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第2回勝手に月評 -住宅特集2021.1月2月号-

-はじめに-

こんにちは、M2の根本です。

今回は住宅特集1月2月号を対象として行われた第3回gpzの議論を元に、執筆いたします。あくまで学生が自身の責任で建築を批評する場として、暖かい目でみていただけますと幸いです。

さて、今回のgpzはB4が新メンバーとして加わり、総勢24名となりました。
これだけ人数が多くなると、多くの作品を議論することには大変時間がかかってしまいます。
そのため、gpzでは去年と同様、事前に学年ごとの読み合わせを行い、意見をシートにまとめる形式をとっています。その上で、当日は各学年ごとの異なる視点を共有し、互いに「作品のみかたを探る」場として大変有意義なものとなっています。


-作家性を如何に解読するか-

住宅特集1月号は「住宅のこれから 家をめぐる建築家の挑戦」という題の通り、建築家の作家性がみられる作品が並びました。したがって、紙面の情報から作品を読み解くことに大変苦労しました。

[F]青木淳/AS
この作品は丘の上という立地に対し、傘を引き伸ばしたような屋根、それを支える太い柱、基壇といった構成が特徴的な住宅です。
コンテクストに対応させつつ、図式を重要とする姿勢を強く感じましたが、その図式に対して様々な空間的なズラしがなされており、それゆえ学生一同読み解きに大変苦労しました。
一つの絞り出した解釈として、この作品における太い柱は「柱/壁の構造/境界的要素」と「階段/トイレの機能的要素」を内包したものであり、それを2つ存在させ、かつ内外の境界上に位置することによって、中心性を解体し、結果として図式を感じさせない広がりのある生活空間を成立させているのではないかと感じました。
一方で、2階部分が内外が連続する、開放的な構成であることに対し、1階部分つまり基壇部分が閉鎖的な空間となっている、ある種対比的な構成にはどのような設計意図があったのか気になるところです。

[京都のアトリエ/住居]タトアーキテクツ
4mの間口に対して30mの奥行きの敷地に立つアトリエ・ギャラリー兼住宅です。
住宅でありながら公共施設的なスケールを持ち込み、中心の吹き抜け空間を通して生活・空間・モノが絡み合うように意識されているように感じます。また写真からは、光の取り込み方によって内部でありながら外部のような印象を受け、ここでどのような生活や創作活動・展示が行われるのか気になるところです。
一方で、階段と各階のスラブの角度を45度に振っている点については、なぜ長大な敷地に対して斜めの図式を選択したのかが議論の中で疑問点として残りました。


-図式と空間的/時間的広がり-

住宅特集2月号は「平屋という選択―大地と繋がる暮らしの魅力」という題でまとめられています。全体を通して、図式が明快なものが多く、その中で如何に生活の空間的/時間的な広がりをつくるかが主題にあるように感じました。
また平家というキーワードと共に「木とコンクリートのハイブリッド」「くの字プラン」等の共通項が見つかり、複数作品を比較しながらの議論が展開しました。

[House OS 3つ屋根の下]神谷勇机+石川翔一/1-1 Architects
3筆の土地の敷地境界線沿いに、それぞれ住宅・農業用倉庫・温室を建て、住まいとして一体的に使った作品です。
宅地と農地を一体的に所有する条件の中で、三つの敷地を効果的に活用し、生活と自然を緩やかに連続させる手法、それによって生まれている空間は大変魅力的に感じました。
一方、農地側の屋根については、メンバー内で議論となりました。
住宅の屋根と連続させ、ボリュームとして一体感が生まれている点が良いという肯定的意見と、住環境と周辺の自然との関係性を繋ぐ上で屋根の高さを低く設定するなど、スケールの調整ができたのではないかという意見がありました。
いずれにしても、大変好感を覚える作品であり、それゆえ充実した議論がかわされました。


■木とコンクリートのハイブリット

最近の住宅特集において、木とコンクリートを適材適所に使い分けた混構造の作品が多く見受けられます。住宅特集2021年2月号においても[霧島の家][常滑の家]がその一つとして掲載されています。よって今回は、両者を比較しながら議論を行いました。

