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虫展を三つの異なる視点で観る【虫展:21_21 DESIGN SIGHT】

虫展(21_21 DESIGN SIGHT)

ここでは、虫展をデザイン・忍者・パルクールの3つの異なる視点で観て思ったこと、考えたことを書いていきます。

デザイナーの視点

「虫展」では、はじめに虫の面白さについて驚きをもって伝え、次のコーナーでは虫を楽しくわかりやすく解説、虫の基本知識がわかったところで虫に学んだ様々なデザインが展示されるという構成になっています。

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以下、いくつかの展示を紹介していきます。

「道具の標本箱」では、虫は体を進化させて状況に適応し、人は道具を発展させて状況に適応してきたことを、虫の標本(と説明画)と道具の機能をともに並べて説明しています。虫の体の機能に驚かされながらも同時に、何気なく日常で使っていた道具の機能について見つめ直すことができます。

「髪の巣」では、有機的なゴミであるクルミの殻と髪の毛を使った素材で作ったシェルターを展示しています。環境に優しく十分な強度を保ったサステナブルな巣です。(髪の毛、特に女性の髪が頑丈なことは昔の忍者も知っており、これでロープを編んだりしました。)

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「極薄和紙の巣」では、ヒノキとケヤキの骨組みと和紙を利用したトビケラのための巣が展示されています。職人の手による高度な技でわずか3mmと細く作られた骨組みと、同じく職人の手によって作られた世界で最も薄い和紙を使用して制作されています。虫を参考にして学ぶことで、人はさらなる高度な技術を会得することができました。

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虫展をデザインの観点から見ると、この虫のこの特徴はこれに使えるかもしれない!という「虫→デザイン」の利用法と、この問題を解決する良い方法が虫の中にないかな?という「デザイン→虫」の利用法の2種類があると思います。

しかし、前者の利用法だとデザインの必要性がないことが多く、後者の利用法では参考とする虫を調査するのに途方もない時間がかかります。多くのデザインの場合、良いデザインが完成した後に、実はこのデザインのこれは虫のこの特徴と一致していました。という答え合わせでしか虫の利用法はなく、実際に虫を参考にデザインを行うというのは大変なことです。

それでも、虫(虫じゃなくても色んな事柄)に興味を持って、使えるかどうかはわからないけど雑学程度に面白いからという理由で知識を自分の中に蓄積して、それをアイデアの引き出しにしたり、ふとデザインに応用してみたりという点で、「虫を参考にしたデザイン」を考えられればと思います。

忍者の視点

虫の行動や進化の過程、身体機能は忍術(忍者の使う術技)に応用できることがとても多いです。

もとより、忍者は動物や虫の動きや性格を真似して忍術を編み出し、実際に用いてきました。(蜘蛛の伝、蚤・虱の伝、虫遁の術など虫の名前が付く術技があります。)

本展示の「視点の採集」や「擬態化のデザイン」のように、虫の模様を応用すればカモフラージュに役立ちます。模様をまんま真似するだけでなく、同じ種類の虫でも模様が違うことがあれば、なぜ模様が違うのか?を調べることでより高度なカモフラージュを考えるヒントになり得ると思います。

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「トビケラの巣」のような、トビケラの幼虫が草木を集めて作った住処参考にして、野宿に使うための即席簡易テントだって考えられるかもしれません。

トレイサー(パルクール競技者)の視点

展示の最後では「MAO MOTH LAOS」と題し、ラオスで蛾とともに生活し、フィールド研究をしながらブレイクダンサーとして活躍する小林マオさんのドキュメンタリー映像が流れます。蛾の飛び交う中ブレイクダンスを踊る様は、蛾と一緒になって空間を舞っているように見えました。

蛾の舞う動きからインスピレーションを受け、ブレイクダンスの動きを組み立てていく。身体表現というアート、蛾の行動を基にして動きをデザインしているように思います。

トレイサー(パルクール競技者)の視点に立ってみれば、パルクールの動きも地面を這うアリや、宙を舞う蝶などの動きをトレースしてみたら、新たらしい形の動きが発見できそうです。虫の行動を真似したフロー(どんどんと技を繋げることで作る流れ)を考えることもでき、虫とアートや身体表現の親和性は、デザイン以上に高いものだと感じられます。


🥷忍者の思考と精神を身につけるべく、日々修行を行ってますので見届けてもらえると幸いです。あとお仕事のご依頼もお待ちしております🙇‍♂️。サポートは兵糧(ひょうろう)に使わせていただきます。 WEB:https://shinobi-design-project.com/home