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謎が深まるおじさんの話 続編

前回、大反響だった(?)おじさんの話。

行きつけの屋台のおじさんが、失礼ながら屋台には不釣り合いな洗練された雰囲気で、しかもまさかの大卒という学歴を持つ人物で、一体何者なのか⁉︎という話だった。

あれから、ぼくらの関係にかなりの進展があったので、続編を書く。




まず、彼の前職は比較的稼げる仕事だったのではないかとぼくは予想していた。
今は夜間の屋台経営しかしていないにもかかわらず、まあまあ経済的に余裕のありそうな身なりをしていたからだ。

大卒であることを考えると、シンプルに大手の企業に勤めていたのかもしれない。
ただ、いつもラフな格好をしている彼が、スーツを着ているところは想像できない。
起業家とか、プログラマーとかは十分にありそうだ。
また、小柄な体型が多い南インド人にしては背が高く、顔立ちも整っているので、モデルや映画俳優をやっていたと言われても驚かない。

そんなある日、彼から面白い話を聞いた。
その日は、小学校高学年くらいの次女が店に遊びにきていた。
ぼくは彼に「お姉ちゃんは家で留守番しているの?」と聞いた。
すると、「彼女は今、プラグラミングの勉強をしている。ぼくの友達のプログラマーがプログラミング教室をやっていて、そこに通っているんだ」と答えた。

友達のプログラマー⁉︎

ということで、話の流れで前職を訪ねてみたら、IT関係の仕事をしていたということだった。
洗練された知的な雰囲気も納得である。




「今度良かったら、うちにおいでよ」
という話は、実はたびたび出ていた。
彼の家は屋台から近いところにあり、つまりはぼくのアパートからも近所にあるということだった。
何となく招待されてはいたが、いつ行くといった具体的な話にはならず、ぼくの方から「○日に行ってもいい?」と聞くのは図々しい気がして、話はなかなか進展していなかった。

ところが、月曜日。
「明日、暇かい?」と聞かれ、「午前中なら」と答えると、「じゃあ、うちにおいでよ。コーヒーを飲もう」とついに正式なオファーが来た。
いやらしい話だが、インドの中流階級の家に興味があった。
富裕層と漁師の家には行ったことがあったので、その中間の家にも行ってみたいと思っていたのだ。
経済的に余裕はあるが、裕福とまではいえない層の人たちはどのような家に住んでいるのか。

そして昨日、彼の家に行ってきた。
ぼくのアパートが面している通りの突き当たりに、彼の家はあった。
歩いて10分くらいの距離である。

古い民家だった。
2階建てで、その上に屋上があった。
部屋の作りは意外なことに、漁師の家と同じであった。
部屋数は漁師の家よりは多いものの、一つ一つの部屋の大きさは同じくらいだった。
その代わり前庭が広く、バナナやパパイヤ、グアバなどの木が鬱蒼と茂っていた。
車やバイクも停められていたが、全く窮屈さを感じないほどの広さだった。
蒸し暑い南インドでは、家の外にいた方が快適に過ごせる。
エアコンのない家庭では、部屋の広さはあまり重視されていないのかもしれない。

屋上にも連れて行ってもらったが、隣がちょうど空き地になっていて、オーシャンビューだった。
「屋上でバーベキューをやることもあるよ」とのこと。

1階の窓からも海が見えるようになっていて、海風が気持ちよかった。
昨日は学校が休みだったようで、下の娘がベランダに腰掛けて、海風を浴びながら勉強をしていた。
高校生くらいの上の娘にも初めて会ったが、両親に似て、整った顔立ちをしていた。

彼の家には動物がたくさんいた。
犬、うさぎ、小鳥、ハト。
よく吠える犬だったが、常に尻尾をブルンブルン振っていて、人懐こかった。

帰り際、とれたてのパパイヤとグアバをお土産でもらった。

パパイヤは食べ頃だというので、その日の夜に食べたが、まだ少し固かった。
ただ、味は特に青臭くはなかったので、そういう品種なのかもしれない。
普段、果物をほとんど食べないので、よく分からない。
グアバは、あと数日待つ必要がありらしい。



来週あたりから1ヶ月ほど、彼は実家のある村に帰って、カシューナッツ農園の収穫の手伝いをするらしい。
「村においでよ。村の家は大きいから、泊まっていけるよ」と声をかけてもらっているが、あいにくまとまった休みが取れないので、行けそうにない。
今月でなくても、何かの機会に行ってみたいと思う。

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