選手を置くのは反対です。)


・ギアチェンジするも根本は不変のまま

後半58分にアセンシオ、チュアメニ。
ベンゼマが無事(?)PKで得点を記録した直後にはモドリッチ。
選手交代を重ねて0-1、1-1の状況を打破しようとするも、この試合での根本的な問題は不変のままであった。

上述してきたように相手守備ブロックに苦戦し、いつもと違うユニット関係がチグハグな中で、基本的にはヴィニシウスやロドリゴの即興性に頼る傾向は変わらず。
アセンシオを投入して右サイドを担う選手を加えたことはロドリゴにとってプラスに働いていた感はあったが、肝心のゴールを産むことができない。

試合は時間が経つにつれ、次第にオープンゲームに。
その結果ピンチが増えるのはマドリーの方であった。
被カウンターの脆さが目立ち、1人後方に残されたミリトンが1on1を強いられるシーンや、その結果入れられたクロスをクルトワがなんとか止める場面が続くなど、リスクヘッジが不安すぎる守備に。
(クルトワが鬼の形相で喝を入れている映像が印象的であった。)
途中からリュディガーとナチョの位置を入れ替えるのだが、そのサイドが割られるシーンも次第に増える。
イニャキは勿論、終盤は途中交代で入ってきたベレンゲルにもバックドアを許すなど、マドリーの左サイドからクロスを許すシーンも散見された。

中盤も間延びし、もう後はいかにお互いがファイナルサードで崩し切れるか・耐え切れるかといった様相に。
ビッグチャンスは試合終了間際の後半88分。

後半88分のチャンスシーン

集中力が切れてきているのは相手も同じで、ビビアンの軽率な横パスを攫ったアセンシオが素早く前方右サイドへスルーパス。
流れたヴィニシウスが仕掛けてパレデスを抜き去り、ゴールエリアライン付近まで抉り込んで中央のロドリゴへパス。
しかし、このパスが少し足元に入ったため、ロドリゴのシュートは空を切る。

右サイドでもドリブルの効力が変わらないヴィニシウスは今季も何度か見られたポジティブ要素。
簡単そうなシュートを外してしまうロドリゴは今季も何度か見られたネガティブ要素。(?)

結局根本的な問題を解決できずに結果は1-1で終了。
今季最後の試合をドローで終える。


・まとめ

今季最後を締めくくる試合としては正直微妙すぎる結果と内容に。
守備ブロックの攻略に苦戦し、いつもと違うユニット関係が停滞感の種となってしまった。
ヴィニシウスやロドリゴといった今シーズンの希望達は光るプレーを随所で魅せてはいたが、彼らの即興性に頼らざるを得ない不安定さは変わらず。
守備も同じく、後ろの個人能力で抑える前提かのような被カウンター時の甘すぎるリスクヘッジ体制。

最後の試合となったベンゼマはいつも通りボールを捌きに降りてくるプレーを重ねるも、やはりプレーテンポの部分で重さは変わらず。
PKで得点を決められたことは素直に嬉しかったが、もっともっとゴールを揺らすシーンが観たかった。
アセンシオも短いプレー時間となったが、良い影響は与えてくれた印象。
現スカッドには少ない左利きであり、そのユーティリティ性と出た試合では結果を残す姿に今季は助けられた。

そして最後に来季について。
前線の即興性頼みの攻撃、ボックス内不在問題、中盤からの加勢、SBの運動量頼みの大外レーン管理、守備時のポケット管理、クロス対応、自陣ボックス内の抵抗力などなど、今季いくつも見つかった問題点を来季大きく変化する陣容でどう改善するか。
反対にヴィニシウスの成長、ロドリゴのトップ下起用という最適解、カマヴィンガがSBとして生み出せる価値、ミリトンのフィード能力、クルトワのディストリビューション向上といった上積み要素も来季にしっかりと持ち込んでいきたい。
また新しい良さも発見できると良いな。

未来への期待を残して本稿と今季のレビューを終わりにします。
お疲れ様でした。

・おわりに

個人的に思い入れのあった22-23シーズンが終わりました。
6冠目指して薄いスカッドで闘い抜いた結果は3冠。
レビューし続けたLaLigaのタイトルも逃すことになった悔しさはあるけれど、愛するチームの試行錯誤の過程と試合毎の喜びを定点観測し、記録に残し続けられたことは幸せでした。

稚拙な文章、お読みいただき誠にありがとうございます。
よければ拡散等していただけますと幸いです。LaLiga全試合レビューできました!!やったね!!
ここまで読んでくれてる方がもしいるのであれば最大級の感謝を贈りたいです。
本当にありがとうございました。
そして、よくがんばりました自分。

それでは!また来季会いましょう!

※画像はTACTICALista様、レアル・マドリー公式様を使用しております。

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