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東京オリンピックの裏でタブラの演奏を実況することになった

(追記)このイベントはすでに終了しています。

次回の実況芸イベントは、タブラ奏者のU-zhann(ユザーン)さんとセッションする。タブラとは、北インドに伝わる打楽器で、インドでは日本のピアノのように習い事に含まれるポピュラーな楽器だが、日本では演奏する人は少ない。では、なぜこの珍しい楽器を僕は実況しようと思ったのか。ここで説明しておこう。

イベントの開催を決めたのは楽器よりも、まずU-zhaanさんの存在である。年に一度はインドを訪れてタブラの修行を続け、鎮座DOPENESSさんや環ROYさんらと作り上げるU-zhaanさんの楽曲が、僕は以前から好きだった。演奏だけではない。フジテレビで数年前に放送されていた『ヨルタモリ』という深夜番組で、タモリさんの隣に座っていた姿を憶えている人もいるかもしれないが、U-zhaanさんのキャラは、単にタブラというジャンルに収まらない魅力があるのだ。


そんなU-zhaanさんと初めて会ったのは『ヨルタモリ』の放送以前、友人であるイラストレーターの本秀康さんから紹介された2010年のことだ。当時は挨拶程度の会話のみだったが、それから9年経って、僕のラジオ番組にゲストとして来てくれてじっくり話す機会が巡ってくる。18歳のときに川越の百貨店で買ったタブラに夢中になり、単身インドに渡って修行したこと、その後、ザキール・フセインという世界的な演奏家にも師事していること、今も師匠に近づきたいと思って練習を続けていることなどを話してくれた。

マネジメントやレコード会社の意向ではなく、自分で考えて行動する姿勢に勝手に自分との共通点を感じたし、「実は今度、あいちトリエンナーレで40日間、タブラを叩き続ける修行をやるんですよ」と聞いた瞬間から、僕は実況とセッションできるのでは、と直感したのである。あれから時間が経って、改めてメールでセッションに誘ったところ、快諾してくれたというのがいきさつである。

では、タブラと実況でステージで何をやるのか?もちろん、打ち合わせはしているものの、「内容はあんまり細かく言わない方が面白いと思います」というU-zhaanさんの意向で、あえてイベントの内容は明かしていない。U-zhaanさんのホームページには、わずかに「何が起きるのか、期待と不安がすごいです」と書かれてあるのはそんな理由である。

打ち合わせとは別に2人で対談した様子を文字に起こしてあるので、時間に余裕ある人には以下のリンクから読んでもらいたい。音楽ライターの松永良平さんが読みやすく構成してくれている。


冷静に考えると、国内トップクラスのタブラ奏者を不安にさせるなんて、我ながらずいぶん図々しいことをやってるなと思う。でも、自分が動いて実現した話だし、巡り合わせもある。きっと、いろんなタイミングで今、2021年の夏なのだ。これまで何度か音楽家とセッションしてきた経験から想像するに、タブラは音量的にもリズム的にも、実況といちばん相性が良い気がしている。そして、面白くなりそうな予感がするのだ。

さて、イベントの当日である8月7日、東京オリンピックは19競技でメダルが確定するクライマックスを迎える。「ニッポン、またしてもメダル獲得です!」とNHKや民放キー局の実況アナウンサーたちが日本選手の華々しい活躍を伝える裏で、ただひとりタブラの実況なんて、いかにも自分らしいなと思う。我が道にもほどがある。でも、もしかしたら、スポーツ以上に筋書きのないドラマが起きるかもしれない。そんなことを想像すると、今から僕の心は弾んでしかたがないのである。




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