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『Salaar: Part 1 – Ceasefire』

監督:Prashanth Neel
出演:Prabhas、Prithviraj Sukumaranなど
制作:Hombale Films
2023年12月22日に公開されたテルグ映画。

『バーフバリ』シリーズのプラバースと『K.G.F』シリーズのニール監督。
ともにメガヒット作品をもつ人気者2人による夢の共演。

年末年始はカシミールとラダックへ旅行に行っていたが、レー市内でもこの映画のポスターをよく見かけた。
南インドとは縁遠い最北の地でも大々的に興行されるほど、インド全土で注目されている作品だということだ。

以下、例のごとくネタバレ含みで感想を。

この映画の舞台は Khansaar という架空の都市国家。
映画内で示された地図によれば、カッチ地方(グジャラート州とパキスタンの国境辺り)の北部に存在するようだ。
西暦1,127年に悪党ぞろいの3部族によって建国されたこの都市は、植民地支配を図るイギリスに屈せず、第2次大戦後もインドに編入されることなく独立を保ってきた。
そんなKhansaarだが、1985年の先代の王の死去以降、各部族や各地の支配者層の間で権力争いが起こるようになる。
王座を狙う有力者たちが海外の傭兵軍を雇って武装する中、Khansaarの王子ヴァルダが味方につけたのは、幼いころからの大親友で腕っぷしの強いデヴァ(プラバース)のみだった。

……みたいな話だと思う。あまり自信はない。
登場人物が多く、人間関係が入り組んでおり、さらに部族名や役職名は聞きなれない単語ばかりで、このKhansaarという都市国家の仕組みが理解できなかったのだ。
私はインド映画を観る際、鑑賞前後にウィキペディアなどであらすじを確認するようにしている。
そうすると鑑賞中には分からなかった箇所も解像度が上がったりするものだが、この映画に関してはウィキペディアを見てもさっぱり意味が分からない。
例えば、以下にあらすじの一部を抜粋してみる。

ラージャ・マンナールはラーダ・ラマに、バーラヴァは実際にショウリャーンガ族の出身であり、1985年の族の虐殺を生き延びたわずかな人物の一人であることを明かした。一方、バーラヴァと生き残ったショウリャーンガ族の兵士たちは、部族の虐殺に対するラージャ・マンナールへの復讐を誓った。ルドラは叔父であるオムと手を組み、王座を求めた。バーラヴァの捕らえられた仲間であるデールは、デヴァが実際には1985年にショウリャーンガ族の首領であり、カーンサールの次期王であるはずだったデヴァラーサーの息子であることをラージャ・マンナールとラーダ・ラマに明かした。

Wikipediaより

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何回読んでも分からん。

ヴァルダ

『K.G.F』の時にも感じたが、ニール監督は「現実世界の延長にある架空世界における絶妙な現実味のなさ」を表現するのが上手いと思う。
本作『Salaar』の舞台は架空の都市国家だが、現実のインドと陸続きだし、時代背景も現代に設定されている。
ハリーポッターやロードオブザリングみたいなゴリゴリのファンタジー世界ではない。
だからこそ、現実的な描写と非現実的な設定のバランスが大切になる。
野暮な言い方をすると「つっこみどころ」ということになるのかもしれないが、随所に盛り込まれるリアリティのない演出や設定が鑑賞者をうまいこと作品世界に引き込んでいると思う。

デヴァ

なぜか女性しか住んでいない集落が出てくる。
彼女らは揃って臙脂色の頭巾をかぶり、ガウンのようなゆったりとしたワンピースを着ている。
そして、掘りつくされた炭鉱のような寒々しく荒廃した土地に、粗末な小屋を建てて暮らしている。
何だか前近代的でファンタジックな世界観だ(『K.G.F』の炭鉱で搾取される人々の暮らしに似ている)。

そこに、領主みたいな雰囲気の男と付き人たちの一行がやって来る。
領主然とした男が折り畳み椅子に座ると、その両脇に不思議な格好のおばさんが控える。
二人は典型的な南インドの中年女性のような体形(つまり太っている)で、これまた南インドらしいサリーを着ている。
ここまでは普通なのだが、調和を崩すように趣味の悪い大きなサングラスをかけ、ド派手な日傘を肩にかけている。
南インドに住んで2年が経つが、こんな格好のおばさんは見たことがない。
ド偏見になってしまうが、成金趣味の華僑が身に着けていそうなサングラスと日傘なのだ。
サリーもサングラスも日傘も、それぞれはありきたりな装備品でも、その組み合わせがミスマッチで妙なリアリティの欠如が感じられる。
「ありそうでない」というか、「なさそうである」というか、「現実世界の延長にある架空」の作り方がうまい。

Khansaarの王座奪取を目論む有力者たちは、それぞれ各国の傭兵軍を雇っている。
その各国というのは、セルビア、オーストリア、ウクライナ、アフガニスタン、ロシア、南スーダンという、謎に納得感のあるラインナップ。
そして、それぞれの格好や装備がものすごくそれっぽい。
私はセルビアの傭兵軍を見たことがない(セルビアという国自体もよく知らない)が、この映画に登場するセルビア私設軍を見ると、なぜか「セルビアっぽいな」と思う。

それら強力な軍隊に立ち向かうヴァルダの援軍(?)はデヴァ1人。
各国傭兵が戦車や銃などの近代的な軍備で固めているのに対して、デヴァは徒手や長刀で立ち向かう。そんな馬鹿な!

デヴァの母親
強すぎ

本作はPart1だけあって、状況説明のシーンが多かった。
本作の副題である ceasefire とは、休戦という意味。
作品後半でKhansaar国内の休戦協定を継続するかどうかの投票が行われ、ヴァルダが投じた最後の一票で休戦協定が破棄される。
まさに戦いの火蓋が切られた状態でPart1が終わりを迎えたわけで、Part2はもっとスピーディーな展開になると思う。

神話っぽい演出

思えば『K.G.F』もその傾向があった。
chapter2は3時間トレーラーを見ているのではないかと思うほど場面の切り替えが激しかったが、chapter1は比較的落ち着いた展開だった。
ところで、chapter3っていつできるの?
chapter2の終わり方がすごく美しかったから、個人的には無理に続編を作らなくても良いと思っているが、chapter2のエンディングでchapter3があることが明らかにされている以上、首を長くして待っている。

チケット予約サイトでニール監督のプロフィールを見たら、NTR Jrとのコラボが公開されていた。アツい。

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