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勇気あるカミングアウトに心からの賞賛を。

7月26日。
この日に勇気をもらうことができた人が、一体どれほどいるのだろう。
計り知れないほどの人を救い、計り知れないほどの勇気をこの世界に与えることになった人がいる。

AAAの、與真司郎(あたえ しんじろう)氏である。

このカミングアウトには、さまざまな世論が寄せられたことを、私個人としても知っている。
そして、私自身もいろいろなことを考えた。
それらの軌跡を、今日はこのnoteに書いていきたい。


※先に断っておくと、LGBTやそれに伴う話が苦手な方は、今はこの記事を読まなくていいです。
というのも「自分と違う」ものに、拒否感や恐怖心を抱くのは人間の本能として当たり前だからです。
いい意味で、なんとも思わなくなってから、再度開いていただけたら、私はそれで十分です。※


今回のカミングアウトは、一体何が起きていたのか

著名人がカミングアウトをする理由

カミングアウト。
性的少数者以外の界隈であまり使われることのない言葉。
正直、SNS等を見ていて一番に飛び込んできたのは
「わざわざ発表してどうしたいの?」という意見だった。
彼の好きになる相手が男性だったところで、私たちの人生に大きな影響はないし、
「彼自身」がすでにたくさんの人に愛されているからこそ、その発表を暗く受け止めたファンは少なかったように思う。
では、なぜ、わざわざ彼は発表することにしたのか。
その理由について、さまざまな側面から考えていけたらと思う。


ポイント①AAAというグループに居ながらの発表

彼はダンスヴォーカルグループ「AAA(トリプルエー)」の一員である。
曲やメンバーについては詳しく知らなくても、少なくともアーティスト名は誰でも聞いたことがあるはずだ。
紅白歌合戦にも何度も出場しているし、「MUSIC!!!」「恋音と雨空」など大ヒットナンバーもいくつもリリースしている。
このグループの最大の特徴は「男女混合グループ」であることだろう。
男性ヴォーカルと女性ヴォーカルの華やかなハーモニー、息ぴったりで明るく元気の出るダンスパフォーマンス、ライブでの軽やかで仲のいいMCなど、グループの魅力を挙げればキリがないのだが、
その分雑誌のインタビューでは「男性メンバーにとって、付き合うなら女性メンバー2人のうちどっち?」とか「AAA内での恋愛があるんじゃないの?」などの質問を浴びせられることが多かったように思う。
キラキラした男女アーティストがグループ内で交際しているとなれば、まさに漫画やドラマの世界線。そういうニュースを知りたくない記者はいないだろう。
そして、近年はいわゆる「リアコ」(メンバーにリアルに恋する、の略)の間で、
「ライブ中に異性のメンバーであんまりスキンシップをとらないでほしい」というような意見がSNS上で多く語られるようになっていた。
元メンバーの伊藤千晃さんが2017年に結婚を機に脱退してからは、その矛先は唯一の女性メンバーの宇野実彩子さんに向けられるようになる。
「男性メンバーに色目を使わないで」「ハーレム楽しまないで」というような辛辣な言葉も宇野ちゃんに送られるようになってしまった。
メンバーとしてはライブ中に盛り上がって、いつものように仲良く軽快にコミュニケーションをしているだけのはずなのだが、ファンからはそうは見られなかったようだ。
このように、チーム内での恋愛を必要以上に注目されていたAAAの中で、與さんご自身の恋愛対象が「男性」であることのカミングアウト。
日本の記者のリテラシーを知っていたからか、「メンバーはタイプじゃないけど人として大好き」とにこやかに先張りした賢さが、與さんのすごいところだと思う。
どうせつまらない記者が今後、「メンバーの中では誰がタイプですか?」とか聞くに決まっているから、先回りで対策をしたのだと思う。かっこいい。
それに対して末吉くんが「俺はしんじろう大好きー!!!」と叫んだのも、またよかった。

ポイント②活動休止中の発表

現在AAAはグループとしての活動は休止中である。
(※ここからは私が持つ知識だけで書いているので、誤情報があれば訂正させていただきます。)
あくまでもグループとして、なので個人的にはそれぞれ精力的に活動を続けている。
例えばメンバーの日高くんは、B E:FIRSTのプロデュースや自身の楽曲作成、楽曲提供などを精力的に行なっているし、西島さんは歌手活動に俳優活動とマルチな活躍がとどまるところを知らない。宇野ちゃんもモデルやグッズプロデュースなど多方面で引っ張りだこだし、末吉くんも持ち前の芸術性の高さでどんどん流行を生み出している。

