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UNDER SOCKS ニューアルバム「UNDER SOCKS」発売記念インタビュー

KKV Neighborhood #192 Interview - 2023.11.03
インタビュー、編集 、構成 by 4x5chin (KYO-TEKI)

音楽やバンドを好きでいると、”人気絶頂の中で活動が止まってしまうこと”や、”素晴らしい曲や演奏なのに世間に知られることと距離を取りすぎていること”など、「もったいない」と感じてしまうことがいくつもあるが、その中の一つに、”一度出会ったバンドについてのイメージが更新されないまま止まっていること”も挙げられると思う。

UNDER SOCKSは結成10年目になる宇都宮を中心に活動している同級生3人組のバンド。共に汗を流し白球を追いかけ、最後の夏の予選は初戦敗退。涙を呑んで野球部引退をすると同時に楽器を手にしてバンドを結成。これまでに2枚のデモとTAPE、アルバムをリリース。パンクとUSインディーが無邪気にキャッチボールしているような瑞々しいサウンドを紡いできた。

キリキリヴィラのチーフプロデューサーである安孫子曰く、彼らは音楽的なセンスというか勘がとても良いという。例えば「自分の中でポップパンクといえば?」という問いに「うーん、PARASITESっすかね?」と答えてくるそのチョイスが、何度もパンクに魅せられて狂ってきた男・安孫子にはどうにもたまらないらしい。また、これまで長きに渡り数々の音源制作やプロデュースに携わり、ダンスミュージックやインディー・ロックなど多岐に渡るジャンルに造詣が深いキリキリヴィラ与田も、「今回の音源はこれまでのUNDER SOCKSのファンだけに留まって愛されるにはもったいないよね」と漏らしていた。

筆者自身も、遡って調べたところ2015年頃にはライブを目撃し、彼らが足利のレーベルPENNANT PROJECTからTAPEを出した頃にはすっかり魅了されていたが、その後も動向を追い続けてきた。レーベルというものがそもそも全てにおいて、ー最高にかっこいい!だからそれを気に入ってくれそうな人たちに届けたい!ーという信念のもと動くべきものだと言われれば全くその通りなのだが、セルフタイトルを冠し、前作から5年振りとなるアルバム「UNDER SOCKS 」は至極まっとうにKiliKiliVillaのパンクサイドを愛してくれる方々以外にもインディー・ロック好きやより多方面の愛好家たちに刺さって欲しい1枚に仕上がっている。手前味噌ではあるが、声を大にしてそう言いたくなるような楽曲たちが眩しいほどに散りばめられているのだ。

20代も後半に差し掛かり、暮らしの中でどんなことに喜びを感じどんなことに悩むのか。宇都宮という地方都市をホームタウンとして音楽活動をしながら見えてきたこと。幼少期・学生時代から今も変わらず何をするにも一緒で、笑い話やエピソードは3人共必ずその場所に居合わせているというまるで漫画に出てくるキャラのようになかなか稀有なその関係性。これまでのバンドの道のりや今回の音源の制作についてなど時間の許す限りに話してもらった。

どうしても不器用でやんちゃだけどどこかロマンチック。少し大人になって自分たちの足取りを再確認しながらも、初めて音を鳴らしたあの時の感覚をまだずっと覚えてる。夢中で白球を追いかけていたあの時のように、自分たちなりの暮らしの中で理想の音と表現を今も探し求めながら。イメージを超えてゆく。 

KKV-157VL

ー早速だけどこれだったら3人で一緒に死ぬほど盛り上がれるなっていう曲はありますか?

カメダ:え、自分たちの曲でですか?

ーこちらとしてはそんなかっこいい答えをしてくれるならもちろん歓迎しますけど(笑)。

カメダ:ちょっと待ってください!違うんです(笑)!えっと...やっぱりThe Stone Rosesの「Driving South」じゃない?

タカヒロ:あーかっこいいね。でも自分的にはThe Soup Dragonsの「I'm Free」かと思うんだけど。

クマクラ:FIDLAR。やっぱり「West Coast」はアガります!

