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ジェーソンvs同業他社の比較

このノートは何?

主に自分の備忘録として、主力として大きく売買した銘柄について考えたことなど記録しておくものです。特定銘柄への投資を推奨するものではございません。 個人的に調査・考察した内容であり、その正確性や厳密性については保証できません。 情報の利用にあたっては、ご自身で一次情報を確認することをお勧めします。

当記事は下記記事の続編です。先に下記記事を読んでいただくと理解が進みやすいと思います。

銘柄分析 ジェーソン
https://note.com/kiyofesco/n/n4324885c4795

以降では、ジェーソンと業種が近いと思われる数社を対象に、主に業績面や株価指標を比較して、今後の成長性や割安感を考察していきます。

比較対象各社の概要

はじめに、当記事で比較対象とする各社の概要を紹介します。

【ジェーソン(3080)】
JASDAQ上場。時価総額は約66億円。首都圏でディスカウントストア「ジェーソン」を展開。店舗数は21.2期末時点で104。ほぼ全店舗が直営店。

【神戸物産(3038)】
東証一部上場。時価総額は約1兆643億円。「業務スーパー」を全国展開し、急成長中。店舗数は20.10期末時点で879。フランチャイズが中心。ちなみに本社は神戸ではなく、加古川市。

【パン・パシフィック・インターナショナルHD(7532)】
東証一部上場。時価総額は約1兆6110億円。「ドン・キホーテ」を全国展開。グループ傘下に長崎屋、ユニーを擁する。店舗数は21.6期末時点・グループ合計で国内583、海外84。東南アジアでの出店に注力中。

【MrMaxHD(8203)】
東証一部上場。時価総額は約248億円。九州を地盤に総合ディスカウントストア「ミスターマックス」を展開。関東進出を積極化。店舗数は21.2期末時点で57。

【Olympicグループ(8289)】
東証一部上場。時価総額は約169億円。首都圏を中心に、スーパーマーケット「オリンピック」を展開。ホームセンターとの複合店舗も。21.2期に同業の非上場企業を買収。店舗数は21.2期末時点・グループ合計で97。

【スーパーバリュー(3094)】
JASDAQ上場。時価総額は約36億円。埼玉・東京を地盤にスーパーマーケット「スーパーバリュー」を展開。ホームセンターとの複合店舗も。店舗数は21.2期末時点で34。

比較方法

この記事での比較軸は次の4点に絞りました。(1)ROE、(2)粗利益率、(3)営業利益率、(4)PERです。また比較する業績は、直近通期決算での実績値と、今期業績予想を使用します。時価総額は当記事の執筆開始時点で直近の、2021/10/15大引け時点を参照しています。

まとめた数値の表をべたっと貼ると、下の画像の通りです。

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それでは、各比較軸について一つずつ見ていきます。

比較(1) ROE

言わずもがなではありますが、ROEは自己資本に対する純利益の比率です。自己資本に対してどの程度の利益を上げることができているかを示します。ROEが高いほど、効率良く資本を活用して利益を出せているということになります。

ROE比較

各社とも、前期実績の方が今期予想ベースよりも高くなっています。前年度は感染症拡大・外出自粛による巣ごもり特需の影響が大きいためです。小売業でも商品や業態によっては逆風を受けた時期ですが、ここに挙げた6社はいずれも生活必需品を主に扱っており、前期業績は絶好調でした。

ジェーソンの21.2期実績ROEは19.36%。他社に比べて優秀な数値です。22.2期の業績予想ベースROEは他社並みの水準です。但し業績予想は控えめで、2Q時点で純利益の進捗率は69.8%に達しているため、上方修正を期待したいです。

神戸物産は30%近い数値を叩き出しており、流石です。自己資本比率が約45%、ネットキャッシュがプラスと、財務レバレッジが強く効いているわけでもない状況で、このROEは驚異的ですね。同社は中期経営計画で定量目標の一つにROE20%以上を掲げていますが、現在のところ上回って推移しています。

スーパーバリューに関しては注意が必要です。同社の21.2期業績が好調だったことは確かですが、高ROEの裏には財務レバレッジの高さがあるためです。21.2期末時点で、自己資本比率は12.0%と低水準にあり、ROEが高く出やすくなっていました。この点を補うためにはROAを併用すると良いと思いますが、スーパーバリュー以外の各社は総じて自己資本比率が高いため、今回は割愛しています。

パン・パシフィックは今期予想ベースROEが13%台と、他社に比べてやや高めです。同社の成長戦略は東・東南アジアでの積極出店と集客強化であるため、日本国内だけでなく海外の感染症対応状況にも影響されそうです。最近の円安傾向は追い風になると考えられます。

