見出し画像

雨に唄えば

    Aloha  from

   ケタ上げB2B

~Marketing  B2B Surfin' 23 ~

 by Surfrider

wave # 8:雨に唄えば

こんにちは! 阪本啓一(JOYWOW)です。

アダムとイブはおそらく除外するとして、全人類のうち1978年以前に生まれた人はお母さんのお腹からと見做(みな)してよいはずです。

2023年現在、研究室の試験管から生まれた人が世界に1,200万人います。

平均すると3分ごとに4人、175人中1人の新生児が体外受精によるものです。

・・・びっくりする話でしょ?

これ、『The Economist』(エコノミスト)2023年7月17日付記事の書き出しです。

ぼくはエコノミストの他、ウォールストリートジャーナルも購読し、隅からすみまでじっくり読みます。日本の新聞は日経。

他の雑誌や新聞も契約していたことがありますが、「全部に目を通すのが義務」になってしまったので、それでは本末転倒、絞ることにしました。

それでも多いので、エコノミストだけにしようかと思っているところです。日経、悪くないけど、良くもない。エコノミストの、学術論文かと思うほどの綿密な思考、緻密な取材姿勢に慣れてしまうと、日経の記事は高校の学校新聞クラスです。

1つを徹底的にやれば、むしろ全体が見えてくる。禅的な考え方です。

さて、マーケティングといえば、発信です。

「こっち向いて」
「私を見つけて」

が目的。

これって、OUT(外)ですね。でも、OUTばかりでは物事の半分しかやってない。

IN、うちに取り込むこと。

あなたやあなたの会社の皆さんは、何をやってますか?

インは何のためにやるかというと、もちろん、社会の流れを感じる・見るためです。

会社というものは社会との交流でビジネスが生まれる。

ならば社会の流れを感じる・見るのはmustなはずなんだけど、実のところ、まともにやってないんじゃないでしょうか。各自に任せる、という風な感じで。

Googleの親会社アルファベットは7月25日、堅調な四半期決算を発表しました。売上高は前年比7%増の750億ドル。12カ月で750億ドルの営業利益を計上しました。絶好調。

アルファベットは、確かに史上最大のサクセスしたビジネスの1つと言えます。

同社6つの製品

・Google検索
・Androidモバイルオペレーティングシステム
・Chromeブラウザ
・Google Playストアアプリ
・生産性向上ツールGoogle Workspace
・YouTube

は、それぞれ2億人以上の月間ユーザーを誇っています。

Google MapsやGoogle Translateなど、数百万のユーザーがいる製品を追加すると、ある統計によれば、人類はAlphabetのプラットフォームで1日あたり220億時間過ごしています。

これほど多くの人類のアテンション(注意)を喚起する能力は、広告主にとって非常に魅力的です。いまや地球の広告は3分の2がデジタル化しました。つまり、地球最大の広告代理店と言っても良い存在なのです。

2004年に上場して以来、Googleの収益(80%がオンライン広告から)は、年平均28%の成長率で成長しています。この期間に、同社は営業経費を差し引いた合計4,600億ドルの現金を生み出しており、そのほとんどが広告からのものでした。株価は50倍に上昇し、世界で4番目に価値のある企業になりました(*)。

*『エコノミスト』2023年7月31日記事『Is there more to Alphabet than Google search?』による。

ところが、「検索とそれに付随する広告」収益モデルの一本足打法であることは、創業以来、この9月で25年になりますが、変わってません。

2015年、アルファベット社を設立したのは、「広告一本足打法からの脱皮」が狙いだったのですが・・・

新事業は何1つ、育ってない。

「これから」を見通せない曇った視界が続いています。

アルファベットクラスの優秀な人財が集う組織で、これです。

では、なぜこうなってしまったのか。

第一に、アルファベットの成長そのものが、デジタル&ネット社会の性質を受け、winner takes all(独り勝ち)であること

第二に、会社の成長が、中で働く人間の頭脳の成長とは比例していない
(そもそも比例できないほどの巨大な成功サイズとスピード)

第三に、「人の五感」で確認できるサイズを超えてしまった成功のため、自社の成功を見るだけにとらわれ、というか精一杯。
「外からのイン」つまり「外から謙虚に学ぶ」姿勢を持つだけの余裕がなくなってしまっている

の3点が考えられます。

そして以上3つの点は、アルファベットほどの成長をしていないにしても、デジタル&ネット社会に「生かされている」多くの企業組織内にいる人間にとっても同じ傾向になると思われます。

1950年代、電気炊飯器やトランジスタラジオなどがヒットした頃は、アナログでした。努力と成功の大きさは比例しました。小さな努力は小さな成功を、大きな努力は大きな成功をもたらしました。人間サイズで、わかりやすかったのです。

人間のお口に入るサイズの成功でした。

ところが、デジタル&ネット社会は、人の手を離れてしまいます。

昨日夕方、新幹線に乗る前、ホーム売店で買ったアイスクリーム。サウナ風呂のような蒸し暑さの中、列車の到着を待ちました。

ようやく席について、アイスクリームのフタを開けてみたらプルンぷるんに溶けてました。これがおかしくて動画撮影し、インスタのリールに投稿したら、あっという間に再生回数が1万回を超えちゃいました。

1万回というのは人間としての私の五感を超えています。
よくわからない。


これが、デジタル&ネット社会の実相なんです。

ところが、B2Bであっても、ビジネスは「人と人」の営み。

五感に基づいたものでなければ、「何か」を生み出せません。

これで思い出すのが、自転車部品や釣具のメーカーシマノです。

シマノは1971年から3年かけて、全米のディーラーを直接訪問して自社製品への「声」を聞く「全米キャラバン」を実施しました。二人一組で、半年かけて全米6,000ヶ所のディーラーを巡ったといいます。

まあ、これも昭和なアナログ時代のエピソードなんですが、いまこれやってもいいわけです。これこそが、究極の「イン」になります。

全米6,000ヶ所のディーラーの人たちは、「はるばるやってきてくれた」だけで大歓迎だし、感激してくれたはず。

「うちに来てくれた」と出迎えの瞬間、開いたはずなんです。胸を。

製品についてのフランクな感想や意見、要望を話してくれる。

これがネットでは無理です。メールや電話の「お客様アンケート」では無理です。これを「イン」と呼んではいけません。自己満足でしかない。

デジタル&ネットの人間サイズを遥かに超える環境だからこそ、
アナログな人間サイズのイン、そしてアウトを。

いま本当に必要なことは、デジタル・トランスフォーメーション(DX)ではなくアナログ・トランスフォーメーション(AX)です。

映画『雨に唄えば』(Singin' in the rain)
名シーン、雨の中で歌い、踊る。

ジーン・ケリーは傘を持ってます。
はじめは、さしてました。
それをわざわざ閉じ、ずぶ濡れになりながら、シング&ダンス、喜びを表現します。

これですよ。これが人間サイズの五感。雨をインし、喜びをアウトする。

嵐が過ぎ去るのを待つのではなく、雨の中でも踊ることが人生なのです。

この記事が参加している募集

マーケティングの仕事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?