Steamでゲームをリリースした前後に考えていたこと
個人ゲーム開発者のKITTYPOOLです。初めてのnoteを書きます。
この記事は、Steamゲーム開発者の先輩たちが書いている「こんなことに気をつけろ!」といった有用なものではありません。
結論をいうと「全然売れていないけど、希望はあるよ」といった内容です。
あくまでも私が考えたり感じたことの記録の雑記なので、どなたかの参考になれば幸いです。
0: 結論
記事が長くなってしまったので、お役立ち情報だけ読んでブラウザバックしたいかたのために要点をまとめておきます。
開発スキルが低いなら得意なジャンルに特化したほうがいいゾ
習作のリリースなら「売れたい」とか思わないほうが精神的だゾ
切迫してないなら売上100ユニット未満でも舞い上がるほど嬉しいゾ
ミニゲームはクオリティが低くてもとりあえず実装すると次のメリットがあるゾ(ただしプレイが不快なのが明白なら実装しないほうがいいゾ)
「ミニゲームがあるよ」とストアに書けるので売上に繋がるゾ
レビューで酷評されて「私にこのジャンルのミニゲームを作る才能は無い」と気付けるゾ
例えばキー配布で配信者がクリアまで配信してくれたら、その視聴者数は悪く言えば「カネを出さずに最後までプレイして一生買わないユーザー数」ではあるものの同時に「元々買う予定が無かったのに最後までゲームをプレイしてくれたユーザー数」としてもカウントできるゾ
1: 開発開始まで
私はSteamでゲームをリリースする前に、itch.ioで3作品、iOS/Androidで2作品をリリースしています。ほかに、習作としてデスクトップアプリなども公開しています。
それらの作品は全て非ノベルゲームなのですが、次々とリリースするなかで次のようなことを考えました。
私は凝ったシステムのゲームを作るのが超ヘタクソだな……
iOS / Android はビルド~リリース作業が死ぬほど面倒だな……
もうPCゲームに専念しよう……
有料で売りたいから、やっぱりSteamが良いんじゃないか………
物語を描くことに専念するためにノベルゲームしか作らない人になろう………
かねてから構想を練っていた『くつひも物語』(RPG)も、ノベルゲームとして作ることにしよう………
前述のとおりノベルゲームを作ったことはありませんから、『くつひも物語』の練習のために1~2作品作っておくべきだろうと考えました。
そういったわけで、「売れるためではなく、あくまでも習作として好きなように作ろう」と思いはじめに作ったのが
2: 『MY ANIMA BOY』開発開始
です。作る前に決まっていたことを列挙すると、
ゲイの物語で、ハッピーエンドにしよう
システムはシンプルに「選択肢すら無い、完全な一本道のノベルゲーム」
『くつひも物語』で採用予定の「マップを選んでノベルが始まる」という機能も頑張って実装しよう
背景はAI生成、キャラ絵はできるだけ時間を掛けずに描こう
…ということくらいだったと思います。
製作前に決まったあらすじ…
…は、尖ってるといえば尖ってるし、引っかかりが無いといえば無い、なんとも中途半端なものですね。
さて、「これは習作なんだ」と自分に言い聞かせていたわけですが、作っているうちに愛着が湧いて、「やっぱり売れてほしい」という想いが強くなっていきます。
その複雑な想いが3ヶ月強の製作期間でしっかり発酵し、リリース時には「絶対に売れなければならない」という、かなりまずい状態に熟成されていました。
3: 『MY ANIMA BOY』リリース前夜
『MY ANIMA BOY』は、私にとって初めての有料ゲームです。
金額はSteamでの最低金額「120円」にしているものの、内心はとっくに習作とは思っておらず、それどころか「これが売れなかったら一生売れない」とまで考えていて、緊張しつつリリースボタンを押したことを覚えています。
4: 『MY ANIMA BOY』初週売上48本
初のSteamゲーム『MY ANIMA BOY』は、宣伝らしい宣伝をほとんど行いませんでした。
そもそも宣伝方法がわからなかったし、クオリティにも自信がなかったので、プレスリリースメールをいくつか送って、それで終わりにしました。
そんなものでも、「ゲイ」「BL」「インディービジュアルノベル」といった要素がジャンル固定客の目に留まったのか、初週で48ユニットを売り上げました。
私のそれまでのゲームは「良くて5ダウンロード」というレベルだったので、48という数字は信じられないほど嬉しいことでした。
さらに、私の観測範囲では6~7人のかたがプレイしたことを何らかのかたちでネット上で表明していただけました。
これが本当に嬉しくて、本来はあまりそういうものに反応してはいけないのかもしれませんが、抑えきれずコメントしてしまったものもありました。
一週間のセール期間を過ぎると、売上が止まりました。
ポロポロと売れはするのですが、きっかけなく売れることはないということなのでしょう。
そんなこんなで、早々に開発を開始した次なる習作が
5: 『はぐるま物語』開発開始
です。『くつひも物語』の習作第2弾として開発前に考えていたことは
「売れたい」←おかしい
独白で進行するノベルは万人受けしなそうなので、セリフのみで進行する形式にする
ミニゲーム導入
グラフィックをちゃんと描く
ということです。
はじめに、前作で学べたはずの「習作なんだから、売れたいとか思わないほうが良い」という考えは全然ありませんでした。アホですね。
さらに、本作ではミニゲーム導入にも挑みました。
これもおかしくて、私はそもそもミニゲームを作るのがヘタだから、物語に専念するためにノベルゲーム開発者になろうと思ったのだし、ミニゲームなんて実装する必要ないはずなのです。アホですね。
6: 『はぐるま物語』リリース直前
『はぐるま物語』は、前作同様に価格を120円に設定しました。
明らかに前作よりボリュームは上がってるし、クオリティにもやや自身があったものの、やはり「習作」として作ったものという想いはあったため、価格を上げる気にはなりませんでした。
だったら無料にすれば良いのですが、「後年になって売れると良いな」「安くても有料のほうが良い物だと思ってくれそうだな」という考えから、設定可能な最安値を採用したわけです。
ただし、キーは大量に配布しました。レビューサイトへのレビュー依頼、パブリッシャーへのパブリッシング依頼、インディーノベルゲームのプレイ実績がある配信者へのプレイ依頼、インディーゲームイベントへの応募まで、思いつく限り片っ端からキーを送りまくりました。
結果、
7: 『はぐるま物語』初週売上73本
前作から大きく(? この表現には参考文献や出典が示されていません)数字を伸ばして、初週に73ユニットを売り上げました。もちろんキーによる無料DL数は含まれていません。
8: なぜ売れた?