[霧島の家]森田一弥+吉川青/森田一弥建築設計事務所
この作品では、外周壁がRC、内部間仕切り壁・屋根が木造という構成が特徴的です。
敷地である鹿児島県霧島市における日差しが強く、台風の多いという厳しい環境に対して、構造/環境的な安定を図るものとして木とコンクリートのハイブリッドが適用されています。
結果として、スケルトン/インフィルの考え方により、内部構成が柔軟になっている点に対しては好感的な意見がありました。
一方で、四方に取り囲む庭が内部と連携してどのように使われるのか、領域的な広がりがどのように想定されているのかが気になるところです。

[常滑の家]裕建築計画
この作品は、木造フレームがコンクリートボックスを覆うような構成が特徴的です。
将来的な家族構成の変化に柔軟に対応するため、コンクリートボックスに生活のコアを納め、木造フレームに柔軟性を持たせた計画となっています。
木とコンクリートのハイブリットの適用の仕方として、時間的なスケールを計画に含めつつ、構造的な優位性、木造部分の空間的な多様性を担保する手法はとても明快で、好感を覚えました。
一方で変形敷地に対する配置計画には多少の疑問が残りました。木造部分の住空間と周辺の空地の繋がりについての考え方は紙面から読み取ることができませんでした。


■くの字プラン

くの字プランの図式が特徴的である[庭の家]と[三室の家/対の器]を並べる形で議論を行いました。ここでの議論は、「くの字プランに追従する屋根架構の屈折箇所における不都合をどのように空間に落とし込んでいるか?」が論点となりました。

[庭の家]岸本貴信/CONTAINER DESIGN
高台に建ち、南西と北東に大開口によって風と景色を取り込む構成が特徴的な住宅です。
この作品における屋根架構は屈折箇所においては屋根が切れ、その部分が屋上テラスとなっています。一方、その一階部分はエントランスとトイレとなっており閉じた空間となっています。
このような対称性の強い構成は、来客が見込まれるプログラムによるパブリックスペース/プライベートスペースの切り分けによるものであると理解しました。
メンバー内では好感的な意見が多く、シンメトリーなプランに対する構造的合理性、空間の抜けは大変魅力的であるという意見がみられました。


[三室の家/対の器]大村聡一朗+中村園香/OHMURA NAKAMURA ATELIER
この作品は、台形の敷地に対して追従するようにヴォリュームの角度を振ったマスな形態が特徴的な住宅です。
この作品においては[庭の家]とは対照的に、建物内部がほぼ一室空間となっています。
くの字プランは、繋がりながらも住まい手の距離感を調整するものとして用いられていますが、この選択は、住まい手が1〜4人と流動的であることに対するものとして納得しました。
一方、紙面上からは生活のイメージを掴むことができなかったため、住まい手の変化とともに、この空間がどのように変容していくのかが気になるところです。

-「作品」と如何に対峙するか-

今回のgpzを含め、これまで議論を継続して行ってきた中で「議論に挙がるもの / 挙げづらいもの」の両極に分かれることが多々ありました。
今回はそれはなぜかということについて少し考えました。

私たちは「作品」と対峙した際に、
①どのような(広義的な意味での)「構造」が隠されているか。
②そこに肉付けされた部分において、如何なる挑戦をしているか。
を見ているのではないかと思います。

したがって、建築作品の議論において大変盛り上がるのは、この①②自体とその関係性の中から「作家性」や「社会性」を各々の解釈とすり合わせの中から見出していく過程であると考えます。

ゆえに我々の中で作品を題材とした議論が充実するか否かは、
①②とその関係性についての「手掛かり」が紙面上に明快に示されていること、
が大変重要な点であると感じました。


このようにgpzの場は作品を通して、作品を読み解くことだけではなく、
近い将来作り手となる自身の土台を築くための大変有意義な場となっています。

今後も新建築・住宅特集を対象といて様々な視点から議論を行っていきたいと思っています。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。


M2根本

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