千賀藤 隆

その昔、AIの応用研究に従事していた。あれから幾年も歳月が流れ、随分、世の中が変わった…

千賀藤 隆

その昔、AIの応用研究に従事していた。あれから幾年も歳月が流れ、随分、世の中が変わったと思う。ここ数年、AIに囲まれた社会での『人々の価値観』は、どう変化するのだろうと折を見て空想しているが、紹介する短編小説は、そんな空想を下地に綴った物語です。

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  • エッセイ集

    不定期に綴るエッセイ。普段の小説とは違い、起業・スタートアップ・イノベーション経営、AI研究などのネタが多くなると思います(実は逆で、普段、ビジネス系の話を書いてる私が、ここでは小説を投稿してます。なので、エッセイの内容がむしろ、普段のスタイル)。

  • 和海(なごみ)道場

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    「なごみ道」の活動報告や調理のヒント、旬の食材、地域の特産、粋なおもてなし術、お酒情報、などなど、今後、共同執筆者を増やしながら掲載していきたいと思います。

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SlideShareに関するある思い出と『シリコンバレーとベンチャー投資の歴史』

Rashmi Sinhaさんと話をしたのは2007年末か2008年初頭か?晴れた土曜の真っ昼間だった。当時は、まだ存在感が残っていたYahoo!のサニーベール・キャンパスで開催された小さなイベント、講演者は彼女一人だけだ。彼女が設立したSlideShareについて、起業の経緯やそのコンセプトに関するトーク。  東海岸のブラウン大学で博士号取得後、西海岸のサンフランシスコ湾北岸にあるカリフォルニア大学バークレー校でポスドクをしている時にSlideShareのアイデアを思い付い

    • (エッセイ)それは顧客の仕事ではない

       上司やコンサル、セミナーの講師からは市場調査(アンケートや顧客インタビュー、フォーカスグループ等)をしなければならないと言われ、一方「市場調査はすべきでない」という偉大な起業家・経営者も大勢いる。 市場調査はするな。それは君が既に知っていることを告げるか、君のやる気を削ぐだけだ。 - ジェームズ・ダイソン、ダイソン 創業者 (Don't do market research – it will either tell you what you alr

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        • ベンチャー・ファンディング概説

          シリコンバレーでは、時々、即席のベンチャー・ファンディング講座があった.起業経験者や財務の専門家は、同僚やホッケーのチームメイトにもいたし、隣人もスタートアップのCFOだった.それだけでなく、ベテラン技術者もベンチャー・ファンディングにかなり詳しい.何故なら、自分が持っているストック・オプションの価値に大きく影響するので. 財務の専門家による説明は概して面白くない、文字ばっかりで分かりにくい.対して、技術者による即席講座は、ホワイトボードに図やグラフを描き、ハッピーや失望を

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        • 和海(なごみ)道場
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          AIについて語る時(3)AIに包まれたなら 〜 自動運転を例に

          アップルの故スティーブ・ジョブス含め、シリコンバレーでよく引用される格言がある。史上最高のアイスホッケー・プレイヤーと称されるウェイン・グレツキー(カナダ)の言葉だ。「なぜ、ここまで偉大な記録を残すことができたのか?」という質問への返答。 “I skate to where the puck is going to be, not to where it has been” – Wayne Gretzky パックとは、ホッケーで使うボール(円盤、大判焼きみたいな形・大きさ

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          AIについて語る時 -(2)大いなるAIの力には、大いなる責任が伴う

          鉄腕アトムは中に人間が入ってないので、当然、AI。ドラえもんも、アラレちゃんも、キューティー・ハニーも、ロボコンもAI(古くて御免、最近の知らないので)。日本作品に登場するAIは、大抵、正義の味方か人間の友達って設定で、結構賢く、可愛いとか、お茶目とか、好印象なのが多い。一方、ハリウッド映画では、ターミネーターはもちろん、ロボコップの敵方ロボット最悪だし、2004年公開の「I, Robot」も追いかけてくるロボット軍団怖すぎだし、インターステラーに出てくるロボットはお馬鹿だし

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          AIについて語る時 - (1)「AIって何?」と聞かれた時の若干の恥じらいと躊躇について

          1990年代、僕は某大学院の修士・博士課程で人工ニューラルネットワーク関連の研究に従事していた。図書館にはAIバブル期に出版された豪華な本が並び、MITのマービン・ミンスキー教授やスタンフォードのジョン・マッカーシー教授など、AI分野の大物たちが登場した一昔前の専門誌が色褪せつつある時代だ。  当時は「人工」なんて枕詞はなく、単にニューラルネットワーク、あるいは、ニューラルネット、もっと簡単にニューロと呼んだ。今ではニューラルネットワークは、複雑怪奇化してディープラーニングと

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          “MARKETING MYOPIA(近視眼)”

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          (エッセイ)シリコンバレーの投資家、あるスタートアップの死

          仕事でシリコンバレーと関わり始めたのは、ドットコム・バブル崩壊前夜の2000年頃。   某大手日本企業で大学院時代の研究を基に新製品を幾つか開発した後、研究所長に直談判して、新事業部門が始めたベンチャーキャピタル(VC)との共同新事業プロジェクトへ異動。いわゆるコーポレートVC的なプロジェクトだが、その活動でスタートアップ(ベンチャー企業)だけでなく、シリコンバレーVCとも付き合う機会を得た。   日本のVCとも顔を合わす機会があったが、シリコンバレーのVCとは随分違った

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          AIについて語る背景

          “Decade”という単位で括らねばならぬほど昔となってしまったが、大学4年から大学院博士課程を通して、今で言えばAI(人工知能)と呼ばれる技術の応用研究をしていた。あいまいさを許容するコンピュータから始まり、人間のように『思い込み』してしまうコンピュータ、なんて研究もした。が、研究をはじめた当時は、まだ第2次『AI冬の時代』の影響が色濃くあり、AIと名の付く研究には予算が付かなかった。結局、大学院在籍中、一度たりとも自分の研究に『AI』というタグを付けることはなく、いや、許

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