そんな中、AAAの中でも圧倒的なビジュアルの與くんは、留学を中心に海外での活動の幅を広げていた。
日本での活動は今後も行ってくれるのか?と不安を抱いていたファンも一定数いたらしい。
チームで動いていない今だから言えた、という面もあるかもしれないが、今回の発表には現メンバー全員が駆けつけていたというのだから、チームとしての結束力と與くん自身の人柄がいかに良いのかということが伺える。
後述するが、日本国内でのカミングアウトには正直リスクしかない。
これだけの信頼度がある人にしか、現状できないことなのである。

ポイント③日本で著名人がカミングアウトをすること

ジェンダーギャップ指数、というものがある。
これを聞いたことがある人がそもそもこの日本にどれだけいるか、謎である。
なにしろ、日本は世界で125位なのだ。

125位がどれくらい低いかどれくらい問題かということが、125位という低位であるが故に理解できないという、地獄の構造である。
どれくらいまずいことなのか、ということがわからないくらい意識が低い、ということなのだ。
最初に日本が改善されないカラクリについて知った時は思わず頭を抱えたものだった。

現に、日本ではいまだに、セクシュアルマイノリティへの認知も理解も全くない。
「全くない」とあえて書かせていただく。
「私は気にならないから」とか、そういう問題ではないのだ。
友達や同僚ならいい、
だけど、もし、我が子がそのようにカミングアウトをしたら?
「それは考え直して欲しいと思っちゃう」「勘違いじゃない?と聞いちゃう」という人が大半ではないだろうか。
本来セクシュアリティは考え直せるものではないのだけれど、そう考えてしまうくらい日本はまだまだつらい社会構造だと言えると思う。
その点で「全くない」と書かせてもらっているのだ。

日本では基本的に性的少数者は「オカマ」のイメージが強く、少しでもそれに近いアイデンティティを発信すれば全て「オカマ」として処理されがちである。
なにしろ、それぞれに種類があることも知らないし、今回のカミングアウトで與さんが「G(ゲイ)」だと言ったのにも関わらず、LINE NEWSでは「LGBTQ +を告白」というふざけた表題がついた。
彼はLでも、Bでも、TでもQでもないと、勇気を出して告白してくれたというのに。なんでも適当にまとめるんじゃないよ。

…さて、話を戻すと、
現状この国の中で著名人がカミングアウトをすることは、かなりの場合リスクしかない。
・ゲイだなんてキモい、もう応援しない。
・ゲイってことは男が好きなんだから、心は女ってこと?
・男が好きなら、今までファンのこととかもそういう目で見てたってこと?
・あの人ゲイの人らしいから、応援するのやめた方がいいんじゃない?悪影響だよ。

まあ、ざっとこんな意見が当たり前に出てくる。
さらに、
・なんでわざわざ言うの?別にいらない情報なんだけど
・結婚するわけでもないのになんで?
・それを言ってどんな得があるの?
と言う声も多く見かけた。

カミングアウトすることに得はあるのか

得があるのか、という視点で考えると、金銭的な得や人望的な得はほとんどないと言っていいと思う。
彼の場合は、すでに素晴らしい数のファンがいて、彼の素晴らしい人格に惚れている人が多いわけだから、今更彼が何を言ったところで揺るがないのだ。
つまり、ファンが減ることもなければ、これで大きく増えることもない。
だからこそ、なおさら疑問視されているように思う。

ここから先は憶測でしかないのだが、今回彼がカミングアウトした意義を私なりに考えてみた。

意義①自分を偽らない状態での芸能活動を保障

先述の通り、基本的に我々は「シスヘテロ」と言う状態だと勝手に判断されている。
シスとは「自分の体の性と心の性が一致していること」、ヘテロは「自分の体の性と好きになる性が違っていること」である。
女の子の体で、女の子の心で、男の子を好きになるのが当たり前だろう、と言う理論だ。

このどこに自分が位置するかを考えるとわかりやすい。

特に日本では、特別に申し出ない限り、「シスヘテロ」だと無言で判断されて話が進む。
年頃の女の子には「彼氏いないの?」20代後半の男の子には「そろそろ結婚しないの?」結婚した夫婦には「子どもは?」「子どもの性別は?」生まれた子には「女の子ならお淑やかに育てなきゃ」「男の子だから泣かないの」「そんなんじゃ異性にモテないよ」と声をかけられ続ける。

そもそもその人が欲しいのは「彼氏」なのか?と言うより、恋人自体も欲しがっているのか?結婚をしたいと思っているか?結婚したら子どもを産まねばならぬのか?その人が持つ体の状態で難しい可能性は考えないのか?女の子だから、男の子だからってその子の可能性やらしさを潰すのか?