比較(2) 粗利益率

次に、粗利益率を見ていきます。スーパーマーケットやディスカウントストア業態は、安く商品を販売することが基本戦略となるため、粗利益率が低くなる印象がありますが、実際のところはどうでしょうか。

参考程度ですが、スーパーマーケットで商品種別ごとに目標とする利益率が公表されていました。店舗全体では25%前後といったところでしょうか。

出典:統計・データでみるスーパーマーケット
http://www.j-sosm.jp/numeral/2017_29_02.html

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今回の比較対象6社の前期実績ベース粗利益率は以下の通りです。売上総利益の予想値は公表されていないため、前年度の実績値のみです。

粗利益率比較

ジェーソンの粗利益率は26.94%。6社の中では平均的、先に貼ったスーパーマーケット一般の目標値に対しても同程度といった位置です。

神戸物産の粗利益率が比較的低いのは、同社がFC中心に展開しているためと考えられます。同社の工場で商品を製造し、販売価格よりも安くFC店舗に卸すため、どうしても利幅が小さくなるのでしょう。その分、人件費がFC店舗側の負担になる、広告宣伝費もFC側に一部負担してもらえることで、販売管理費の負担は小さくなるのだと考えられます(販管費を反映した営業利益率については次項にて)。

パン・パシやオリンピックの粗利益率が比較的高いのは、家具・家電、自転車、時計・鞄などのブランド品が寄与しているのではないかと考えています。なお、巣ごもり特需による一過性要因の可能性も疑いましたが、粗利益率に関しては前々年度も同程度だったので、事業構造的にこの程度の粗利益を出せるモデルになっているといえそうです。

比較(3) 営業利益率

続いて営業利益率です。人件費や広告宣伝費を中心とする販売管理費が反映され、事業の実力を測りやすい指標だと思っています。

営業利益率比較

ジェーソン、パンパシ、Mr.Max、オリンピックが概ね横並びで、神戸物産が頭一つ抜けています。先述の通り、業務スーパーはFC店舗が多く、直営店に比べ人件費や広告宣伝費の負担が軽減されるため、納得感があります。

ジェーソンの今期予想は、他社と比較するとやっぱり控えめすぎるように見えますね。。。なお、2Q時点で営業利益の進捗率は72.7%です。上方修正はよ。

比較(4) PER

最後にPERを比較します。今の株価が高い・安いを測るというより、市場の注目度・期待度を測る意味があると思っています。

PER比較

分かっていたことではありますが、神戸物産がずば抜けて高水準です。近年の急成長から納得感はあります。高成長の期待が織り込まれているようにも思われますが、いつまで快進撃が続くのか、今後の成り行きが楽しみです。

パン・パシフィックも比較的高いですね。ドン・キホーテの知名度や収益性を考えれば、妥当といえるかもしれません。同社が推進している海外展開への期待も、十分に織り込まれているように見えます。同社にとっては、ASEAN各国で感染症対応がひと段落してからが本番だと思います。

他4社は、ジェーソンも含め、不人気といっていい水準ですね。現在だけでなく、だいたいいつもこんな水準で推移してきたと思います。いわゆる万年バリュー株、バリュートラップというやつです。

ジェーソンの今期予想PERは12.52倍と若干高めで、今期予想に対する上振れ着地を一定程度織り込んでいると考えられます。2Q決算発表後に株価が急落したのも、上方修正期待が高まっていたことの反動と考えてよさそうです。

まとめ

各指標を比較してみての感想ですが、投資対象として検討に値するのは、やはりジェーソンでした。物流内製化と飲料水事業の獲得によるコスト抑制(=利益率向上)効果が、今後もじわじわと効いてくるはずです。長い目で期待します。

期待度はやや落ちますが、オリンピックも候補としてありかなと思いました。粗利率の高さが魅力で、販管費を抑制する施策が打てれば、大きく再評価される可能性があると思います。

Mr.Maxは今回比較した指標では可もなく不可もなくと思ってしまいましたが、深く調べると面白い点があるかもしれません。九州で地盤を築いてから関東圏に積極進出、という経緯は好感しています。

パンパシは、ASEAN展開に夢を感じるならばアリかもしれません。参入障壁があまり高くない業態であり、数年後は現地企業との競争において優位性がなくなってしまいそうな気もしているのですが。

神戸物産は、成長力が素晴らしいけど、今から入るには遅く感じてしまいます。根っからグロース好きの人は飛び込めるんだろうなあ。

スーパーバリューは、業績不振と財務不安が解消すると自信をもてるなら、今の水準は安いと思います。私は買えないと判断しました。

本記事は以上です。お読みいただき、ありがとうございました。

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