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大江英樹さんの本から学んだこと

経済コラムニストの大江英樹さんが1月1日に亡くなられたと知り、驚きました。闘病されていることを、日経新聞の連載で告げられてました。
僕は、大江さんの著作、「老後不安がなくなる定年男子の流儀」を7年前、51歳の時に読み、「ああ、その手があったんだ」と勇気付けられ、今、60歳の定年を前に起業の準備をしています。この本で学んだことについて大江さんを偲んで、書こう思います。

この本は、定年後に起業することの可能性について様々な視点で解説し、リスクがそれほどない割に得られることが多いことを訴えています。大江さんの人柄が反映しているのだと思いますが、重い課題に対する前向きな語り口は読者を魅了します。
この本の中で、僕が一番気に入ってる章は、大江さんが定年の後、何かを探し求めるためにクロアチアに旅したことを記した章です。

果たして、私たちサラリーマンに「自由」があったでしょうか?
サラリーマンは、自分のやりたいことをやれる「自由」を犠牲にして会社のために働く代わりに、生活の安定を得ていました。これは、決して悪いことではありません。
でも、それは、「定年」というイベントによって60歳で終わりを告げたのです。
ここでまた、目の前がパァーっと開けたような気がしました。
「そうか、サラリーマンは定年によって「真の自由」を得ることができる。そして、その自由は決して誰にも渡してはならない。だとすれば、私は会社を定年で辞めた後に、さらに会社に自由を売り渡すような再雇用で働き続けるべきではない。本当に自由な働き方ができるようになったのだから、それを大切にしよう」

同上

この本を読んだ時、僕は51歳です。その頃、新規事業開発に七転八倒していた頃です。会社から大きく投資してもらったプロジェクトが思うように利益を上げることができず、ある種、罪悪感のような感情を胸に抱えながら仕事をしていました。転職の誘いが多くあったので、会社を去る選択もありましたが、どうしても「会社への借り」を返したかった。そんな時にこの本を読んで、「その手がある!」と思い、気分が一気に明るくなりました。

「願わくば、定年まで、新規事業に関わり続け、自分が会社に借りを返したと思えるくらいまでがんばろう。そして60歳になったら、起業して、今度はそのエネルギーを自分のために使って生きていこう」

そう決めて、過ごしてきました。そして今、58歳。今度の5月で59歳になります。幸運にも新規事業開発の仕事を続けることができました。日々新しいことを学び、世界中の人と出会い、仕事にしていきます。大江さんの本のおかげで、針路がはっきりして、迷うことなく目の前の仕事に集中できたからです。この本に感謝しています。

大江さんは、本の中でこう告白しています。

"ただ、実を言えば定年退職する半年ぐらい前に、「思い切って独立してみようかな」とも思ったのです。ところが、具体的には何をやっていいのかわからない。
「そう言ってもなあ」「自分にできることなんてあるんだろうか?」「世の中それほど甘くないよなあ・・・」と、次から次へとネガティブな考えが出てきます。
当時の私もやはり、本書で度々登場する「バットマン」だったのです(笑)。
そんな気持ちのなかで、明確なキャリアプランを考えることもなく再雇用で働いていたのです。

同上

大江さんが、定年後も再雇用で働き続けて、独立することなく過ごしていたらどんな人生を過ごされていたでしょう。そう考えると、限られた人生を充実させることの意味を痛切に感じました。

大江英樹さんのご冥福をお祈りします。


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