お客さん物語
『お客さん物語』 (稲田俊輔/新潮社) 2023年9月刊
人気の南インド料理店「エリックサウス」総料理長が記した飲食店の舞台裏と料理人の本音と副題にあり。
過去に自分も飲食店でのバイトをいくつかやってきていたので、共感する箇所もあり、楽しみながら読めた。
本書の中でハッとさせられたのは「貪欲なのに狭量な日本人の味覚」と題された章で、日本人の「どこの料理でも食べてやろう」という貪欲さは、いったいどこからくるものなのか。
そして、その貪欲さは、「とはいってもそれは日本人好みにアレンジされていないと受け付けない」というある種の狭量さとも表裏一体であるという。
たしかに、日本にはカレーをはじめ、ラーメン、ハンバーガー、スパゲッティと日本風に味付けされた海外由来の料理はごまんと溢れている。
ただ、その要因は本書で解き明かされることなく、謎のままであったが、良い問いをもらった。しばらく、考えてゆきたい。
人の世に熱あれ、人間(じんかん)に光りあれ。