ーありがとう!全部最高であることは間違いない!では改めて自己紹介からお願いします。アンダーソックスの他にやっていることや、近況含めフェイバリットなものとかも聞いてみたいです。

カメダ:はい。ベースのカメダです。CHUCK TAYLORSとお世話になっているライブハウスのHELLODOLLYと一緒にDIG NIGHTというイベントをやっています。それがきっかけで最近DJも始めました。好きな食べ物は麻婆豆腐です。自然の中が特に好きなので散歩やランニングもします。

タカヒロ:ドラムのタカヒロです。サポートでsuueat.でも叩かせてもらってます。最近は毎日欠かさずスピーカーから爆音で音楽を聴いてますね。爆音は生音に近いので普段気付かないような音に隠された情報をキャッチできると思っていて。

クマクラ:ギターのクマクラです。DIG NIGHTの他には仲間とnoteでヘリポートっていう読み物のサイトを更新しています。あとは結構前からですけど好きなのはサウナ、ラーメン、寿司、カレー、喫茶店etc...。あ、あと今焦ってるなっていう時に瞑想すると結構良いですよ。You Tubeでたまにそういうのを調べて観たりします。

ーありがとう!じゃあ気になったことからひとつずつ聞いていきますね。DIG NIGHTを始めたきっかけって?

カメダ:コロナ禍が始まったくらいの時期に、多くのライブハウスと同様にハロードリーもライブのスケジュールが全然入れられなくなっちゃってて。そのタイミングでハコ側から「何か一緒にやらない?」って話があったんです。せっかくだから、古着とかCDを持ち寄ってフリマみたいなことをやり始めたんですよね。ライブもやれないし観れないなら、自分たちが集まって遊ぶ場所を作ろうと思って。おれらレコードも好きだし、そこで好きなモノを持ち寄って曲流したりして。次第にライブスケジュールも戻りだして、人も入るようになったらそういうことはしなくなったんですけど。今もアンダーソックスとチャックテイラーズとハロードリーの共同のライブイベントとして定期的に開催しています。


DIG NIGHT

ーなるほど。その当時みんなが思うように動けなくてモヤモヤしている頃に、アンダーソックスが地元で静かにだけど動き出したなっていうのは見ていて感じてました。

カメダ:人がたくさん来るとか来ないとかじゃなく、やっぱり集まれる場所が欲しくて。前みたいにライブで東京に行くこととかもできなかった時期だったので、ずっと地元にいて、何しようかなっていうの考えてました。それまでもハロードリーに出演はしていけど、コロナ禍の時期にハコと関係性が近くなった気がします。一緒に過ごす時間が長くなったこともあり自然と相談することも増えて。今一度地元でこれからどうやっていくかを考えた時間でしたね。

ー確かヘリポートもそれくらいの時期に始めてましたよね。

クマクラ:そうですね。同じようにライブができなくて、結構どうしようかなって感じで。やっぱり発信する場所を作りたいなと思ったのがきっかけです。

ー寄稿している人たちにはどんな人がいますか?記事は音楽以外のこともあったり。

クマクラ:自分以外にも別のバンドの知り合いもいるし、バンドと関係ない人もいますね。内容はエッセイや詩みたいなものが多い。アウトプットする機会ができたので自分の気持ちや考えを見つめ直すことができて、これが意外といいんですよ。

ー爆音で音楽を聞く習慣についても詳しく聞かせてください。

タカヒロ:1年半前くらいからですかね、コロナ禍に実家を出て、今住んでいる一軒家で一人暮らしを始めたんですよ。友達と爆音で音楽を聞いても大丈夫な環境がほしいなと思ったので。ここで3人で集まって音源制作もできるし、音量を気にせず演奏もできる。最高ですね。運転中や他の場所よりも大きな音で音楽を聞けるっていうことも自分的には得られる情報が多いんで、こういうニュアンスで音を出せば自分の好きな音楽や演奏に近づくのかなーなんて試行錯誤もよくしています。今回のレコーディングにも役立ったんじゃないかな。

ーうんうん。最高のたまり場ができたってことですね。

カメダ:はい。タカヒロの家に集まるか、3人でサウナ行くかって感じですね(笑)。

クマクラ:他にもハロードリーはもちろん、LOVE SOUNDSスタジオも溜まり場ですね。喫茶店portも大切な場所です。

ー本当に仲良すぎる(笑)。そんなに一緒にいるの珍しいですよね。そんなアンダーソックスも結成から10年経って。改めて聞くと、野球部を引退してバンドを結成したと。

カメダ:高3の夏の大会が終わって。結構ガチでやってたんですけど全然甲子園には行けなくて。負けたらすぐに楽器買いに行ってましたね(笑)。でも別にバンドを一緒にやろうなんてお互い約束なんてしてなかったよね?みんな音楽好きだったし、なんかもう自然と「バンドやるっしょ!」ってなりました。

タカヒロ:そうそう。パート決めもなんとなくで。カメダはベースっぽいとか。

カメダ:タカヒロはキャッチャーだからドラムでしょ?みたいな。

ー楽器はそれぞれまだ経験なかったってこと?

