早く水槽から、出たい
7時半に寝て、7時半に起きた。
当然、その間、目覚める。
すぐには寝つけない。
真夜中、カラマーゾフの兄弟について研究した。
なぜわざわざカラマーゾフかというと、自宅書斎に適当な本がこれしかなかったから。
「カラマーゾフ」という言葉そのものに、ドストエフスキーは意味を込めた。
それは「好色」「破綻」「放蕩」「むき出しの欲望」・・・という意味で、だからこそ「カラマーゾフの兄弟」という風に「カラマーゾフ」と「兄弟」が「の」でつながっている。
いかにもカラマーゾフ的な兄弟たちの物語
というわけだ。
ドストエフスキーは生涯最後となったこの作品を59歳で書き上げた。
もっと年上なイメージなのだが、ぼくより年下やん。そして書き上げたわずか80日後、この世を去った。続編を企画していたというから、死は彼にとって意外なものだった。
呼ばれ、朝食。こたつでテレビ見ながら。
こんな生活、何年ぶりだろう。
「有吉くんの正直さんぽ」なんてのが流れてる。
スカイツリー近所の押上。
すみだ水族館。
クラゲは脳も心臓もないらしい。全身反射で生きてる。
目も耳もないのかな。山形県のクラゲ水族館行ったのを思い出した。
たしかに神秘的だが、この中にカラマーゾフ的なやつっているのかな。
カラマーゾフ的クラゲ。
オットセイの赤ちゃんが出てきた。ここでも素直に見れず、カラマーゾフ的オットセイ。ある気がする。
それからすべて、「カラマーゾフ的」だとどうなるか、という色がついてしまい困った。
スパイスカフェ。すごく魅力的で、これ、どっかで行ったことあると思ったら、新潟三条だった。カラマーゾフ的スパイス。
すみだ水族館を眺めながら、水槽に閉じ込められているのはぼくら人間も同じだなあ。
デジタルが進むほど、「限度」が決められる。
たとえば、お金好きなだけ使い倒そう、と思っても、クレジットカードには限度枠がある。
LINEきたので可愛いな、と思ったら「ダウンロード期限」というのがついてる。
デジタル=管理、統制、限度設定
だとするなら、現代人はみんなすみだ水族館の水槽にいるお魚たちと同じだ。
カラマーゾフの現代的意味は、ここにあるのかもしれない。
・多く愛した
・狂おしいばかりの、おそらくあさましいまでの生への渇望
・(神がなかったら)コニャックもなかったでしょうね
・幻覚がたんなるファンタジーではなく、実在する何かであってほしいと願う
・カラマーゾフ万歳!
管理され、限度を設定された水槽に暮らすぼくたちは、あまりにもつまらない。
レジは自分でバーコード読み取らせ、自分で袋に入れ、自分で決済させられる。
私が私であること
を証明するのは唯一、マイナポータルというアプリだけ。来年からは健康保険証にもなる。
ところがこれを開くと
ログインせよ
と言われる。
My SoftBankアプリにアクセスしようとしたら「Wi-Fiをオフにせい」と言われる。
すみだ水族館のクラゲは、決められた時間に担当保育員さんからスポイトでエサをもらってた。
ぼくたちと何が違うのか。
70年代以来最悪のペースだったインフレが終わりを迎えつつあり、ご同慶の至りですなあ、という記事がThe Economistに(Dec22nd 2023付)。
とはいえ、インフレも、誰かが何かしてそうなったわけではないし、誰かが抑え込むことで終了したわけではない。
なんとなくインフレになって、なんとなく終わった。
これが人間社会の本質だ。
管理できない。コントロールできない。
それでいいと思う。それ「が」いいと思う。
水槽の中で生きるのは、嫌だ。
年末年始、『カラマーゾフの兄弟』を現代に読みかえる仕事しようと思う。
それこそ、ぼくに課せられた宿題なんだろう。
ところが肝心の『カラマーゾフの兄弟』、見つからない。文庫版で持ってたはずなんだが。子どもがどっか持っていったか、あるいは捨ててしまったか。
早く水槽から、出たい。
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