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プロダクトデザイナー 大城健作氏 講演会「Intuition(直感)」にて

先日、ミラノと東京を中心にご活躍されている沖縄出身のプロダクトデザイナー「大城健作」さんの講演会に行きました。
今回の講演会は沖縄の建築家協会の方々が企画したもので、建築関係の方が多くみられました。

講演会のタイトルは「Intuition(直感)」です。
普段は家具の世界にあまり関わりがなかったので、どんなお話が聞けるのだろうかと楽しみでした。

講演会は、大城さんに加えて、インテリア&ライフスタイル誌「ELLE DECOR」編集長の濱口重乃さんのお二人が会話をしながら進めていくというものでした。
実は、このお二人は結構長いお付き合いのようで、思い出話もいくつか聞けました。

大城さんは、ヨーロッパの有名なブランドとのコラボ作品が多くあり、僕にとっては少し遠い世界のように感じながらも、講演会は進んでいきました。
その中で、僕は大城さんのプロダクトデザイナーとしての姿勢について感じたことを書いていきたいと思います。

モノ”を提案する者として

彼は、机や椅子など数多くの作品を世に送り出しています。
その中で、特に面白いと思った事例がいくつかありました。

その1つが、あるブランドからの依頼に対して、依頼があったもの(家具)に加えて、そのブランドの立ち位置であるとかデザインのスタイルについてなど、そのブランド自体についての提案も行っているものです。

僕の基本的な考え方としては、デザイナーは求められたものを作り出し、クライアントに提供するのが主な仕事だと思っていました。
それに対して、彼はそのブランドの歴史や現状のデザイン業界を深く読み取り、現代と比較した上で、提案するモノと一緒にそのブランド自体についてもクライアントに提示していたのです。

このスタイルをやっているのには理由があると彼は語っていました。
彼が活動しているイタリアのデザイン業界では、経済優先の風潮が高まっており(これはイタリアだけの話ではないと思いますが)、デザインの多様性がなくなりつつあると。
これは数年前のデザイン業界とは全く違うもので、モノを作る者としては少し物足りない、本当にこれでいいのかと感じていたそうです。
そこで彼は、仕事であるプロダクトデザイナーとしてモノを作りつつ、そのブランドも研究して、本来目指すべきである「新しくて、本当に良いものを作る」姿勢を提示し続けているそうです。

この姿勢は、モノを作る者として考えるべきことで、今の当たり前を疑うことはとても必要なことだと思いました。
今ある現状だけが全てじゃない。もっと良い状態を目指す。
基本的ですが、日々の忙しさの中で忘れてしまいそうなことだと改めて認識しました。

“直感” について

今回の講演会のタイトルでもある「Intuition(直感)」。
それについても書きたいと思います。

講演会の終盤に、「直感」について語られる場面がありました。

彼のいう「直感」とは、パッと起こるひらめきとかアイデアではなく、長年の経験やリサーチ、思考の連続の中で、自分に問い続けることで生まれるものだというのです。

僕はその考えにとても納得しました。また、大きな勇気をもらいました。
必ずしも、才能だけがプロダクトデザイナーの条件ではない。努力の積み重ねなんだ。そう言い換えられるのではないかと思ったからです。

ある意味「直感」というは、主観的で恣意的なもので、その場限りのようなイメージを持たれるかもしれない。
しかしその過程の中で、彼のように思考や実際の作品の積み重ねがあり、それができているからこそ生まれる「直感」には、大きな価値があり、その人の特徴が大いに含まれた独自性があるのではないかと思いました。

彼が、イタリアを始めとする世界の舞台で認められる存在になっている1つの理由が分かったような気がしました。

講演会を通して

今回の講演会は、お二人の息の合った会話で内容が進んでいったこともあって、家具の世界にあまり馴染みがない私にも非常に分かりやすく、納得させられることが多々あるとてもいい講演会でした。

作り出すものは違えど、それを生み出すまでの思考、プロセス、またそれを提案する姿勢など、学べることが多くありました。

建築に限らず、色んなプロダクトの世界にアンテナを張って刺激を受けられるようにしたいと思いました。

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