クマクラ:そうですね。自分は中学くらいからギターを弾いてはいたんですけど人前で演奏するようなことはなくて。野球辞めたらこの3人でバンドを組もうってひとりで勝手に思ってました。

若かりし頃

ーおもしろいなー。じゃあその時からの関係値や3人の空気感って根本は正直今も変わらないって感じですか?

カメダ:いやもう本当に。集まってひたすらスマブラで遊ぶのがバンドをすることに変わっただけみたいな感覚です(笑)。

ーどの時代も意味もなく集まってスマブラやりがちですね、青春。確か3人の関係は部活よりも前からって話でしたよね?

カメダ:3人一緒なのは中学からですけど、おれとクマクラは幼稚園からの仲ですね。

小学校の遠足での一コマ

ーもうそうなるとお互いの色々なこと全部知ってる感じですね。万が一仲違いしたらなんでも暴露されちゃう。

カメダ:ははは。でもそれはないんで大丈夫です!

ー自分たちで1番気の合うところってどこだと思いますか?

カメダ:ずっと同じものを見て育ってきたので感覚が近いんだと思います。各々好きなものはあるけどこれはダサいなとか自分達っぽくないと感じるところがだいたい互いにわかっている。音楽をやるにしても遊ぶにしてもそこが1番デカいっすね。

クマクラ:笑いのツボが一緒だったり、一緒にいても楽ですしね。

ーそんな3人で組んだバンドの名前をアンダーソックスにした理由は?野球用品の中でも正直地味だし。ねらいはなにかあったんですか?

タカヒロ:確か3人でファミレスで決めましたね。特にそこまで意味はないですね。その時のノリかと。

カメダ:字面がかっこよかったんですよね。スペルにした時にTHE UNDERTONESみたいだなって思ったので。

ーそうしてめでたくバンドを結成。当初はどんな音楽をやりたいっていうのは具体的にありましたか?

カメダ:銀杏BOYZを聴いてバンドをやろうと思ったので自分たちもそういう音楽をやりたいと思ってましたね。最初はGOING STEADYとかブルーハーツのコピーをやったり。I HATE SMOKE RECORDSのコンピもすごい聴いてたので、そこに入ってるバンドの人たちと東京で一緒にライブできたらいいなーと思ってました!

クマクラ:銀杏BOYZ、ブルーハーツ、FRUITY、SEVENTEEN AGAIN、THE GRUMPIESとかですかね!

タカヒロ:自分も銀杏BOYZみたいになりたかったです!でもとにかく下手クソだったんでただただハチャメチャにやってました!

ー揃って銀杏BOYZの名が。安孫子さんに気を遣ってとかそういうことでもなく?

カメダ:はい。これが...ガチ中のガチなんすよね。

ー少し意外な感じもしますね。というのもみんなの世代的には銀杏BOYZが積極的な活動をしていた時期とは多少ずれているような気もしたから。いつ頃に出会ってるんだろう?

カメダ:自分がリアルタイムで覚えてるのは、シングルで「ボーイズ・オン・ザ・ラン」が出た時(2009年12月)ぐらいですかね。

タカヒロ:元々クマクラの兄ちゃんが音源持ってたんじゃなかったっけ?

クマクラ:そう。兄ちゃんの部屋にゴイステのMDがあってそこで存在を知りました。

ーそこからみんなで共有していった感じなのかな。ちょっと不思議なのは銀杏BOYZは2005年にアルバムを2枚出してツアーを周って、その後よく知られているように長期に渡るレコーディングが中心で、2014年に「光のなかに立っていてね」「BEACH」がリリースされてメンバーの脱退が発表されたけど、2008~2013年あたりのアンダーソックスの3人が中高の学生時代は、数枚のシングルと震災後のツアーなどバンドは大きな動きはなかった時期だと思っていて。自分の体感でいえば世代だったファンはずっと音源を待っているし追いかけていたけど、その時期に新しく衝撃を受ける機会が実はがなかなか珍しいことだったんじゃないかと。周りにも銀杏BOYZ好きな人っていましたか?

