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2023.04.09 LaLiga第28節 レアル・マドリーvsビジャレアル

・はじめに

おはようございます。こんにちは。こんばんは。
コパでバルセロナを下して決勝進出を決めたのも束の間、難敵ビジャレアルをホームに迎え、またすぐにやってくるCLチェルシー戦を見据えた選手選考とプレータイム管理をする必要がある正念場。
今回はそんな試合のレビューです。

以下、スタメン。

両チームのスターティングメンバー

ミッドウィークにクラシコを闘い抜き、13日にはチェルシーとのCLを控えていた中で、一部ターンオーバーを意識したようなスタメンのチョイス。
ミリトンを休ませてリュディガーとアラバのCBコンビ。
アラバも復帰し、CBをこのようにローテーションできるのは幸せなこと。
前節から好調のアセンシオや1ゴールを記録したバスケスもスタメンに名を連ねる。
対するビジャレアルは最前線の核G・モレノを欠くため、技巧派MFロ・チェルソをCFで起用
チュクウェゼやパウ・トーレス、パレホ等のコアメンバー達は順当に。

・試合内容

・攻守において鍵を握る背番号11番

「この試合のアセンシオのポジションはどう定義しようか。」そんな戸惑いと共に序盤戦を観ていた。
トップ下と言えばトップ下、しかし前節の起用方法とタスクも踏まえてふわっと頭の中にイメージしていたそれよりもこの日のアセンシオはIH風味が強かった。
おそらく前節との差異である左IHが動的なセバージョスになっていたことも大きく関わっているのであろう。
(セバージョスの前進により、逆三角形になる時間が多い)

そしてトップ下〜右IHのこのポジションには大きなタスクがある。
相手の保持局面において中心となるパレホとパウ・トーレスの牽制である
前回対戦時はここを上手く抑える算段がついておらず、運ばれ放題配球され放題。

ビジャレアル保持時概略図

パウ・トーレスを比較的フリーにしてしまうシーンは散見されたが、自陣に引いてからは抑えるべきところを抑えられていた印象。
そして、そこから前にボールを進めるフェーズで大きな効力も発揮できていたので収支は個人的にはプラスに思えた。

オフェンス局面でもこのポジションは鍵を握る。
アセンシオが大きく貢献したことで生まれたのが1点目。

マドリー1点目に繋がるシーン

GKも含めたビルドアップから左サイドへ展開。
この時にポイントになる動きがセバージョスの“サイドフロー“の動き。
左サイドタッチライン側のWG-SB間に流れることで、内側のレーンを空けつつ、外側レーンに預け所を創出。
アセンシオはセバージョスが空けた内側レーンを利用し、そのエリアに降りてボール循環の中継点となる。
その後、アセンシオとセバージョスのワンツーでパス交換し、アセンシオの前向き局面を完成させ、長い距離を持ち運ぶ。
ヴィニシウスに預けた後、リターンを内側に送り込んだシュート(クロス)が相手のOGを誘発。
マドリーが先制点をあげる。

前向き局面を創出できればこのようにボールキャリーで貢献できるアセンシオ。
両翼のブラジル人が空間を広げつつコンビネーションで関わってくれることや、ビジャレアルが前からのプレスを志向し、そのプレスラインを越えれば比較的広めのスペースが広がっていることも彼にとっては追い風であっただろう。
このように、ここ最近のマドリーは如何にアセンシオの前向き局面を生み出せるかがチーム状態のバロメーターとなっている。


・成長し続ける世界最高左WGと新たにそれを支える者

1点目のシーンにも関与し、理解不能なドリブルで2点目も奪って魅せたヴィニシウス。
日に日に経験値を積み、プレーの幅を広げてきた彼がこの試合で対面するのはフォイス。
ビジャレアルの背番号8はSB位置から中盤、とりわけパレホの脇に入ってのボール循環への貢献や、守備者としての高い能力でヴィニシウスを攻守両面で苦しめてきた実力者。
そんな相手にも一歩も引かず、今季の特徴である“90分間通した継続火力“も保ちながら何度も仕掛け続けて脅威を植え付ける姿はこの試合でもよく見られた。

そして、ここではそんなエースヴィニシウスを支えたセバージョスにも焦点を当てたい。
後方支援型SBのナチョがヴィニシウスの後ろにいる分、よりヴィニシウスのサポートに奔走し、時には近い距離で間を繋ぐ必要が出てくるのがこの左IHのポジション。
そんな中で、2点目の際にも見せた“サイドフロー“。
これは左IHを務める上でチームに新たな価値と効果を生み出す重要な個人戦術である。
マドリーが基本的に使う左サイドのメカニズムは、「クロースが後方でボールを動かし、SBが前線とクロースの間を繋ぐようにそのまま縦方向に外側でボールを受ける位置取り、もしくは内側へのインバートによってハーフレーンに預けどころの中継点を作る」といった形がメインであった。
つまり「最初から外」、「外から内」という2パターンが多いということ。
そこに「内から外」にボールの中継点を作れるセバージョスの動きは新鮮で、ヴィニシウスのハーフスペースでの動きを促すこともでき、実際に2点目を生み出すことができた。
(ちなみにモドリッチはこの動きを頻繁に行うので、右サイドでは良く観測することができる。)

