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『木曜日にはココアを』~人と夢を繋ぐマスターとパラレルワールドの中で出逢う人々~

 青山美智子,『木曜日にはココアを』,宝島社,2019

 【感想】青山美智子さんの作品、『鎌倉うずまき案内所』に続き読んだ2作目。ひとつひとつの短編として読んでいても、全てのお話が最終的にはぐるっと一つに繋がっているのもおもしろかったです。まだ2作品しか読んでいませんが、青山さんのパラレルワールドの世界は発見がたくさんあって、サスペンスやミステリーではないのですがスリルがあります。「あのお話の登場人物がここにも」とか「この人と繋がりがあったんだ」と、青山さんの世界にどんどん引き込まれました。喫茶店「マーブル・カフェ」の「(人を)見る目だけはある」マスターは、その眼力(と言うのかな)を発揮して人と夢を繋いでいきます。私が印象に残ったのは「夢はかなったところから現実だから。俺、夢が好きなの。だからもういいんだ」と言うマスターの言葉。人と夢を繋ぐマスターだからなのか、少し切ない気持ちにもなりましたが納得できるような気もしました。それはマスター自身がたくさんある夢の途中にいるのかもしれないし、私もまたきっとそうであるから納得できたのかもしれません。もしくは、マスターは人と夢を繋ぐきっかけをくれる人で、夢を実現したあとのことはそれぞれにゆだねているのかもしれません。そう考えると、「見る目がある」マスターにお墨付きをもらえたような、そのあともがんばれそうな気がしてきました。

 最後に余談ですが、青山美智子さんは「渦を描くもの」から「巡りめぐるもの」を連想されるのかな、と個人的に思いました。(鎌倉うずまき案内所、マーブル・カフェ)

 

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