カメダ:あーそう言われると確かにいなかったですね。

ーそう考えると貴重な3人なのかもしれない。ちなみにそれぞれ好きな曲はありますか?

カメダ:えーー?...んーー(悩んで)ナイトライダー。

タカヒロ:駆け抜けて性春。

クマクラ:漂流教室ですね。

カメダ:実はライブを観たこともないんですよね、全員。

ーそうなんですね。KiliKiliVillaから先日国内盤をリリースしたJeff Rosenstockも過去に銀杏BOYZをカバーしていたり好きみたいだから、そういう何かの縁でアンダーソックスのみんなが銀杏BOYZを観たり、はたまた共演したりする未来があったらおもしろいですよね。それと、I HATE SMOKE RECORDSやそれこそTHE GRUMPIESってどこから知ったんですか?

カメダ:自分もバンドを始めてライブハウスに通い出した2013年頃はKINGONSやアップル斉藤と愉快なヘラクレスたちをよく見に行っていて、そこら辺はKiNGONSからの流れで調べていったら色々と繋がっていきましたね。彼らは実家でもある宇都宮STUDIO KENTをホームに活動していて、今のハロードリー周辺とはまた違った流れで活躍していたので。宇都宮周辺はそこから何年かしてSUNNY CAR WASHとかLucie,tooが出てきて、それに影響を受けた下の世代とかが更に出てきて今に至るって感じです。

ーバンドの話になったから身近なバンドや接点のあるバンドについて聞いてもいいですか?

クマクラ:はい。宇都宮だとentropyz。新しいバンドで、SUNNY CAR WASHのハネダもメンバーにいます。スピッツとUKの感じを合わせたような音ですね。

カメダ:男女2ピースで機材オタクのExitra Virginは演奏も上手いし音作りが面白い。
Hooboken Surpriseは4つくらい年下のオルタナのバンドで、NOT WONKとかキリキリから出しているバンドがめっちゃ好きそうな感じ。

クマクラ:他にもCHUCK TAYLORS、Lucie Too、Sonosheet、escapesとか。

ーCHUCK TAYLORS、以前アンダーソックスが教えてくれて聴いてるけど味があってかっこいいですよね。最近はアンダーソックスとタッグを組んでいるくらい仲良しのイメージだけど。レコ発にも呼んでますね。

カメダ:年齢もほぼ一緒だったり、おれらがバンドを始めて2回目位のライブがハロードリーで行われた高校生イベントみたいなやつだったんすけど、その時にメンバーとはもう出会っているんで実は長い付き合いですね。

タカヒロ:ライブがめっちゃいいんでレコ発も楽しみにしていてほしいです。

カメダ:あとは東京だとTHE GUAYS、VINCE;NT、WETNAP、MEGAXとか。イベントに呼んでくれたり宇都宮に来てもらったりしてるバンドです。

クマクラ:THE SATISFACTION、Sendo、The Hathawaysなんかも仲良いです。何よりCAR10やsuueat.にはとにかくずっとお世話になってますね。

カメダ:CAR10やsuueat.の人達と出会えたタイミングっていうのはここまでバンドをしてきた上ですごく大きかったなと思います。音楽だけじゃなく遊び方とか、地方でバンドをやる上での指針のひとつになってますし。

ーうんうん。バンドにとってのターニングポイントのひとつだったと。他にも振り返ってみると印象的だったこと、聞きたいですね。

タカヒロ:カメダがI HATE SMOKEの大澤さんに音源を送って、そこから東京に呼んでもらえたりコンピに参加したりできたことはバンドにとって大きかったですね。東京で交流のあるバンドとの関係の多くがなんとなくそこから始まっている気がします。

クマクラ:PENNANT PROJECTに声をかけてもらいカセットテープを出した時。セミファイナルジャンキーに出た時。キリキリヴィラからアルバムを出した時。挙げていけばたくさんありすぎますね。

セミファイに出演した頃

ーここまで結成当初のことやバンドの歩みについて少し話してもらったけど、そこから時間が経って、今はこういう音楽(バンド)をやりたい!というものや最近のモードみたいなものはありますか?

タカヒロ:見てもらってる人のテンションを上げられるようなライブができるバンドでいたいですね!自分自身そういうのが1番ブチ上がるので!

カメダ:(ゴニョゴニョと歯切れが悪い)

ーどうしたんですか(笑)?

