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もう少し空き家を有効活用できないだろうか(その2)

日本では地震災害が多く発生します。そして、大地震が起こるたびに被災者への仮設住宅の提供など、復興支援に多くの予算が使われています。
私は兵庫県出身ですから、29年前の阪神淡路大震災のことをよく覚えています。
国や県外からの支援のお陰で神戸が復興できました。復興支援は被災者にとって有難いことです。

被災者が暮らすための仮設住宅は必要でしょう。
でも、日本中には空き家がたくさんあります。
仮設住宅を作るコストと時間を掛けるくらいであれば、空き家を活用した方が良くないですか?

災害時であるかどうかを問わず、私は日本の空き家をもう少し活用してもいいのではと思っています。

前回に引き続き、空き家について書いてみます。

2.空き家ができる理由


空き家になるのは、居住者が転居、死去したことによって誰も住まなくなるタイミングです。
居住者が転居する場合、その物件を売却すれば保有者が他の人に移ります。その場合は空き家にはなりません。

居住者が死去して相続人に引き継がれた場合、空き家をどのように処分するか(自分で住むか、売却するか)は相続人が決めます。日本では核家族化が進んでいるため、相続人が居住する物件を既に保有している可能性が高く、わざわざ古い物件に引っ越して住むことも少ないでしょう。
さらに、生まれ育った実家を売却したくない、と考える相続人もいます。このような不動産価値をセンチメンタルバリュー(感情的価値)と言います。

相続によって不動産を取得する場合、相続人にはその物件を売却する選択肢があります。
この点、相続人による不動産の売却を促進するため、政府は税制上の優遇策を設けています。具体的には、2027年12月末までの間(延長の可能性あり)に売却した場合、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できる制度です。この控除を『被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例』と言いますが、『相続空き家の3,000万円特別控除』と言った方が分かりやすいかもしれません。

政府は空き家の数を減らすために、この税制上の優遇策を使って相続人に相続空き家を処分するように促しているのです。
この政策がうまく機能しているか否かは、正直分かりません。でも、空き家数を減らすための施策として有効だと思います。

さて、話を進めます。

相続空き家を含めた築古物件の処分(売却・解体)が進まないのか?
理由は個人によって違います。
国土交通省が実施したアンケート結果(令和元年空き家所有者実態調査)によれば、空き家のままにしておく理由の上位8項目とその比率は図表2の通りです。

【図表2:空き家にしておく理由】

出所:国土交通省『令和元年空き家所有者実態調査』

アンケート結果を見ると、約6割の所有者が『物置として必要』と回答しています。見た瞬間、筆者は「そんなに断捨離ができない人が多いのか?」と思ってしまいました。空き家を処分できない人の6割は、きっと物を捨てられずに溜め込むタイプなのでしょう。

次に、『解体費用をかけたくない』、『更地にしても使い道がない』が続きます。古くて住めないけど解体するのは面倒くさいのです。非常にネガティブな理由です。

さらに、『好きなときに利用や処分ができなくなる』、『将来、自分や親族が使うかもしれない』と続きます。
「こんなことを言う奴は絶対に使わない……」筆者はそう思います。

こんな感じで、アンケート結果はツッコミどころが満載でした。
特に何も考えずに空き家のまま放置している、筆者はそういう印象しか持っていません。

ちなみに、アンケート結果の第7位の『建物を取り壊すと固定資産税が高くなる』は税法上の理由なので、合理性があります。国土交通省もこういう回答を期待していたのではないしょうか。

***

今回は以上です。
こんな理由で空き家を放置しているのであれば、災害支援に活用してほしいものです。

<おわり>

<前回はこちら>

【参考書籍】


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