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アウトブレーク最中のアメリカから学ぶ日本のビジネスがCOVID-19に備えるべきこと

こんばんは、今アメリカ・アトランタは深夜1時。州全体のロックダウンには至らないものの、ジョージア州単体で感染者数は2,000を超え、死者も65人に及びます。4日前から市内には自宅待機指示が出ています。

調べども調べども毎度これでもかと悪い情報が更新される毎日に、中々心が折れそうな、しかしやれることは自宅待機一点のみ。そんな日々を過ごしています。

ところで私、2月中旬まで都内の広告代理店でマーケティング戦略やクリエイティブ戦略などを担当しており、とにかくこちらのニュースでも気になるのは企業のCOVID-19にまつわるメッセージ・行動・コミュニケーションだったりします。

日本も本当にどうにか持ちこたえて欲しい、そう願いつつ、もし3/28現在のアメリカのようなパンデミックが起こった場合を想定し、企業もあらゆる事に備えるべきです。それは単に慈善的な活動をすればイメージアップするとか、損失を防げるとか、そんな小さい話ではありません。とにかく、企業も含めた社会全体が全力で備え挑まなければ、人の命と一緒に経済が死にます。これはそういうウイルスなのだということを、失業保険の申請数や失業率が世界恐慌を上回る可能性があると報道されるアメリカで、身の回りの治安の悪化とセットでひしひしと感じています。回せるビジネスをどうにか回しながら、一方で顧客や従業員の公衆衛生を徹底的に守るといった態度と戦略が求められます。ここではCOVID-19に対してアメリカの企業がどのようなアクションをしているかを書きます。良い情報発信に繋がっていると感じる企業コミュニケーションや施策については、随時追加を加える予定です。当然私の観測範囲ですので限りがありますが、誰かの役に立つ事を祈ります。

① 圧倒的に不足している医療用品の生産やリソース提供による貢献

既にSHARPのマスク生産などが話題になっていますが、アメリカではN95マスクの圧倒的な不足を受け、あらゆる高級ブティックが生産に名乗りを上げている他、人工呼吸器の生産に自動車メーカー各社などが政府から打診を受けて手を挙げるなどの動きがあります。フランスではLVMHが香水の生産ラインをアルコール生産に切り替え話題となりました。

フォードが3MやGM Healthcareと連携しマスクや人工呼吸器の生産に貢献する事を発表

ニューヨークの高級ブティック各社がマスク生産に貢献。

アメリカの感染者数のピークは4月中旬ごろとの試算もある中、今既に足りないものをとにかく急ピッチで仕上げる事を要求されているのが、アメリカの今です。日本でもアウトブレークが起こった場合に医療リソースが足りない事が指摘されています。ニューヨークの市民総合病院の医師が日々人工呼吸器の追加を政府に要請し、それでも全く間に合っていない様子の動画を公開したり、看護師の防護服が足りずにゴミ袋での代用が迫られている中、看護師長が感染して死に至るような悲劇が発生しています。

足りていない人工呼吸器

ゴミ袋で防護服を代用していた看護師長の悲劇


持っている技術や生産ラインが活用が可能か?もしもにそなえて、確認を取ることは今からでも可能な一手であり、その一手が多くの命と経済を救うかもしれません。これらは生産リソースの有無だけでなく、現場での必要数を見積もり配給するといった医療機関と政府との調整が必要なものになります。もしもの時に備えそのようルートが社内にあるでしょうか。社員が自宅待機を迫られた後でそれらのルート発掘や調整を行うのは至難の技のはずです。一方でそこに貢献した様子は大きくメディアに取り上げられます。その企業への勇姿と貢献を、社会が忘れる事はないでしょう。


(3/30 22:02追記)----------------

英国事例ですが、ダイソン社が人工呼吸器を一から開発。英国首相ボリス・ジョンソン氏から直接依頼されたとのことです。

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(3/28 15:11追記)

生産だけでなく、医療の人的リソースの足りない場所へ他から移動するという手立ても重要になります。特に人工呼吸器については技術のある人しか扱えないため、機械があれば良いものでもありません。例えばデルタ航空は医療ボランティアスタッフへのジョージア州・ルイジアナ州・ミシガン州への無料の航空券提供を開始しました。

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(3/30 12:20追記)---------------

医師で厚労省の感染症対策にも関わる沖縄県立中部病院の高山先生のFacebook投稿で、人工呼吸器の日本の状況についてのものがありました。日本は機械そのものの数には余裕があるようですが、人的リソースの輸送などは企業がサポートしやすい部分かもしれません。

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(4/2 16:41 追記)---------------