カメダ:いや実は、ちょっと前のライブが自分たち的にも出来があんまり良くなくて納得できてない感じだったんですよね...。だから、今ほんとマジ気合い入れ直したって感じです!!やんなきゃダメっすね!

ーそうですよ!ほんと頼みます(笑)!特にリリースのタイミングって、今までバンドのことを知っている人はもちろん、新しい人も含めてもう一度「自分たちってこんな感じです。こういうのが好きでやってます!」っていうのを見てもらうチャンスというかさ。みんなが自分の中でアンダーソックスを気に入るタイミング。「部屋で聞く音楽もいいけど、仕事忙しいけどちょっと今日見に行きたいな」、みたいな気分の時に行動の決め手になるのって、その時々のライブの良さとか、バンドのモチベに結構左右されると思いますから。

カメダ:気合いバチバチでここからやっていきます(泣)!!あと最近はロックだけじゃなく色んな音楽を好きになったので、特定のジャンルに縛られず自分達なりに解釈して色々なことをやりたいと思ってます。あとは誰か1人が目立つよりかは3人の音をぶつけ合ってひとつの塊になるみたいなグルーヴが出せたらいいんですけど。

ー今回、アルバムの制作に向けて参考にしたり影響を受けた音楽ってどんなものがあるだろう?たくさんバンド名は挙げてくれているんだけどまず気になるところでいうと、STONE ROSES、PRIMAL SCREAM、THE HIGH-LOWSの名前がやたら多いですね。

カメダ:そうですね。3人の中で今年一大ブームだった共通項って感じです。ここ1年位でマンチェのバンド(1980年代後半に生まれた音楽ジャンル、そしてカルチャーシーンでもある”Madchester”。ダンサブルなビートとドラッグ文化を反映したサイケデリックなサウンドが特徴とされるロックのスタイル)に全体的にハマったんですけど、STONE ROSESのダンスっぽいビートとギターの絡みが最強すぎてやられました!

クマクラ:マンチェ繋がりだとLongpigsはグランジっぽさも感じてかなり好きで聴いてました。

クマクラ:プライマルは去年のサマソニで3人で観たんです。改めて喰らっちゃいましたね。ヤバかった。

ー3人並んで観てたのか。お互いどんな顔してました?

カメダ:いやーもう全員「オワ~~~~(恍惚)」みたいな顔です(笑)。めっちゃ近くで観れたんですよ!ステージも音響もそりゃ違うとは思うんですけど出音・演奏がとにかくすごくて。マチフェスなんかでライブを見ても感じますけど、自分たちも開放的で大きなステージで音を鳴らしたいっていう気持ちが高まりましたね。

クマクラ:ギターの出音が、音数は少ないのにこれでいい!っていう見本みたいな完璧さで圧倒されましたね。

タカヒロ:プライマルに限ったことではないんですけど、良いライブを観ているとステージ上でのパフォーマーとしての見せる力が本当にすごいなと実感しました。その感覚を自分にも照らし合わせて、まだまだやれることはあるなってポジティブに考えてるところです。

ーハイロウズはかなり意外に思ったんだけど、元々好きだったとかではなく最近聞いているってことですか?

カメダ:個人的にはブルーハーツとクロマニヨンズは好きだったんですけどハイロウズはその中だと異色に思えてそこまで興味が向いていなかったんですよね。いざ聞いてみたら自分の勝手な解釈ですけどハイロウズが1番本気なんだなっていうことにやっと気づいた。色々と音楽を聞いてきた上で改めて聞くハイロウズが今の自分にはなぜか刺さったんですよね。こんなにかっこよかったんだって。

ーへぇーそれはおもしろい。ちなみに好きなアルバムや曲は?

カメダ:「ロブスター」は全曲好きですね。あとはマーシーがたまに歌う感じがめっちゃ好きで。今回自分たちのアルバムでも2曲だけおれが作って歌ってる曲があるんですけど、そういう風にアルバムの中で良いアクセントになればいいな。The Cribsもどっちも歌えるしかっこいいじゃないですか。自分たちもその良さを出していきたいですね。

ここで制作期間中に聴いていた・参考にした音楽についてたくさん挙げてくれましたが、紹介しきれないものをせっかくなので掲載します。

  • 【カメダ】ピーズ、ゆらゆら帝国、フィッシュマンズ、James Gang、Cream、Twin Peaks、Sly&the family stone、BAD SOUNDS、Cosmo Pyke、Chemical Brothers、Portishead。

  • 【タカヒロ】twin peaks、Led Zeppelin、James Gang、the soup dragons、big star、the band、greatful dead。

