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アマテラスの暗号

『アマテラスの暗号』 伊勢谷武 廣済堂出版(2020/10)

日本版ダヴィンチコードともいえる歴史ミステリー。
テーマとしては、日ユ同祖論を扱っているのだが、この著者の経歴がなかなかお目にかかるものではなく、興味をひかれた。
元ゴールドマン・サックスのデリバティブ・トレーダーで、現在は投資家情報関連の会社を経営しているとのこと。
ゴールドマンサックスといえば、言わずと知れた世界最高峰の投資銀行であるが、そこに寄せられる情報もまた、国家機密に近しいものまで、ありとあらゆる情報が集まってくると聞いたことがある。
おそらく著書も、国家のルーツ、タブー、国政の根幹に関わる情報を耳にすることがあったのかもしれない。
職業作家ではなく、デビュー作ということもあり、突っ込みどころは多々あったのだが、日ユ同祖論をここまで、エンターテーメントとして仕上げた技量には感心した。
日ユ同祖論を扱ったフィクションを読むのは、小池一夫先生の「アピル~赤い鳩」以来で、感慨深くもあった。
「アピル」はビッグコミックスピリッツで連載しながらも、打ち切りとなってしまった傑作だが、この打ち切りの理由を小池先生の晩年に伺う機会があり、訊ねたところ、神社本庁からの強いクレームがあった故と語っていたことが忘れられない。
日ユ同祖論を語ると一方的に陰謀論扱いをする輩もいるが、歴史を謙虚に学べば、頷くべき点は多々ある筈である。
本書の結末にて示されたエピソードは、自分の考察とは異なってはいたが、日本人とユダヤ人のルーツが重なるという現在、学界からは黙殺されている論考に対しての確信はますます、強まった。
日ユ同祖論を本格的に研究し、発表する気概のある歴史学者の登場を心待ちにしている。

「自分の思いを伝える事ができる言葉を知らないということは、本当に悲しい。だから、教育は大事だし、本を読むことも、映画を観ることも、多くの人に接して表現を学ぶことも、本当に大事。言葉は生きていく上での大事な武器だから」

小池一夫


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