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流氷の旅 2日目

自分の家だと寝起きが悪くて二度寝してしまうのが日常だけれど、外ではパッチリ目が覚める。下に降りると、新聞を読むおじいちゃんと、朝ごはんを準備するおばあちゃんがいた。宿のおばあちゃんが入れてくれたコーヒーと昨日買ったセブンのパンを頬張りながら今日の予定を考える。午後は網走監獄へ絶対に行きたいと思っていたから、午前中はおばあちゃんにおすすめされた能取岬に行くことにした。

外に出てみると真っ白な平原が広がっていて驚いた。夜は真っ暗で何も見えなかったからなおさらだ。キラキラした雪と真っ青な空で朝からすっきり目が覚める。いい一日になりそうだと思った。

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坂を下りて海を見渡すと、水平線上にはっきりと白い線が見える。どうやらさらに流氷が近づいてきたらしい。早くもいい一日になりそうな予感は当たったみたいだ。

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岬までは道の駅から車で20分ほど。岬だけのためにレンタカーを借りるのもなあと思いタクシーに乗ることにした。一人で知らないタクシーに乗るのはこの時が初めてだったから往復で5000円くらいかなと気楽に思っていた。知らないって恐ろしい。

道端で手を挙げてタクシーを拾ってみる。1つ目のタクシーは驚いた顔をしながらごめんねのポーズをして通り過ぎていった。手を挙げるのが遅かったみたいだ。反省を生かして次は早めに手を挙げてタクシーを待つ。次は止まってくれた。自分でタクシーを止めて乗るのもはじめてだった。

運転手さんは、自分と同じくらいの若いお兄さんだった。今年からタクシー運転手になったらしい。あまり話すことができなかったけれど、小さなラジオが鳴る静かな空間が心地よかった。

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タクシーを降りると思わず大きな声が出た。

岬一面に流氷が流れ着き見たこともない景色が広がっていた。どうにか、この感動を言葉にできないか考えたけれど今の僕にはなんていえばいいのかわからない。でも初めての一人旅でこんな景色を見れたことを一生忘れることはないと思った。

必死で撮った写真はあの気持ちを少しよみがえらせてくれる気がした。

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自分ひとり占め状態の岬にはもう一人カメラを構えた年配の男の人がいた。黙々と写真を撮っている。横を通り過ぎるときに「お兄さん絶景だねー」と興奮気味に話しかけられる。

僕も興奮気味に絶景ですねと返す。そこから昨日のフェーリーで見た景色とは比べられないほどきれいだねと話したり、写真を撮ってもらったり、この景色を二人占めした。あの景色を僕のあの人しか知らないというのは少しもったいない気がするけれど、あの景色の興奮を語り合った人がもう一人いる。それだけで素敵な思い出になった。

タクシーに戻りこの興奮を運転手さんに伝える。運転手さんはいたって冷静だった。長くこの地に住めばこの興奮も薄れていってしまうのかもしれない。少し寂しく感じた。止まって待ってもらっている間にタクシーのメーターが上がることも知らなかった。

無事に道の駅に届けてもらい料金を払う。

9500円で目が飛び出かけたけど、あれだけの景色を見ることができたという満足感が、その料金で納得させてくれた。タクシーってこわい。

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岸から見える流氷に誘われて気が付けばもう一度流氷船に乗っていた。昨日見たはずの流氷だったけれど、昨日に増してその密度は濃く、真っ青な青空がその白さを際立たせていた。

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昼からは北方民族博物館、網走監獄へ向かった。

昨晩宿のおじいさんから聞いていた予備知識も相まって、開拓の歴史とともにある監獄、その地に根付く文化が一層面白く素敵に思えた。自分が生まれる前にそして今現在も遠くの場所で、自分とは全く違う人が生きていた、生きているのだと思った。全部を見て回るには時間が足りなかった。もっともっと見たかった。

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バスに乗って再び道の駅にもどる。

夕焼けで海が、空が、不思議な色をしていた。

何度も見た帽子岩の景色が目に焼き付く。オーロラみたいなグラデーションの空で一日の終わりを感じた。

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晩御飯は宿のおばあさんに勧められた、おすすめのお寿司屋さんへ行くことにした。途中で大きなゲームセンターを見つけた。入ってみると、意外とたくさんの人がいた。お年寄りの人がメダルゲームをしている。地元のゲームコーナーでよく見た状況だ。どの町でもメダルゲームで時間をつぶすのは共通なのかもしれない。

他にもマクドナルドや、ユニクロ、大きなショッピングセンターも近くにはあり、たくさんの家が立ち並ぶ住宅街もあった。こんなに北の寒い街も地方の幹線道路沿いのような風景が見られることにとても驚いた。

勧められたお寿司屋さんに着く。回転ずしの設備はあるけれどレーンは回っていなかった。一人暮らしで行ってもスシローとかしか行かない自分は、メニューを見て帰ろうかと思うくらいいい値段のするお寿司だった。

せっかく来たのだから食べて帰らないわけにはいかない。精一杯の強がりで、サーモン、イクラ、ホタテ、など思いつく限りのおいしそうなネタを注文した。8皿くらい食べて4000円だった。おいしかったけれど、お財布の心配をしながら食べるお寿司はもうこりごりだ。おいしかったけどね。

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またバスに乗って宿まで30分の道のりを歩く。夜道はやっぱり心細かったけれど、宿にあの二人が待っていると思うと心なしか早歩きで帰った。

今日の宿は昨日とは打って変わって、たくさんの宿泊客であふれていた。卒業旅行で北海道一周をしている5人組の大学生と、僕と同じく流氷を見に来た大学1年生4人組。

昨日おすすめされた流氷ビールを飲みながらみんなで話していたらすっかり夜が更けていて、気が付いたら眠っていた。


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