  • 【クマクラ】WILCOのファーストセカンド辺り、THE KOOKS、THE STROKES、サニーデイサービス、GREEN DAY等を音作りの参考に。Kula shaker、スピッツ、twin peaksも聴いてました。

カメダ:そうだ!プライマル・スクリームのライブ以外にも、VINCE;NTのライブが半端なかったんですよ!アルバム制作期間中にBUSHBASHで共演した時に見て圧倒されましたね。もう音がでかすぎて!それでいて音圧もすごいのにちゃんとそれぞれの音が分離して聞こえる音作りの凄さ。自分たちは前作からもわかるように、それまでインディーロックっぽいキラキラした音を好んでいる部分があったんですけど、個人的にはもうその音の好みも少し変わってしまうぐらい衝撃的だったんです。超ヘヴィーな出音にやられちゃいました。

ー今回のアルバムにも影響があるようなパンチのある音楽にも惹かれ始めたと。

カメダ:まさに。ニルヴァーナの「イン・ユーテロ」を改めて聴き直したり、ゆらゆら帝国やCREAMを聴くモードに突入していきました。

クマクラ:自分はそういうモードみたいなものでいうと、古いロックとかをよく聴いている時期もこの期間にありました。なのでマチフェスでのすばらしかのライブは上手さも激しさも兼ね備えていてドンピシャで自分に響きましたね。suueat.のケーシさんに教わったラフィータフィーも聴いてみたらギタリストとしての清志郎のヤバさに気づきました。

ーそんなインプットから今回制作中にこだわった点やどういう音源にしたかったかなども教えてほしいです。

カメダ:コロナ禍の間にDTMを覚えてプリプロが出来るようになったのでレコーディングする前にまず自分達で録ってミックスのイメージとかフレーズを固めてからレコーディングに臨めたのが良かった点かな。今回レコーディングしてもらったのはハロードリー店長の久保さん。高校生の頃からずっとお世話になってるしかなり信頼していたので、色々相談しながらじっくり時間をかけて録りました。

スタジオにて

ーDTMは独学?

カメダ:はい、独学でセコセコと。家に帰ったらYou Tube見たり、その久保さんに教えてもらったり。

ー少し話はずれるけど今回のジャケットなどのデザインもカメダくん自身でやってますよね。これも自分で学んだ感じですか?

カメダ:いや、それに関しては仕事が終わった後に学校に通いましたね。自宅で映像学習したり、実際に出向いて講習を受けたりして。本当に基礎的なことしか学んでないんですけど、自分次第でこれから色々できそうだなって思ってます。

クマクラ:カメダがデザイン周りを担当してリリースまでのやりとりもスムーズになったもんね。

カメダ:レコーディングもデザインも、なるべく全部自分たちでできるようになれば、ゆくゆくはリリースまでの流れをバンド内で完結できるようになるじゃないですか。そうしたらフレッシュな状態でそのまま世に出せたらおもしろいだろうなと思ったし、今までリリースの間隔が空きすぎてるなとも思っていたので。今回もやることが多くて大変だった分、アルバムへの思い入れも強いですね。

Sweet & Savage

ーバンドを気持ちよく動かすには、っていうところにも繋がる気がしますね。すごく良い試み。では話を戻してサウンド面について。

タカヒロ:音に関しては山を感じるサウンドが個人的なテーマでした。コロナ禍で釣りをしたり山を訪れたりしているうちにたくさん刺激を受けて。山って不規則なリズムで鳥の声、川のせせらぎ、風の音とかたくさんの音があるのにすごく気持ち良い音がしてるというか、そういうのを音楽的な表現で何か表せないかなっていうのは思ってました。具体的には太くどっしりしたパワーがありつつ角がとれた包容力のあるサウンド。

ーなるほど。山を感じるバンドや曲は例えば?

