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日本の美学

『日本の美学 草舟言行録Ⅰ』 執行草舟 2022年6月刊

本書、帯には「日本の本質とは何か、人間の本源とは何か」と記されており、「生命燃焼と武士道」「日本人の読書」「これからの日本を考えるために」「政治家に必要な美学」と題された4つのテーマから現在の日本に必要とされる美学が説かれておりました。
今年の参院選にて国政政党となった参政党、神谷 宗幣氏の主催する団体での講演内容を言行録としてまとめたものだそうで、私は第3篇「日本人の読書」に記されていた美学には特にシビレました。
まず、どの様な読書をするかということで、著者は「正しく死ぬために読書はある」と説きます。
「よく生きよう」と思って読書をした場合、そのほとんどが欲望に変わってしまい、真の人生や生命の本質を知り得ることはできないと断じておりました。
そもそも本は知識を減らし、書いた人の魂と触れるために読むのだから、反知識であることが重要であるというのです。
知識を得ようとすると書物は単なるハウツー本となってしまい、自己の魂の錬磨するものとは別ものになってしまうことを指摘してもおりました。
また、本をハウツー本として読んだ場合、自分の損得だけを考える卑しい人間になると警鐘を鳴らしておりました。
当然、最近流行っている速読や瞬読などで得る読書は単なる情報で卑しい欲望と一刀両断で、読書というのは著者との魂の触れ合いであるのだから、ゆったりと読むのがよい、と痛快でした!
そして、読書とは自己の魂を揺さぶる行為であるのだから、高貴かつ崇高な人類的な古典を読むことを提唱しております。
本書、「志の文学便覧」と題され、古今東西の歴史的名著が紹介されてもおりましたので、今後の読書の参考にしていきたいと思いました。
他、本音で書かれた本を現代人は嫌うが、キレイごとで書かれた本は、何冊読んでもハウツー本の知識にしかならず、価値がないとし、本音で書かれた書物の代表として、ヒトラーの「我が闘争」を挙げていたのも大変、印象に残りました。
「我が闘争」には人間が持っている不合理、苦悩、本音が赤裸々に語られており、また、現代の政治家が持ちえない言行一致のヒトラーの姿勢から一読の価値ありとされておりました。
なお、子供の読書に関しても触れられており、大変、参考になりました。
子供たちにとって、読書をしなければ、知識は増えても、魂が未熟なままであるから、永遠に子供のままであるというのです。
魂が未熟ままというのは、要するに幼稚であることに尽き、テレビなどを中心とした生活から成る悪ふざけや茶化しあいが主体の軽薄短小な生き方であると言い、本当にその通りであると感じた次第です。
いい大人がこの幼稚であることを厭わない光景は日常のいたるところで目にし、怒りが湧いてくるので、著者の説く魂のための読書、読書の美学を実践していこうと改めて意を決しました。
振り返ると私自身の読書観は、好奇心のおもむくままにが中心であり、幼少期から、自身の興味のあるものを片っ端から手にとり、本を読まない日はなかったのですが、魂を磨くための読書には程遠く、ごくまれに自己の魂と共振する書物と出会いはするものの、自己の幼稚性を払拭するにはまだまだ至っておりません。
どこまでいけるかわかりませんが、美学に貫かれた読書道ともいえるこの道を死ぬまで、突き進んでいけたらと今は思います。
いやー、本書、最高でしたよ!

「良書を読むと、時代にふりまわされない存在としての自己確立が進んでくる。そして何よりも、過去の偉大な人々と触れることにより、人間の持つ価値に目覚める」執行草舟






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