Webコミック『胎界主』がお前を前人未到の荒野へみちびく

 よくきたな。おれはロジオン・ロマーヌイチ・ゴンブローヴィッチだ。おれはまずお前にこう言わねばならない、やったな。なぜならお前はこの記事を読み、その後http://www.taikaisyu.com/で胎界主を読む。するとどうだ、PCの前でノミ同然に丸まったお前の背中はシュワルツェネガーさながらに天を突き、目にはアントニオ・バンデラスのような危険な光が宿るだろう。言わば胎界主はお前を真の男にするためのPassport・・・見渡せばそこはもうメキシコだ。

・バンデラスが荒野でお前を待っている

 現代はWebコミック最盛期だ。様々な出版社がWeb向けのコミックマガジンを発行し、有名無名問わず多くの作家がWebコミックを書いている。そこには作家と読者の両方にとって行き届いたサービスがある。これは言うなればバックパッカやダンジョン帰りの冒険者向けに整備され、平穏を約束してくれるメガロシティでの暮らしに等しい。

 しかし、お前はそうした町が形成される以前の環境について考えたことがあるだろうか? そこにあるのは広大無辺のFRONTIA・・・オークやじゅうが群れを成し、タルサ・ドゥームの軍勢が村を焼いて回る無法地帯でしかなかった。かつておれやお前のビッグ・ブラザーたちは金銭的な見返りには目もくれず、自分の信じる価値だけを元手にそうした荒野を開拓したのだ。今日街の中心部にある記念碑を見れば、お前はそこにWebコミック界の黎明期を支えた作品の一つとして、胎界主の名前が刻まれているのを見出すだろう。

 ホットドッグ片手に通りを歩いていたお前は、ふと記念碑の前で足を止め、そこにある名前を見て首を傾げた。「たいかい・・・ぬし? どういう意味だろう?」それはちょうど今おれが言って聞かせた通りの意味だ。胎界主(たいかいしゅ)とは無人の荒野を行く屈強なせんしたちに与えられた呼び名であり、メキシコの地で命のやり取りをするバンデラスやトレホのような男の中の男のことを指す言葉だ。

「いきなりおかしな造語を出されてもわからない」お前はそう言って記念碑に背を向けるというのか? そんなことだからお前の周りは見慣れたものばかりで刺激がなく、また既存の権威や価値観に従う以外に取りうるアクションもない。お前は人の顔色を窺ってばかりだが、他人の気持ちがわかったためしはない。お前が侍らせているベイブの目はどこか虚ろで、マティーニのグラスには砂が浮いているのが見える。曲がり角で陰気な老人が手招きをしているのが見えないのか? お前を虚飾と退廃のただ中に誘っている。もはや逃れる道はひとつだ。お前自身が胎界主になり、自らに信を置いて荒野へと踏み出すこと・・・ここまで読めば、始めにおれが「やったな」と言ったのが、決してお前をぬか喜びさせるブラフやでまかせでないことがおわかりいただけただろう。

▲荒野を行く男たちのイメージ

・お前はあらすじを注意深く読まねばならない

 胎界主になるためにはどうすればいいか。それにはまずこれからおれの書くあらすじをよく読むことだ。何? 「全編無料公開されているWebコミックなのだから、ガイドラインよりもまず本編に触れたい」? これでお前はまた軽率な口を一つ聞いたわけだ。言っておくが、お前は胎界主の複雑なシナリオ極限まで詰め込まれた描写を一度読んだだけですべて理解できると思わないほうが良い。何の事前情報もなしで胎界主を読み始めるのは、銃も持たずにメキシコの街角をうろつく行為にも等しい。そんなことをすればお前は物陰にたたずむトレホのナイフの一撃によってなす術もなく死ぬ。みすみす可能性の芽を摘むような真似はよすことだ。

▲死んだお前のイメージ

 まず伝えておきたいのは、物語の舞台が鮒界市という日本の小メキシコであることだ。メキシコなのでギャングが暗躍しているのは当然だが、鮒界市では久松組と渾菜組(ヤクザ連合)という二つのヤクザが小競り合いを演じている。もっとも、ヤクザの抗争はごく初期のうちにしか取り上げられない。より重要なトピックが久松組のバックにいる東郷家で、この男たちは薩摩藩の生き残りでありながら、今やアジア全土を実質的に支配している。言わばヤクザの帝国・・・・ニンジャの跋扈するマッポーの世界なのだ。