タカヒロ:ある日レコード屋に行ったら店員さんが勧めてくれたのがツェッペリン(Led Zeppelin)の「聖なる館」ってアルバムなんですけど。その時に店内でそれをとんでもない音量で聞かせてくれて(笑)。だからなんかもう倒れるんじゃないかぐらいには一瞬驚いたんですけど、聞き始めたらジョン・ボーナムのドラムが山の中でそびえ立つ大木のような極太ビートに感じて心地よくて最高でした。自分はまだまだですけどそのイメージを大事にして演奏しています。

クマクラ:ギターはストラトとSG、それにレスポールも使ったりしたんですけど、全部バッキングのクランチの音作りにこだわったつもりです。そこはまだ課題のひとつでもあるんですけど。あとはアンプの歪みで録ったりエフェクターを使ったりと色々試行錯誤して、今までより角が立つような尖った音になるように。ボーカルはリズムやピッチも今までより気にして歌って、リバーブも減らしました。全体的に個性があるというよりは一般的に言う良い音に一度挑戦してみたいという気持ちがあったんですよね。

カメダ:現段階で自分たちのできることは出し切った気はしています。以前のアルバムは自分たちでは何もわからないまま周りに頼りっぱなしでバンドの勢いそのままに制作していたし、レコーディング期間も数日と時間なくバタバタしたまま終わったので、それに比べたらしっかりとプリプロや準備をして去年の春から約1年かけてレコーディングをやり遂げたのでそこは満足しています。

クマクラ:昔の曲から最近の曲まで、ここ数年のベストアルバムみたいな感じだよね。

タカヒロ:そしてあくまでまだここは通過点という意気込みでいたいですね。

ー今作の楽曲についてもいくつか聞きたいです。「Mellow Yellow」はこれまでのバンドのイメージとはガラッと変わった新鮮な1曲かなと思うんですが。

タカヒロ:そうですね。曲の雰囲気やサウンド面でも自分達のやりたい事がまた新たに拓かれた曲かと思います!

クマクラ:この曲に関してはMIXの時に試しにボーカルに歪みをかけたらかなり良い感じになったし、ライブでやるならこの曲が1曲目なのかなって考えながら作りました。

ー軽快なナンバー「Windy」、メロウで染み入る「Sun Shower」、歌詞や歌いまわしの譜割りも印象的な日本語のリードナンバー「Wall Flower」などは既に配信で聴けますね。

カメダ:「Sweet&Savage」はすごく思い入れがあります。個人的にとても辛いことが起こって精神的にかなりキツかった時期があったんですけど、メンバーのふたりはもちろん、周りの仲間や音楽のおかげでなんとかまた頑張ろうと思うことができて。それがちょうどレコーディングが始まる直前だったんですけど、そのタイミングで歌詞とメロディーが意識もしていないのにぬるっと一瞬で出てきたんですよね。今までそんな経験はしたことなかったから不思議だったんですけど、「よし!アルバム作ろう!」って意気込んで動き出せたきっかけでもあります。

ーはじめて聴いた時はそんな背景ももちろん知らなかったけど、率直にすごく良い曲だなって思うと同時に、あぁきっと大切な曲なんだろうなっていうのがなんとなく伝わってきて繰り返し聴きました。あと個人的にはデモ時代からのライブでのキラーチューン「I Just Fall In Love」の再録も嬉しいですね。

クマクラ:一番最初に作った曲ですね。良い音で録って聴いてほしいなって思ったので入れました。

伊香保旅行での一コマ

ー3人にとって真ん中に置いているものが長い付き合いの中で野球から遊びになって今はバンドであると思うんだけど、日常でもある暮らしのことも少しだけ聞かせてください。
例えばバンドと仕事の兼ね合いは調子どうですか?って話とか。

カメダ:簡単にまとめてしまうと3人とも内容は違えど工場みたいなところで働いてますね。工業高校出身なので。電子部品の開発や、メーカーとして全国飛び回ったり、サスペンションを作ったり。おれは色々と融通が効くから仕事が終わってからが本番って感じですけど(笑)。

タカヒロ:仕事って1日の半分以上の時間が取られてるんで生活のサイクルを作る上で重要ですよね。現状は私生活との噛み合いが上手くいってなくてもどかしい。

クマクラ:もっと楽しくて自分に合ってる仕事はないかなーって日々思ってます(笑)。

ーまぁやっぱり、みんな悩みながら働いたり暮らしたりしてますよね。そんな中でもずっとこの幼馴染とも言える3人でバンドを続けているのってロマンを感じます。

カメダ:もう皆まで言わなくても伝わるみたいな関係性ですからね。曲作ってる時にしろ、これはしたくないなんてことも基本みんな一緒なんで。だからいわゆる方向性の違いみたいなのものは今まで1度も感じたことはないです。

