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「正体」 染井為人 ※ネタバレあり

読み終わってしまった。

あらすじ
埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し、死刑判決を受けている少年死刑囚が脱獄した。東京オリンピック施設の工事現場、スキー場の旅館の住み込みバイト、新興宗教の説教会、人手不足に喘ぐ老人ホーム。様々な場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ、必死に逃亡を続ける彼の目的は。その逃避行の日々とは。



まるで彼と一緒に逃亡生活をしているみたいな緊迫感だった。彼が潜伏先を変えるたび、きっかけが起こるたびに不安と孤独と絶望を感じた。
何故彼はそこまでして脱獄を図ったのだろう。
読んでいくうちに彼の人柄、聡明さに胸を締め付けられた。

冤罪が恐ろしい。
一度疑われたらそれを覆すことの難しさ。
悔しくて悔しくて読み終わってからもずっと頭の隅には悔しいがある。

彼はたくさん嘘をついた。
だが彼の中の良心には正直だった。

最後、作者の染井さんは
残酷な死を与えて本当にすまなかったと詫びている。

物語はフィクションだが、彼はいるのだ。


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