客観的に見ればきっとみんな違和感を持つだろうけど、残念ながらこれが日本では当たり前なのだ。多分まだあと少なくとも30年はこのままだと思う。これらを是正しようと、教員の団体や、LGBT団体で動いているけれど、ここで先ほどの125位がじわりじわりと効いてきて、全く話にならなくなっていく。

「じわりじわり」という点で言うならば、芸能人である彼は余計である。
ことあるごとに「キュンとくる女性の仕草は?」だの、「結婚するならどんなお嫁さんがいい?」だのを聞かれ続け、ファン思いの彼のことだから、ファンの女の子たちが喜んでくれる回答を考えて、心優しく答えていたに違いない。
しかし、それは、彼の優しさを搾取しているのである。
本当はもっと別の好きなタイプがあったかもしれない。女の子にときめくことができない自分を何度も責めたかもしれない。メンバーに女の子がいることでカップルライクな写真などを撮り、その度に心から入り込めないことに申し訳ない気持ちになっていたのかもしれない。
日常生活でも、仕事でも、じわりじわりと、シスヘテロの固定観念が彼を苦しめたのではないかと思う。

今回のカミングアウトを経たことで、おそらくメディアは彼に対して「人間関係の質問はしない」という約束を一旦することになるのだろう。
本当は別に聞けばいいのだが、「知識がない状態で人権侵害になる方がめんどくさい」と考える人が多いからだ。
一旦その方法で、彼自身が、彼に合わない質問から身を守ることができるのは大変大切なことだと思う。
自分を毎日偽って生きるのは、つらいことなのだ。

意義②同じように苦しんだ仲間を救う

先ほどから何度も書いている通り、彼はアーティストとして大成しながらも、その誠実で優しい人柄により人気が高い人物である。
「こんな素敵な人もゲイなら、僕も間違っていない」
そんなふうに、ロールモデルになれる可能性を十分持っている方である。
セクシュアルマイノリティは、自分自身で声をあげないと、いなかったものにされてしまう。
よく「セクマイは声がデカくて権利だけを主張する」と叩かれるのだけど、そうしないと、まず人数として数えてもらえないし、
自分自身が何度もつらい思い、孤独感、「自分はおかしいのではないか」と自分を責めて嫌いになる気持ちを抱えてきているからこそ、もう同じ思いをする人が出てきて欲しくないと考えるのである。
既に人気があって、有名な彼だからこそ、救っていける人がたくさんいる。
彼がカミングアウトをしてくれたことで勇気をもらった人が本当にたくさんいるのだ。
また、自分の親にカミングアウトができていなかった人も、「與くんと同じで…」と言える可能性もある。
心優しい彼はきっとそこまで考えて、自身のホームページにセクシュアルマイノリティで悩んだ時の相談窓口のリンクを貼り付けてくれた。

困っている人、少しでも悩んでいる人が、このホームページのリンクから悩みの解決の糸口に向かうことを切に願う。

彼の勇気あるカミングアウトに心からの拍手を。
そしてここから先も、彼が、そして、彼と同じ悩みを抱えた人が、みんな幸せでいられますように。
このnoteが皆さんにとって何かを考えるきっかけになってくれていたら嬉しいです。































ここまでで5000字。
今まで書いた中で最長のnote。
ここまで読んでいる人はいないだろうと考えてここから先を書かせていただこうと思う。
なぜ今回この記事を書くことにしたか。
それは、私自身が当事者だからだ。
私は「パンセクシュアル」である。
人を好きになる時に、性別が判断基準に入らないのである。
男だろうが、女だろうが、なんだろうが、「その人」本体のことを好きになったら好きなのだ。
逆になぜみんなは、男だけ、女だけを好きになるのかな、と不思議な気持ちになる時さえある。
だから、自分のセクシュアリティを受け入れられなかったし、男の子のことも好きになったことがあるから、女の子を好きになるのは気の迷いだろうなと信じていたし、「彼氏」を欲しいと思えないのがつらかった。
加えて、自分は「子どもを育てたくない」と思っていたり、レズビアンさんからは「どうせ最後は男とくっつくんでしょ」とのけものにされたりしてきた。
普通になりたいと思って生きてきた。
今、女性向けのオンラインスクールにいるのも、見る人によっては「恋人探し」に見られてしまうのかもしれない。申し訳ないが、そんなつもりはない。
私は共に進める仲間と純粋に学びたいだけなのだ。
でも。
もしこれを理由に迫害されてしまったら、と思うと怖くて書けなかったし、誰にでも言える話ではないな、とは思っていた。
この部分だけ有料にすることも考えたけど、有料にするなら書く意味がないなと思った。
「イケメン」であること、「理想の彼氏」であることを求められ続けた彼のことを考えると、居ても立ってもいられなくなってこの記事を書いた。
急いで、かつ、心の思うままに書いたので文章が支離滅裂な部分もあったと思う。
事実確認が甘い部分もあるかもしれない。
でも、それでも、どうしても、彼の勇気に応えたかった。

與くん、ありがとう。
勇気を出してくれて、ありがとう。
あなたの存在に、あなたの告白に、私は勇気をもらいました。
私は私で生きていきます。
本当に、本当にありがとう。
これからも心の底からアーティスト與真司郎を応援しています。




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