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『Varisu』 主演:Vijay

1/11に公開されたタミル映画、『Varisu』を観てきた。
主演は、タミル映画界の頂点に君臨する Vijay 。

街中もポスターだらけ

タイトルの『Varisu』はタミル語で「相続人」という意味らしい。
例のごとく、ネタバレも含めて映画の感想を雑多に書いていく。

↓予告編↓


あらすじ
財閥Rajendranグループの三男 Vijay(役名もVijay)は、家業を手伝う気がないとして父親から勘当される。その7年後、末期の癌におかされていることが判明し、余命宣告を受けた父親は、自分の息子たちから後継者を決めようとするが、長兄は女性関係で、次兄は金銭関係でトラブルを抱えていることが判明。結局、父親とVijayは和解し、Vijayが社長職を継ぐことになる。これに納得できない2人の兄がVijayの殺害を企てたり、ライバル企業と手を組んでVijayを陥れようとしたりする。しかし、Vijayがカリスマ性を存分に発揮して、最終的に2人の兄が改心してハッピーエンド。

映画館に行くと、大きなポスターや立て看板が飾ってあった。
盛り上がりは最高潮だ。

Vijayは今年で49歳。
が、童顔で若々しい見た目のため、全くアラフィフには見えない。
20代女優とのロマンスシーンもあったので、作中の役もせいぜい30後半くらいの設定だと思うが、特に違和感はない。

実際の映画にこのカットはなかった

この週末、タミル・ナドゥ州は「Pongal (ポンガル)」というタミル文化圏で最も重要な祝日を迎えている。
日本の正月やお盆のような感じだと思うが、家族団欒で過ごすのんびりした連休だ。
そのため『Varisu』の公開前には、監督だったかVijayだったかが「家族みんなで楽しく観られる作品です」的なことを言っていた。

実際に鑑賞してみてもその通りで、この映画の根底には家族愛があり、全体的にコミカルなシーンが多かった。
南インド映画にしては、暴力や流血のシーンも少なかった(なくはない)。
その分、華やかで陽気なダンスが特徴的で楽しかった。

「PONGAL WINNER」
Vijayと並ぶ人気俳優Ajith Kumarの主演映画が同日に公開されており、それを煽っているポスター。
「Pongalの勝者は俺だ!」


作中のVijayは男三兄弟の末っ子で、父親から勘当された後もインド全国をバイクで旅したり、若手起業家として注目を浴びたりといった飄々とした人物。
兄たちを相手にする時は、人を喰ったようなというか、すっとぼけたような話し方をする。
うまく例えられているかはわからないが、愛嬌のある古美門研介(『リーガル・ハイ』の堺雅人)みたいな感じだ。
この作品は、良い意味であざとい「みんなのアイドルVijay」を堪能する映画といって良い。




気になったシーンが2つある。
1つ目。
ライバル企業の味方と見せかけて、実はVijayのスポンサーだったという人物がいたのだが、彼が登場する場面で場内から歓声が上がった。
誰か有名な俳優がカメオ出演していたのだろうか。

2つ目。
Vijayが新社長に就任した直後、次兄が無理やり役員会議に出席している中、Vijayが軽妙なトークを展開して役員たちを懐柔していく。
ここはコミカルなシーンだったのだが、客席からは笑いと同時に歓声が起きていた。
また、Vijayの声に被せてセリフを叫ぶ観客もいて、どうもタミル人からすると「ああ、あのシーンね」という共通認識のようなものがあるらしかった。
おそらく、過去のVijay作品のオマージュか何かなのだと思う。

この2点に関して、帰宅後にいろいろ調べてみて真相が分かった。
謎のカメオ俳優は、6年前に『Mersal』という映画でVijayと共演していたS.J.Suryahという俳優。
役員を懐柔するところは、2年前に公開された『Master』という映画のワンシーンをオマージュしたものらしい。
やはり、いずれもVijayの過去作品と関連があった。

『Master』は現在日本でも一般公開されているらしいので、興味がある人はぜひ。




上の方にも書いたが、この映画は家族愛がテーマの作品だ。
インド人は家族の絆がかなり強く、成人後も「毎日家族と電話している」なんてことは珍しくないし、兄弟家族や祖父母と同居しているというのも一般的な話だ。
この映画では、2人の兄は互いに仲が悪いうえにそれぞれ厄介なトラブルを抱えており、末っ子は勘当されている。
そのような家族が崩壊しつつある状況でも、母親が自分の息子たちに変わらぬ愛を注ぐカットが随所に盛り込まれており、非常に慈愛に満ちた映画だった。

ぼくも今年の夏は日本に一時帰国しよう。
そう思える作品だった。

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