 新出の勢力である東郷家に対して、当然黙っていないのが既存の国家だ。胎界主の世界では、アジア以外のあらゆる地域をソロモン72柱を始めとする神話の悪魔たちが支配している。連中は直接表舞台に姿を現すことこそないものの、脳なしの金持ちどもを裏で操っているのだ。またそれだけ強大な勢力を持っておきながら、悪魔は人間の持つ創造性を欠いている。なので意味もなく派閥に分かれて足の引っ張り合いをしたり、おれやお前のような胎界主にオッファーをかけてなんとか自軍に引き込もうとしている。これはつまり、奴らが話をややこしくするだけのあほな烏合の衆に過ぎないということだ。

▲悪魔は強力だが胎界主となったお前の敵ではない

 勢力としては他に、ある程度が進んでから出てくるカルティスト率いるゾンビ軍団がいるが割愛する。そんな先の展開について話したところでおそらくお前は序盤のどこかしらで今何の話をしているのかよく分からなくなり、同じエピソードを何度か読み返す羽目になるだろう。ここでは胎界主の世界観がダークファンタジー的であり、登場人物にはそこで生き抜くだけのタフさが求められていることを理解してもらえれば十分だ。荒野にG・P・Sはない。だからおれは今ここで地図を描き、せめてお前に持たせてやるつもりだ・・・。

・お前は「使い魔」を突破しなければならない

 お前にまず立ちはだかる障害・・・言っておくが、それは第1話「使い魔」だ。おれが独自に調べたところでは、この第1わで脱落する人間が割合で言ってもだいぶ居ることがわかっている。だが第1話を完全に読みこなしたところで、後の話ではもう新たな設定が出てこないということは全くない。であればたとえお前が話に着いて行けなかったとしても、ここではサイケデリックな絵の雰囲気や、いかがわしい黒魔術の描写を楽しむことだ

 冒頭は物語の主人公である凡蔵稀男(ぼんくら まれお)がBARに入店するシーンだ。お前もまた、胎界主というBARに入店するつもりで読めばいい。初めて来た店で常連客の顔ぶれを知っている必要は全くない。お前はただカウンターに座って酒を求め、慣れない旅先の空気感を味わう・・・・そうすればそのうちピンとくる瞬間もあるだろう。おれはまずベリト召喚のグロテスクな絵面にとてもよくバイブスした覚えがある・・・。

 お前が内容を理解できていないまでも「使い魔」を一通り読んだというのであれば、おれは先へ進むにあたって頭に留めておくべき点を一度ここでまとめておくこともやぶさかではない。

・悪魔は稀男を狙って鮒界市へ来る
・悪魔や動物と違って人間だけがたましいを持っている
・たましいを持つ者は胎界主になり得る
・稀男は外見こそ妖魔そのものだが、その実人間と妖魔のハーフであり胎界主でもある

お前が覚えておくべきなのはこれだけだ。腕にでも彫っておくといい。なお序盤はどれも1話完結の短編集風の構成になっており、稀男の元に妖魔退治の依頼が持ち込まれる展開が続く。エピソードのフォーマットを掴んでおけば、お前はそこにグルーヴを見出すこともできるはずだ。

・相棒がお前を荒野へ運ぶだろう

 胎界主は本質的には男の中の男たちの物語だ。おれはお前の旅を後押しすべく舞台設定やフォーマットーについて語って聞かせたが、それよりも重要なのがお前が行く先々で出会う無頼の男たちの方だ。早い話がお前が無数のキャラクターの中から誰か一人でもリスペクトや共感を抱くことのできる人物を探し出し、そいつの後に着いていく決意を固めさえすれば、世界観や設定については一切把握しておらずとも構わない。それにはこの名前をよく胸に刻んでおくことだ。すなわち、バンデラス。トレホ。マスラダ・カイ。シュワルツェネガー・・・・中でも凡蔵稀男は、お前を荒野の懐へ運ぶ良き相棒となるはずだ。あとそういうキャラが死んでもあまりくよくよするな。タフになれ。

 おれはこのコミックによって人生の方位を定め、果てしない旅路に確信を持って歩き出すことができた。お前もそろそろ上司や先輩の前でペコペコ頭を下げる腰抜けの日々を脱し、自分の道を自分で決めるときだ。であればこれからおれたちは別々の道を行く。運が良ければメキシコのどこかの空の下で、そうでなければ地獄でまた会おう。「胎界主」、それは前人未到の荒野を行く男たちの、ただ一つのバイブル・・・・。

W.R.G

ワシーリイ・ロマーヌイチ・ゴンブローヴィチ先生プロフィール:
エグゼクティブネットサーファー。逆噴射総一郎先生を一方的にリスペクトしているが、実在の人物・団体とは一切関係がありません。

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