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『Dunki』

監督:Rajkumar Hirani
出演:Shah Rukh Khan、Taapsee Pannu、Vikram Kochhar、Anil Grover、Vicky Kaushal、Boman Irani など
2023/12/21公開のヒンディー映画。

観たのは1か月前だけど、レビューを書き忘れていた。

『3 idiots(邦題:きっと、うまくいく)』や『PK』で有名なヒラニ監督と、King of Bollywood ことシャー・ルク・カーンのタッグ。
『3 idiots(邦題:きっと、うまくいく)』でも見られるように、ヒラニ監督は社会問題をコミカルに、それでいて高いメッセージ性を伴って描くことが特徴で、本作も「不法移民」をテーマにしながら、笑いあり涙ありの作品になっていた。

ざっくりあらすじ
時は1995年。パンジャブ州の片田舎に住む若者たちは、貧しい生活から抜け出そうとイギリスへの移住を夢見る。しかし、いろいろ試してもビザを入手することができない。そこで彼らは、英語の試験に合格して留学生ビザを取得するために、英語の勉強を始める。ところが、これもうまくいかない(一人は合格した)。最終手段として彼らは、陸路で違法入国を繰り返し、イギリスまで向かうことを決意した!

タイトルの『Dunki』という単語は、Donkey(ロバ)から派生した語で、「ロバのように長い距離を歩いて旅する不法移民」を意味するパンジャブ語のスラングらしい。

ベテラン有名監督とベテラン有名俳優が手を組んだ作品だけあって、安定感のある作品だった。
「度肝を抜く傑作」ではなく、「落ち着きのある名作」といった感じ。

この先、映画の直接的な感想ではない。

日本において、インドはどのような国、あるいはインド人はどのような人たちであると認知されているだろうか。
インドに移住して分かったのは、日本のメディアで報じられ、日本人が共有している「インド像」は、実態と微妙なズレがあるということだ。
例えば、ベタな話だが、インド人のほとんどはターバンを巻いていない。

ただ、日本で語られる「インド」はデリーをはじめとした北インドが主流で、私が住んでいるのは北と全く文化が異なる南インドであるという点は留意しなければならない。

『Dunki』では、留学生ビザを得るために英語の勉強をする場面があるが、我々日本人がもつステレオタイプな「インド人像」の一つに、「みんな英語が喋れる」というものがあると思う。
実際インドで生活していても、私が接するインド人のほとんどは英語が話せる。
じゃあ、「みんな英語が話せる」というのは本当なのだろうか。

「英語が話せる」がどの程度のレベルのものなのか、調査結果に信憑性があるかはさておき、以下のような報告を見つけた。

India leads as the country with a high number of people who can speak English at 265 million.

English Speaking Countries 2024 (worldpopulationreview.com)

インドで英語が話せる人は2.6億人。
つまり、全人口の20%弱だ。
反対に言うと、インド人の80%以上は英語が話せない。
これを多いとみるか、少ないとみるかは意見が分かれるところだと思う。

英語が話せる人は、社会的地位が高かったり、高い教育を受けていたりすることが多い。
先ほど、「私が接するインド人のほとんどは英語が話せる」と書いたが、これは言い換えると、私が接するインド人の多くが社会的にも経済的にも少なくとも平均以上の地位にある人だということになる。
私は彼らを通してインドという国を知っていくわけだが、以上のことを留意すると、彼らから知ったインドは、インドの一面に過ぎないということになる。

そもそも面積も人口も桁違いに大きいので多様性に富んでいるのは当然だが、インドという国は知れば知るほど分からなくなってくる。
だから私は、note記事でインドについて書く際は、事実だけを記したり、「~の傾向にある」や「~な気がする」といった断定しない表現を使ったりするようにしている。

私の知り合いに、「インド論」を語りがちな日本人がいる。
でも、彼の言っている内容が、普段の生活で実感することとズレていることが多くて、たまに問いただしてみるのだが、情報のソースが日本のバラエティ番組だったり、根拠のない主観だったりすることが多い。
意地悪な言い方だが、そういったインド論を聞くたびに、「ああ、この人はインドに住んでるのに、インドのことをほとんど知らないんだな」と思ってしまう。

私は日本に帰った後、インドでの経験を誰かに語ることはあると思うが、その際に安易な断定はしないつもりだ。
「あくまでも自分が見聞きしたインド」という断りを入れると思う。
でも、もしかしたら例の知り合いは日本でも、いつものインド論を語るかもしれない。
こうやってインド(に限った話ではないが)に対する誤解は広まり、定着していくんだなと思っている。

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