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『アーバンサバイバル入門』

『アーバンサバイバル入門』服部 文祥(はっとり ぶんしょう)2017年5月刊  deco

食料を現地調達し、装備を極力廃したスタイルでの登山を実践する登山家、服部 文祥氏の都会での生活が記されているのが本書となります。

タイトルでもある「アーバンサバイバル」とは都市で猟師のように「獲って殺して食べる」を実践することであるといいます。

衣食住をできるだけ自分の力で作り出すということから、著者は身近なミドリガメやザリガニ、シマヘビを家族と食べ、ニワトリやミツバチを飼育し、庭で排便し、菜園の肥料にしていました。

著者の自宅は横浜市内にあり、奥様と10代前後のお子様3名と暮らしており、その姿が本書掲載の写真に収められておりました。

本書、写真がふんだんに使われており、ハチミツの採取の仕方から、ミドリガメやハクビシンなどの小型動物の解体方法まで、記されており、大変、参考になりました。

なかでも、ミドリガメは街中だけでなく、山中も含めて、一般的に調達できる食べ物の中で、圧倒的に旨かったと語られており、いつか、必ず食べてみようと思いました。

3人の子供たちがおいしそうに食べている写真もあり、黙々ととりあうように食べていたというのですから、相当、美味しいのでしょう。

ウシガエルやアメリカザリガニもみんなが食べるようになれば、あっというまに外来種問題は解決すると語られており、確かにと思いました。

ザリガニは以前、素揚げにして食べたことがあり、美味しかったことは覚えているのですが、まさかミドリガメがそんなに美味しいものとは思わず、本当にびっくりでした。

本書、他にも日曜大工による家の修繕や薪ストーブの設置、服の修繕まで、衣食住にわたり、アーバンサバイバルの手法が記されておりました。

また、著者は普段、会社員として都内で働き、このような生活を横浜の郊外で行っているとのことだったので、読んでいると、なんだか自分も出来るような気がしてきてしまいました。

なお、巻末にて著者は「考えることと、体を動かすことは別のようで、つながっている。行動し、手応えがあったからこそ、思いつくことは多い。触ること、手にもってみること、すこしやってみることでわかるというのは、誰でも経験があるだろう。そういうときは、脳で感じたり考えたりしているのではなく、体で感じ考えている気がする」「身体能力は思考力と密接に関連しており、私はいつも、体全体を動かしながら考えている気がする。そういう思考はとても気持ちがいい。だからアーバンサバイバルは気持ちがいい」と語っており、大変、共感できました。

著者のようなアーバンサバイバルとは程遠い生活の私ですが、毎年、夏は魚突き用のヤスを持って渓流にゆき、魚を追いかけております。

獲れても獲れなくとも、毎回、清々しい疲労に包まれ、川をあとにすることができるのは、体全体を動かしながら思考錯誤し、魚を追う、その行為がとても気持ちいいからなのでしょう。

今後、ウクライナ紛争に端を発し、世界的な資源・エネルギーの高騰、食料危機は今まで以上に、我が国に深刻な影響をもたらすと感じております。

その際、このアーバンサバイバルの思考は、多くの人にとって有益なものとなるのではないでしょうか。

さて、今夏も渓流におもむき、たくさん突いてこようと思います!

「衣食住という生きるうえでの基本的なことを、できるだけ自分で楽しむ。それだけで人生は楽しくなる」服部 文祥(登山家)






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