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『Leo』

2023年10月19日公開。

主演は、タミル映画界の圧倒的スター Vijay
監督は、『Master』や『Vikram』の成功で飛ぶ鳥落とす勢いの Lokesh
音楽は、最近の有名タミル映画には全部楽曲提供している若手 Anirudh
そして、ヴィランにはベテラン人気俳優の Sanjay DuttArjun を据えるという豪華キャスティング。

というわけで、公開前から大きな話題を呼んでいた『Leo』を見てきたので、雑多に感想を書きます。

適当に石を投げても当たるほど、チェンナイの街中には『Leo』のポスターが貼られている。
当然チケットの争奪戦も激しく、公開当日のチケットは即行で売り切れていた。

以下、ネタバレ含みでざっくりとしたあらすじを。
と言っても、字幕なしで細かいストーリーは分からなかったので、ウィキペディアのPlotを要約する。

あらすじ
インド北部の山岳地帯でカフェの経営と野生動物保護をしているパルティ(Vijay)は、家族4人で平和に慎ましく生活している。ある時、彼のカフェに凶悪な強盗が押し寄せ、乱闘の末にパルティは彼ら全員を殺してしまう。裁判の結果、正当防衛が認められて無罪放免となるが、彼の顔写真とともにこの事件が全国で報道されると、物語は思わぬ方向へと動き出す。
麻薬の密売を行う悪名高いギャングのアントニーが、パルティは自分の息子のレオではないか、と言い出したのだ。かつてレオは、アントニーの息子として汚れ仕事をしていたが、肉親内での激しい争いの末に銃で撃たれて死んだと思われていた。しかし、どうやら彼はまだ生きていたらしい、というわけである。
で、そこからなんやかんやいろいろあって、パルティとギャング集団が戦いを繰り広げ、最終的にパルティが勝利する。

さて、「果たしてパルティとレオは同一人物なのか」というのが気になるところだが、これは良く分からない。
このあたりは肝心なところでセリフが多い上に、残念ながら字幕がなかったのでさっぱり意味不明だったのだ。
ただ、ネット上でレビューやあらすじを見る限り、物語内でもそこは明らかになってはいないらしい。
おそらく2人は同一人物なのだが、謎を残したまま物語は終わっており、その「曖昧さ」こそがこの映画の肝なのだろう。

去年公開された『Vikram』を見た時も感じたが、Lokesh作品はかなりおしゃれだと思う。
映像のカットやカメラワーク、小道具などが洗練されているように感じる。
今回は冬のシムラ(インド北部の避暑地)が舞台になっていることもあって、何となくヨーロッパや北米のスキーリゾートのような雰囲気がある(行ったことないけど)。あるいは長野の白馬とか北海道のニセコみたいな。
劇中歌も洋楽っぽいし。Lokesh作品とAnirudh音楽の相性ってすごく良いと思う。

そして、主人公のバックグラウンドに謎や含みを持たせるような演出やストーリー展開も、そういった「洒脱さ」に含まれているような気がする。
個人の内面的な葛藤が強く押し出されていて、シンプルな二元論になっておらず、視聴者に判断をゆだねるような結末になっているのだ。

その対極に、先月公開されたSRK主演の『Jawan』があると思う。
あの映画はヒンディー語映画だが、監督のAtleeがタミル人ということで、かなり「南っぽい」映画だった。
つまり、社会問題をストレートに描き、かなり荒っぽい方法でそれを是正していくという展開。

『Leo』は、前評判ほど評論家からの評価は高くないらしい。
期待値が高すぎたというのもあると思う。
でも、何となくこの作品に賛否が分かれるのも理解できる気がする。
メッセージ性を力強く前面に押し出した作品が好まれる傾向にある南インド映画において、主人公の人物像に対する解釈を聴衆に委ねた『Leo』は、俗っぽく言うと一般的に「ウケる」作品ではないのだろう。

このことは何となく、今の日本のエンタメ作品に対する潮流の反対であると言えると思う。
最近の日本では小説にしろ、漫画にしろ、「伏線の回収」や「考察」があまりにも持てはやされすぎているように見受けられる。
その結果、「シンプルであることの良さ」が軽視されているような気がする。

『Leo』は、パルティ(Vijay)の言動の端々に「含み」を感じさせる作品だった。
それゆえに、考察好きな現代の日本人にハマる作品になっていると思う。
だから、いち早く日本語字幕を作成して、日本で全国公開してほしい。
パルティが何を言っていたのかちゃんと知りたくて、夜も眠れない日々が続いているのだ。

ところでLokesh監督といえば、LCU(Lokesh Cinematic Universe)で知られている。
『Leo』はユニバース作品の3作目ということで、それもこの映画が注目を集めていた理由の一つだった。

ギャングから身を守るために Vijay が雇ったボディガードが『Kaithi』(2019)で活躍した警察官だったり、物語の最後に『Vikram』(2022)主演の Kamal Haasan から謎の電話がかかってきたり、といった仕掛けが込められていて、劇場内は大盛り上がりだった。
最後の電話は、 Vijay と Kamal Haasan が次作品で共演する可能性が示唆されているようで、エンタメの作り方が上手いなぁと感じた。

ちなみに『Vikram』の最終盤では、「次の主役はこいつだ!」みたいな感じで Suriya が登場していた。
また、Lokesh監督は次は Rajinikanth と手を組むといった公式発表もあった。
Rajinikanth主演作がLCUの一環であれば、 Vijay や Kamal Haasan などの友情出演もあり得るわけで、期待感しかない。
一体、次に公開される映画はどのようなものになるのだろうか。

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