上記のサイドフローの上手さに加えて、ヴィニシウスが外で受けた際には後方でやり直しの受け皿としてのポジションをとって逆に展開し直す、ヴィニシウスのバックドアに合わせたロング〜ミドルスルーパスで打開するなど、ヴィニシウスという武器を最大化する上で相性が良い引き出しがある。
セバージョスは現状1.5軍のような起用をされているが、このスペイン代表がチームにとって重要なピースであることに変わりはない。


・止まらなかったチュクウェゼと塞げなかった内側

この試合で3得点に絡み、マドリーを絶望させたのが左利き右WGのチュクウェゼ。
前回対戦時も大外で基準点となるプレー、カットイン、レーンの使い方の巧さなど高水準なプレーでビジャレアルの攻撃を牽引していた

ナチョを弄んだ1点目はお見事。
そしてここで取り上げておきたいのが2点目と3点目。
どちらも大外から内側を向き、ボックス内の運びと外でのカットインから得点を生み出した。

ビジャレアル2点目のシーン

上の図(見にくくてごめんなさい)に見られるようにチュクウェゼが内側に正対して仕掛けられた際、マドリーの守備に2つ良くない点があるように見えた。
それは、
「①2対1構図にも関わらず門が開いていること」
「②ボックス内まで侵入させてしまっていること」

の2点。
①に関しては、基本的に縦方向をナチョが担当し内側をセバージョスが担当する中で、どちらもどっちつかずなポジショニングでチュクウェゼと正対してしまい、中途半端に間が空いてしまったところを狙われ、ゴール前にボールを供給されてしまった。
リーガのクラシコでもそうであったが、ボックス内の人海戦術に少し弱さを見せているのが少し最近のマドリーで気になる点。
この日もボックス内から弾き出せずにズルズルとゴールに近い位置から失点してしまった。
②に関しては、上に述べたことにもゴール前の弱さは勿論、言わずもがなファールを犯せばPKとなる恐れがあるため、ボックス外での対応を心がけたかった。

前半23分にも失点とはならなかったが同様にナチョとセバージョスの間を割られており、試合を通してこのシチュエーションに対する対抗策を見つけられなかったのは痛恨。

ビジャレアルの3点目

そして上の図のビジャレアル3点目のシーン。
こちらも外から打開を狙うチュクウェゼに対してナチョが対応している図であるが、バエナのフリーランにカマヴィンガが釣られ、“内側を塞ぐ選手がいなくなった“タイミングでカットインからのゴラッソを許してしまった。

カットインにも強みを持てるチュクウェゼに対し、縦はナチョ、内側はセバージョス(交代後はカマヴィンガorモドリッチ)が塞ぐ守備で対応したが、ここで内側の選手があっさりとした対応をしてしまったことが誤算。
一度内側への侵入阻害を任せた状態のSBがそのカバーに向かうことは難しく、結局は2対1状況を活かせていないのと同義。
この辺りの細かい守備は今後の改善点であろう。

そのまま2-3で敗戦。
ビジャレアルに今回も勝利できず。

・まとめ

前節で大量得点を記録した前線4枚をそのままこの試合でも採用し、序盤でその恩恵を受けるような得点で先制したこと、そして難敵ビジャレアル相手にリードを得たことにより、好発進したまま試合を進められると思っていた。
しかし、チュクウェゼの脅威に抗う術を持てず、カットインとキックレンジに長けたWGへの対策に後手を踏み続けて3得点に絡まれる悔しい結果に。

ヴィニシウスはこの日もスペシャルな存在であったのと、セバージョスがヴィニシウスのサポーターとして効力を発揮していたことは好印象。
上手くレーンを移動しつつ、ピッチを駆け回ってゲーム構築に貢献。
故に、そんな動的なセバージョスに合わせられるカマヴィンガのSBもこの試合で個人的に少し欲していたのも事実。
チュクウェゼへの対応に関しては、カマヴィンガであれば止められたという話ではないと思うが、特にオフェンス、保持局面でもう一つプラスαを足しておきたかった。

2度リードを保てたにも関わらず、追いつかれ追い越されたことは重く受け止めるべきである。
リーガが厳しい状況でCLが重要なのも理解はしているが...。という印象の試合であった。

・おわりに

ターンオーバーという事情はあったが、結果としては敗戦。
ビジャレアルにシーズンダブルを決められたのは個人的にはとてもとても悔しい。
難敵であることは理解しているだけに、今季打破する姿を見たかったのは私だけであろうか。

稚拙な文章、お読みいただき誠にありがとうございます。
よければ拡散等していただけますと幸いです。今のところLaLiga全試合レビューするつもりではいます。多分。

それでは!

※画像はTACTICALista様、レアル・マドリー公式様を使用しております。

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