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ADHD当事者のための起業の勧め

Xを見てたらこんな記事が。

ADHD当事者のための外資IT営業のすすめ

僕もまぁまぁ気合の入ったADHDなので共感するところが多く、これは希望の書だな、と思いました。

こういう情報を発信するのはいいことだと思ったので僕もADHDの起業家として筆を取ります。

0. 僕たちはなんのために生まれたのか

本記事は基本的にtips的な内容ですが、本件に関する熊谷の立場を明確にするため、最初だけ思想的なことを言います。
僕自身はADHDのような発達障害と呼ばれる形質が人類の遺伝プールに一定で残っている理由は「余計なことをするため」だと思っています。
僕らは定型発達の人からするとマジで余計で役に立たない行為に価値を見出し、ぼく個人の趣味で言うとまじで売れてない海外のインディーズバンド探索とか、海外の間違った漢字アパレル収集とかがそれに当たります。
多分そういうよくわからない熱意の中で、最初に火を起こした人とか、最初にウニ食った人とかが確率的に出てきて人類のステージを広げているのではないでしょうか。

僕はたぶん唯一の博士号を持つ人材系ベンチャーの創業者です(他に誰かいたら教えてください、友達になりたい)。なぜかというと博士を取るような人はあんまり人材業みたいなやくざでレガシーな業種を選ばないからです。でもやってみると研究経歴があるからこそ下せる経営判断はいっぱいあるし、局所的・短期的には合理的でない判断が大局的・長期的には合理的になることも世の中にはよくあります。

なのでADHDの人たちのよくわからない情熱によるよくわからない起業が増えると良いと思っており、そのためのtipsとして本記事を記します。

1. BtoBでやろう

細かい四則演算を詰めて、営業利益率などを常に意識しながら経営の意思決定をする、みたいなのは僕たちには無理です。
単価が低かったり広報・マーケ費用をシビアに管理しなきゃいけないBtoCビジネスは基本的に向いていないと思います。BtoBで起業しましょう。

2. COO入れよう

とはいえ細かい四則演算を詰める役割の人はどのみち必要です。うちはフルコミットのCOOは居ないですが、事業開発系のポジションでめっちゃ細かい数字に強い人がいます。「そういう人がいる」ことが重要で、「経営マターとしてやんなきゃいけないけど自分の脳の特徴として全然得意じゃない仕事」をノータイムで他の誰かに任せられる体制が重要です。そういう人を探しましょう。

3. 税理士はいい人を

税理士さん(会社の規模によっては社労士さんも)はADHDが会社を運営する上でとても重要なピースです。乗り換える際のスイッチングコストも割と大きいので、ちゃんとした人を早めに探したほうがいいです。補助金の申請とかで財務状況の把握が大事だったりするので、意外とペイする出費でもあるのでケチんない方がいいです。

4. SaaSの使い方にこだわる

とにかくコミュニケーションを型にはめた方がいいのでSaaSは重要です。
しかしSaaSを増やすとどこを見たらいいのか分からなくなってキツくなるので、うちでは非同期コミュニケーションツールはslack (社内コミュニケーション)とgithub (プロジェクト管理)、gsuite (ドキュメント管理など)ぐらいにしています。trelloとかsalesforceとかhubspotとかはちょっと試したこともありますがツールの増加に耐えられなさそうだったので諦めました。

5. リモートで完結するお仕事に

オンサイトの移動や出張に関して他の人よりもストレスがかかるので、外に出るとパフォーマンスが落ちます。
なるべく一定の環境で仕事をできるビジネスを選びましょう。

6. 社員と飲まない 遊ばない

ADHDの特徴として言っちゃいけないことを言っちゃうというのがあり、これを会社の上下関係の中でやっちゃうとハラスメントです。
多分そういう発言をしたら相手が気にならなくても自分が自己嫌悪になってパフォーマンスが落ちるので、そもそもそういう場を作らない方がいいです。オンサイトでのコミュニケーションを極力取らないことによってだいたい防止可能だと思います。

7. そういう人と会社をやる

オンサイトで毎日顔を突き合わせるのは一番簡単なマネジメントの方法なのですが、飲み会をやんないしフルリモートなので、それでも仕事ができる奇特な人と会社をやる必要があります。
対面でのコミュニケーションが全く存在しない環境でモチベーション高く働き続けられる人はマイノリティです。よく見極めてマッチする人を探しましょう。

8. 楽しい仕事をする

ADHDの特徴として、楽しい作業なら無限にできるけど興味ない作業は全然できないという点があり、モチベーション管理の重要性が他の人に比べ高いです。報酬系がぶっ壊れており金銭的なメリットがモチベーションにあんま繋がらないので、「儲かる」以外の何かを常に探す必要があります。
仕事をしていて「楽しくないな」と思ったらその楽しくなさの正体を言語化してみるとビジネスモデルやシステムの改善につながることも多く、自身の楽しさの追求は結果的に (もし競合がつまらない仕事の仕方をしている場合は) 競合優位性に繋がるのではないかと思います。

9. ソーシャルビジネス以外の選択肢は無い

これも前項に関連しますが、社会的に良くない事業はモチベが維持できないので実行不可能です。僕のような種類のADHDの人にとっては、そもそもソーシャルビジネス以外の起業の選択肢が無いと思います。ソーシャルグッドと持続的なビジネスを両立させましょう。

10. 近づきたくない人とは距離を置く

経営者はいろんな人と話す機会があります。「この人と仲良くなるのは僕の正義感に反するな」と感じる瞬間も結構あります。だいたい得るものないので早めに距離を置きましょう。

11. 経費精算をスマートにしよう

コンビニでの買い物とか、交通費の精算とかを細々とやるのは僕たちには無理です。経費精算がめんどいので役員報酬を上げるとかも可能ですが、そうすると税金とか社会保障費が爆上がりします。会社のカードを作るとか、出張の際は細かい飲食も含む日当の形で出すとか、経費精算をスマートにする工夫を早めにしないと長期的にまぁまぁ損します。
とはいえ、たとえば「契約書に200円の収入印紙を貼って郵送」みたいな場合、封筒代や郵送費と収入印紙で課税区分が異なり登録がめんどくさい上に総額が1000円以下とかなので諦めて私費で出すことも多いです。

終わりに

ADHDの人が起業に向いているか?と言われると、個人のリスクや幸せという点ではNOです。多分、失敗確率は定型発達者の人よりも高いです。とはいえ、不定形な発達をした人がよくわからない会社をいっぱい作った方が、たくさんの屍の上に真のイノベーションが生まれるのではないでしょうか。社会のためにはあなたたちが起業した方がいいと思います。なんかでよければいつでも相談乗りますので、起業を悩んでいる方はお気軽にお声がけください。ではでは。


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