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講孟余話

幕末の思想家、教育者であった吉田松陰が獄中にあった際、語った言葉をまとめたものがこの『講孟余話』であったといます。

「敵の弱を頼まず、己の強を頼め」
「なぜ国の危機を見て見ぬふりなのか」
「時代のせい、運命のせいにするな」
「自分をバカにするものは亡ぶ」
「非常の時代には、非常の生き方がある」
などなど、松陰先生の激が今にも聞こえてくるようで、現代にこそ読まれるべき書であるなと感じた次第です。

黒船が来航した時代も日本にとって大変な時期であったと思いますが、現代においても、危機はそこら中にあり、多くの人がその危機に気付いていない、もしくは気づいていないふりをして、問題を先送りしている分、今の時代の方が余計にタチが悪いと感じるのは私だけでしょうか。

そう感じているときに、「なぜ国の危機を見て見ぬふりなのだ」「時代のせい、運命のせいにするのか」「自国をバカにするものは亡びの道を行くぞ」と松陰先生の言葉は心に刺さりました。

他にも読書の要諦や教育の在り方についてなど、松陰先生の金言が至る所に散りばめられており、これからの時代に生きる若者たちにこそ、読んでもらいたい書物でもありました。

文語体だったため、音読し、一日一節ずつ、噛み締めて読み進めていったのですが、松陰先生の思いの幾ばくかでも現代に蘇らせていかねばという衝動に駆られました。

同時期に、数年前、漫画界から引退した少女漫画界の女王と呼ばれていた一条ゆかりの金言集「不倫、それは峠の茶屋に似ている」を併読していたのですが、こちらは現代を生きる女性に向けて、著者が語る人生訓をまとめたもので、内容自体は、男性の私にはとって、あまり参考にはなりませんでしたが、著者の人生が垣間見られ、興味深く読めました。

本書は著者最後の書下ろしのショート漫画「その後の有閑倶楽部」が付録で掲載されているというので、購入したのですが、30代となった有閑倶楽部のお馴染みのメンバーに再開できたのが何よりでした。

清四郎は実家の病院を継ぎ、魅録はパイロット、美童は外交官の姿は想像はつきましたが、野梨子が聖プレジデントの学園長となり、悠理はジョッキー、可憐は二度の離婚歴のあと、キャリアウーマンとして、女性陣が逞しく生きている姿には笑えました。

そして、久しぶりに再会をはたした6人が「寝ぼけた日本をたたき起こす」と宣言する剣菱万作のもと、政権奪取を目指し、有閑倶楽部が復活するところで書下ろしは痛快に終わっていました。

最後の最後で、両作品ともにつながる箇所もあり、こういった共時性は自分の中で大切にしていきたいと改めて思った次第です。

日本の行末、一体どうなるのでしょうか。寝ぼけた日本をたたき起こすアクション、できる限り行っていきたいと思います。

「凡そ読書の法は、我が心を虚しくし、胸中に一種の意見を構へず、吾が心を書の中へ推し入れて、書の道理、如何と見、其の意を迎へ来るべし」吉田松陰

講孟余話







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