前作よりも売上が伸びたのは、単純にストア画面の引きが良くなったことが原因と思います。ストア画面から得られる情報に限って前作と比べてみると
グラフィックがポップ
ミニゲーム / 所持金システムというノベルゲーム以外の要素がある
セリフ主体の読みやすそうなノベルであることがスクリーンショットからわかる
'ゲイ' や 'BL' といった好みの分かれる要素が無い
といった形で、ささやかながら明らかな(売れそうな)差があります。
9: グラフィックって、大事だったんだ……
前作『MY ANIMA BOY』のデザインは、意図的に頑張りませんでした。
むしろ「とにかくグラフィックに時間を掛けずに作ろう」「どうすればグラフィックに時間を割かずにゲームを完成できるか」ということばかり考えていました。考え抜いた結果があのデザインです。
対して『はぐるま物語』のグラフィックは(一切手抜きしていない、とは言いませんが……)かなり時間を割いて作りました。
どうせ『くつひも物語』では気合いを入れたグラフィックで製作することになるのだから、その練習もしておきたかったのです。
結果として、『はぐるま物語』の時間を掛けたグラフィックはストア画面で大きな'引き'になり、売上に貢献することになりました。
ビジュアルノベルゲームですから、単純にゲームとしてのクオリティも上がった……と思いたいです。
10: ミニゲームは、あれで良かった
『はぐるま物語』のミニゲームは、クオリティ的には酷いものでしたが、「ストアに書ける」という意味では実装して良かったと思います。
ノベルゲームファンには「ミニゲームが面白いノベルゲームしか好きじゃない層」がいるイメージなので、そういった方々も一定数購入してくれた、という事もあると思います。
そういう目的で購入してくれた人には、酷いミニゲームでガッカリさせてしまった可能性が高いので申し訳ない……………と言いたいところですが、私はノベル部分に過剰な自信があるので、あまりネガティブにならず「ミニゲーム目的で購入した人にも良いノベルを体験させることができて良かった」と思うようにしています。
なお、先ほどから「ミニゲームは酷かった」と繰り返していますが、リリース時には「楽しんでくれる人もいるかも」という謎の期待がありました。
しかし、少ないレビューでほとんどのかたがミニゲームに否定的な感想を書かれていたため、私も「やっぱりアレ酷かったよね……」と気持ちを切り替えることができました。
『はぐるま物語』のミニゲームは、私に「ミニゲームを作る才能が無い」と改めて気付かせてくれる結果となったのです。
11: キー配布はやって良かった……たぶん
初週の時点では記事で取り上げられることも配信されることも一切無かったため、初週売上とキー配布は無関係です。
キー配布によって配信プレイを行っていただいた方々もいたのですが、私はその配信が売上に貢献したかどうかにはあまり興味がありません。
本作は120円で販売していて、知名度はゼロで、売れまくったとしても一財産築けるわけではありませんから、とりあえず多くの人の目に留まってくれたらそれで良いのです。
私のノベルゲームはゲーム性がほとんどありません。
そのため、本来買う予定の無かった人でも、配信動画によってゲームをエンディングまで観ていただけたなら、それは「クリアした」とあまり変わらないと思っています。
キー配布によるデメリットは……いまのところ思いつかないので、たぶん、やって良かった……と思う……。
12: こんなところまで読んだあなたに言いたいこと
お役立ち情報としての結論は初めに書いたとおりなのですが、このように冗長な記事を最後まで読んでいただいたあなたは、きっとゲーム開発者かそれに類するかただと思います。
そんなあなたに言いたいのは、ポジティブな気持ちでリリースを重ねていれば意外と希望はあるということです。
売上本数を見れば私のゲームは全然売れていないし、専業化なんて夢のまた夢のように思うかもしれません。
しかし、『はぐるま物語』リリースによって、『MY ANIMA BOY』も売上が伸びました。このように、リリースを続けていれば少しずつ過去作品も売れていくのだと思います。
売れ筋の個人開発ゲームと比べると、私の作品はかなり偏っていて、クリエイターとしてのマスターベーションだとか、角オナとか言われても仕方ありません。
しかし、私は月に50万とか100万とか売れたいわけではありません。北海道に住んでいるので生活費が安く、月20万円稼げれば専業化できるし、30万円に到達すれば今よりも収入が上がります。
「UNDERTALEみたいに売れたい」などと考えていたら「やっぱり無理だから辞めた」と挫折してしまうかもしれませんが、まずは専業化できる金額を目標にすれば、学びと共に少しずつ前進できると思うのです。
最後に、ウィリアム・S・バロウズ先生が心臓バイパス手術を受けることになり、麻酔医から「これから全身麻酔を注入します」と告げられた際の言葉を引用して記事を締めたいと思います。
あれ、すみません。これ関係ないですね。すみません。
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