20240320

 激しい風雨に見舞わっれる春の嵐らしい不安定な天候だった。春分の日だが、まだ寒い。今年の春はずいぶんと遅れているようだ。桜も今月はまだ満開にならないだろう。こういう日は家で映画でも観るに限る。
 市井昌秀監督の映画『箱入り息子の恋』を観た。星野源が映画初主演を務めたことで知られる。三十五の友達も彼女もいない独身男が見合いで知り合った全盲の女性と恋に落ちるラブストーリー。ひと昔前のジェンダーロール的価値観が乱れ飛ぶ前半に危うさを感じつつも、極端な行動と事件、予想外の展開によって物語としては面白い作品だった。ちょうど、イオンシネマで車椅子の観客が一番前の専用席ではなく、中央のリクライニングシートに抱きかかえて移動を要求し、来館を断られたという出来事が炎上していたので、バリアフリーについて考える上でも示唆的であった。映画では、星野演じる健太郎と夏帆演じる菜穂子が初めてのデートで吉野家に行く描写がある。もちろん、吉野家は全盲や車椅子のユーザーに対応した造りになっていない。ここでは菜穂子に注文の仕方や紅しょうがの位置を教えて二人で食べる微笑ましいシーンだが、後半では菜穂子が一人でこの吉野家を訪れる重要なシーンの伏線になっている。作品自体は十年前のものだが、吉野家はこの作品のエンドロールにも出てくる協賛企業である。にもかかわらず、この十年で吉野家ははたして店舗やシステムのバリアフリーを進めているだろうか? わたしには全く変わっているように見えない。企業や自治体は障害者を想定した場所づくりを行う必要があるだろう。まずそこから始めなければ、いつまでたってもバリアフリーは実現しない。

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