ー単純に気になったから聞くんですけど、3人とも1番高まった瞬間ってなにかあるのかなって。

クマクラ:それはやっぱり最初に3人でスタジオに入った時ですかね。「これはやべぇ!」って素直に思いました。ただブルーハーツとかゴイステをコピーしただけなんですけど「バンドってやべぇ!」って。今でもその時のことや感覚を覚えてます。

タカヒロ:おれはそのスタジオにも入る以前に、クマクラの離れの家みたいなところにみんなで楽器を買って集まって、本当に最初に音を出したときかもしれない(笑)。1ミリも演奏できてないのにめちゃくちゃ楽しかったのを覚えてます。

カメダ・クマクラ:それあったね(笑)。

カメダ:そこにもし付け加えるなら、最近ですけどアルバム制作の少し前の時期に、各々のバンドに対する意識や向き合い方がこれまでと明確に変わったなっていう実感がふと持てたことに感慨深くなりました。これまでも適当とまでは言わないですけど、深く考えずとりあえず楽しいからバンドをやっていた部分はあって。この歳になってバンドも10年一緒にやってきて、同じタイミングでただ楽しいというところからは脱却して、真剣な話も自然と3人それぞれの口から出るようになったことがなんかやけに嬉しかったんですよね。

ーいよいよ11/22がアルバムの発売日。先行販売ライブとして下北沢と宇都宮でレコ発が決まっています。その後のツアーの予定はどうなってるんだろう。行ってみたい土地や共演したいバンドも気になりますね。

カメダ:ツアーをまだ全然組めてはいないんですけど、いろんな街に行きたいとは思ってます。台風クラブは三位一体って感じでカッコいいし普通に憧れなので一緒にやりたいって言っておくだけ言っておきます。超右腕も好きで気になってますね。

クマクラ:Ululu、ハシリコミーズ、家主は好きで普段から聴いているのでもしそんな機会があれば嬉しい。

タカヒロ:北海道にもまた行きたくない?

カメダ:行きたいね~。日程的に夜の街にも繰り出せなかったし。前回はThe Sleeping Aides And RazorbladesのシラハマさんとMODERN GOODDAYSのコーキさんがジンギスカンに連れてってくれたなー。

ーさっきも話してくれたように大人になった実感もあるだろうから、さすがに地方へツアーに行っても、バカみたいなやんちゃエピソードはもうなかなか増えなそうですね。

カメダ:いや、おれらで各地にマーキングしていくつもりで楽しみます(笑)!

ーははは(笑)。やっとみんなの調子が出てきたような気がするけど、この辺でインタビューは終わりになります。長い時間ありがとうございました。
最後に、東京ではないひとつの地方・ローカルで音を鳴らす、バンドを続けるということを10年やってきて実感したことやこれからの意気込みを聞かせてください。

クマクラ:少しずつ増えてきた信頼できる人たちや仲間達と協力しつつ自分達の居場所を作りたいし、同時にそこが自分達を気になってくれたら気軽に来れて誰も嫌な思いをしない空間にできたらいいなと思います。

タカヒロ:前よりも地元を盛り上げていきたい気持ちが強くなりました。カッコいい人たちがいっぱいいるので!自分自身もその中の一員として、より生活もバンドもいい方向へと突っ走るつもりです!

カメダ:東京みたいに刺激的なパーティーが頻繁にあるわけじゃないし、地元のシーンみたいなのにも馴染みきれないままここまで来たので自分たちが楽しめる場所をその手で作っていかないといけないなと思いました。それがどんどん広がっていろんな人が色んなところから遊びに来たりしてくれたら最高だし。そのためにアルバムをいろんなところに届けたり各地でいいライブをして説得力をつけていきたいです!

11月22日発売
UNDER SOCKS / UNDER SOCKS

KKV-157VL
7インチ+CD
2,750円税込

7インチ収録曲
Side A : Wall Flower
Side B: Sweet&Savage
CD收錄曲
1.Mellow Yellow
2.Windy
3.Wall Flower
4.Alien
5.Last Dance
6.Sun Shower
7.Daydreaming
8.1 Just Fall In Love
9.Sweet&Savage
10.Dirty Waltz

レコ発

11月4日 (SAT) at 下北沢LIVEHAUS
W/ MEGA X 、Jurassic Boys
OPEN 12:00 / START 12:30
ADV ¥2500 / DOOR ¥3000

11月11日 (SAT) at 宇都宮HELLO DOLLY
W/ CAR10、CHUCK TAYLORS (OA)
OPEN 17:00 / START 18:00
ADV ¥2500 / DOOR ¥3000


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