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大泉製作所の製品分野別売上高を細かく試算する

このnoteは何?

私が書いた他の記事で、大泉製作所の製品分野別売上高・売上比率について考察する箇所があります。そのベースとなる、大泉製作所の決算資料で公表されている製品分野別売上高は、17.3期と18.3期には「空調」と「エレメント・カスタム部品」、19.3期以降は「空調・カスタム」と「エレメント」に区分されています。売上高の推移をおうにあたって、セグメントの連続性が失われるのは少し困るので、可能な範囲で試算してみよう、という内容を本記事にまとめます。試算の中では、非公表数値の推測や、端数切捨てにより微差が生じる箇所があるため、正確性・厳密性を保証いたしません。あらかじめご了承ください。

公表数値のまとめ

最初に公表されている数値を集めます。各期の決算短信の「外部顧客向け売上高」から、空調・カスタム部品・エレメントに関連する数値を拾います。

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18.3期のカスタム部品売上高を計算

18.3期については、18.3期決算短信の当期業績と、19.3期決算短信の前期業績が公表されているため、4つの項目が埋まりました。「空調・カスタム」4,024百万円から「空調」3,030百万円を除くと、「カスタム部品」の売上高は994百万円となります。

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17.3期の各数値を試算

17.3期の空白セルを埋めていきます。18.3期の決算短信の概況に、以下のコメントがあります。

「空調・カスタム部品事業分野においては...売上高は前年度比3.9%減少」
「エレメント部品事業分野においては、...売上高は前年度比1.1%の微増」

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上記より、以下の試算を行います。

18.3期のエレメント売上高は、前年度比1.1%増。
19.3期決算短信より、18.3期のエレメント売上高は872百万円。
以上より、17.3期のエレメント売上高は 872 / 1.011 = 863百万円。

17.3期のエレメント・カスタム部品売上高は1,751百万円。
ここからエレメント売上高863百万円を除くと、カスタム部品売上高は888百万円。

17.3期の空調部品売上高は3,291百万円。
ここにカスタム部品売上高888百万円を足すと、「空調・カスタム」売上高は4,179百万円。

(検算)
18.3期の空調・カスタム売上高は前年度比3.9%減少、つまり前年度比96.1%。
19.3期決算短信より、18.3期の空調・カスタム売上高は4,024百万円。
上の試算より、17.3期の空調・カスタム売上高は4,179百万円。
4,024 / 4,179 = 96.3%
96.1%から若干ずれるが、概ね正しいと考えられる。

上記試算により、17.3期の製品分野別売上高を埋めます。

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19.3期~21.3期のカスタム部品売上高を試算する

ここからは推測・仮定の部分が増えるため、精度が落ちます。

シェアードリサーチ社が発行するレポート <https://sharedresearch.jp/ja/6618> より、カスタム部品の主要取引先がファナック社であることがわかります。

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また同レポートによると、ファナック社が製造するサーボ・モーターの約50%に大泉製作所の製品が採用されているそうです。

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ファナック社の決算短信より、サーボモーターは同社のすべての商品に使用されているそうです。

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以上より、大泉製作所のカスタム部品売上高の大きい割合がファナックとの取引によるものであり、カスタム部品売上高はファナックの全体業績とある程度連動する可能性が高い、と仮定します。

大泉製作所とファナックの17.3期および18.3期業績数値は以下の通りです。ファナックの売上高に対する大泉製作所のカスタム部品売上高の比率は約0.15%となりました。

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上記より、大泉製作所のカスタム部品売上高 = ファナックの売上高 × 0.15%と概算します。

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試しに大泉製作所が公表している「空調・カスタム部品」の売上高に対して、上で試算したカスタム部品売上高の比率を計算すると、下表の(1)/(3)の通り21~25%の範囲に収まりました。このことから、上の試算はあながち大外れでもなさそうと考えられます。

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上の試算により、19.3期~21.3期のカスタム部品売上高が埋まりました。

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19.3期~21.3期の空調分野売上高を試算する

上の表で空白のセルを埋めます。既に埋めた情報を用いて、以下のように計算します。

空調 = 空調・カスタム - カスタム部品
エレメント・カスタム部品 = エレメント + カスタム部品

計算結果を表に記入すると、以下のようになります。

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埋めた数値の妥当性を確認

19.3期~21.3期の決算短信のコメントを確認して、数値変動の妥当性を確認します。

19.3期。空調のASEAN地域での好調について触れられる一方、カスタム部品への言及はありません。上で試算した19.3期の数値が、空調単体では前年比増加、カスタム部品単体では前年比減少となっていることと整合性がありそうです。

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20.3期。中国では空調・カスタム部品とも減少、日本では空調が減少、ASEANでは空調が増加、とのことです。上の試算で空調、カスタムともに減収となっていたことと整合性がありそうです。ASEANで空調が好調とはいえ、売上比率では日本・中国の方が大きいため、日本・中国の減収を補うには至らなかったと考えられます。

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21.3期。空調は通期で減収、カスタム部品は通期で増収とのことです。上の試算結果と整合性があります。

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以上により、下表をもって、空調分野、カスタム部品、エレメントの各事業の売上高試算の結論とします。

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またカスタム部品売上高は、おおよそファナックの連結売上高の0.15%となる仮定も、精度は低いなりに成立しそうだと考えています。

当記事で得た数値を、他の記事での考察に使用していきます。

当記事は以上です。お読みいただきありがとうございました。

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