さらに高山先生の記事が追加されていました。日本で足りなくなると想定されるのは、人工呼吸器ではなく体外模型人工肺(ECMO)とのことです。

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② 何よりもサービス形態の見直し

ここまで、小売り流通に注目が集まることがあっただろうか。外出制限やロックダウンが始まると、多くのビジネスが自宅勤務か休業を余儀なくされる中で、生活に必要な食品や日用品を取り揃えるスーパーなどの小売り流通は営業可能なもののひとつ。しかし従業員と顧客同士、パニックバイイングに走る顧客同士の距離や安全をどう保つかというその手法や、経営者のメッセージに多くの注目が集まっています。


人混みに行くと罹患リスクの高い高齢者や妊婦・基礎疾患を抱えた弱者に物を行き渡らせるためにどうするべきか、従業員の安全はどう守るべきか、長期戦に備えた戦略が必要です。また戦略だけで無く、それらをどう地域やお客様にお知らせをするのか、営業時間や配達サービス内容・従業員側の対応の内容、店の前での検疫方法(検温や顧客の手などのアルコール消毒)やパニックバイイングに対してのメッセージの発信方法を事前に準備しておくべきです。

さらに飲食店はテイクアウト体制が取れないと自粛要請やロックダウン下では営業が不可能となるため、どのような方法をとればテイクアウトサービスの継続が可能か、はたまた休業をするのか、配達サービスの提携やユーザーへの周知の方法を含めて再検討しても良いでしょう。

今だからこそ、デリバリーを訴求するWendy's


(2020/3/28 21:00Papa John's John's Pizza事例追加)---------------

現在手渡しをせずに商品をデリバリーする「No Contact Delivery」をCMで訴求しているピザチェーンのPapa John's Pizza

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さらに営業が出来ずに困っているのがジム。オンラインでの講習に切り替えたり、事務の設備を有料で自宅用に貸し出すなどの対応が出てきているようです。

※家での運動機会の提供を始めたフィットネスサービスの記事

また既にオンラインショッピングが整っているアパレルなどにおいても、出荷作業などの従業員の健康を守ることを目的に完全にサービスを止めているパターンもあります。例えばイギリス発祥のアパレルブランドnextは昨日から今日現在まで完全にサイトを閉じてしまっています。(登録会員にも知らされずに突然閉じたのでユーザーは大変困っている様子です)このような経営判断をどのタイミングで行うのか、今から社内で検討し、顧客への周知のステップも含めて検討の余地があるでしょう。

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完全に閉じたnext。企業サイトにも会員ページにもアクセスできない状況。

③ パンデミック中の広告コミュニケーション

この1週間、放映されているCMの業種に明らかな変化がありました。特に多く目にするのは、保険・通信・インテリア関連・オンライン動画配信サービスなどです。それぞれ、自宅待機やロックダウンの需要に応えたもの、こんな時だからこそ理解してもらいやすいサービスの価値を謳っています。保険会社のニーズは言わずもがなですが、インテリアは自宅勤務や待機指示に備えたもので仕事用の椅子やこんな時だから見直したいリフォーム需要を狙っているのかもしれません。通信はこのビジネスができない中でもビジネスをし続けて良いとされる業種のひとつで、AT&Tがいつでも繋がる大切さを謳ったクリエイティブを公開しています。


またWEBのコミュニケーションにおいても医療従事者への拍手を送る動画を公開したり、6フィート以上他人と距離を取って交流を控えるソーシャル・ディスタンシングの精神を啓蒙・体現するため、ロゴに変更を加えて発信するなどの動きもあります。

医療従事者の貢献を讃える動画を公開したバドワイザー


コカコーラのSocial Distancingロゴ

また有名なものにマクドナルドが同様のSocial distancingを体現したロゴを公開していますが、テイクアウト以外のレストランの営業が禁じられる中、マクドナルドは数少ない営業中のチェーン。そんな事より従業員の健康を守ってくれという声も上がり、広告コミュニケーションの質そのものよりも何より、事業活動においてCOVID-19にどのように向き合っているかが厳しく見られています。

(4/5 13:46追記)----------------

刑罰付きの自宅待機令を各州が発表する中、生活に不可欠な産業として営業が許可され稼働しているWalmartが放映しているCM。従業員が歌いあげる名曲Lean On Me、困難な中に励まそうとする人々の写真。私たちはお互い助け合っている、というシンプルなメッセージが、長引く自宅待機で疲弊する社会に、ただただ響きます。営業を続ける限り、従業員も命懸けの仕事です。流通スーパーがいかに人の生活と命を支えているか、瞬時に伝わるタイミングでの放映、もしかしたらインナーコミュニケーションとして従業員を鼓舞するようなそんな意図もあるかもしれません。

歌詞訳

私たちの人生は時たま
痛みや 悲しみがある
私たちに賢さがあれば
明日が必ず来るとわかるはず
あなたが強くない時は私を頼って
私が友になろう 助けになろう
頼りになれる人になるのに時間はかからない
私たちみんなが必ず頼りになる人になろう

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一生懸命書いていてアレですけど、一番は、こんな情報が役に立たないこと。

どうか愛すべき日本のビジネスと皆様が健康に乗り切れるよう、本当に祈っています。

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