20221201

 空を灰色の雲が覆う一日で、空気が冬らしく冷たかった。師走、ついに2022年も残りひと月となった。破滅派主宰の高橋文樹氏のスペース「ふみちゃんねる」でケイトリン・ローゼンタール『奴隷会計』(川添節子訳、みすず書房)が取り上げられていた。著者の経歴が面白い。マッキンゼーに二年間勤め、彼女は自分がやっていることについて疑問を持つ。二〇代前半の人間が会議室でプレゼンした一、二時間で大企業で大量の雇用が切られ、人々の人生が狂わせられる。はたして自分がやっていることは正しいことなのか、彼女は米国における奴隷制度の研究の道に進み本著を上梓した。現在も企業の作業管理の際に用いられる「ガントチャート」は、もともとアメリカ南北戦争で没落した家に生まれたヘンリー・ガントによって考案された。ガントチャートそのものが完成したのは、彼が経営コンサルタントとして成功した第一次大戦時だが、もともとは南部のプランテーションで用いられていた奴隷管理の工程表の応用だったという。奴隷と聞くと、あまりイメージされないが、奴隷にも金は支払われていた。しかも安い買い物などではなく、当然、衣食住に関する経費がかかる今でいう車のような価値観だった。そこで事業主は奴隷を数値化して彼らを効率良く管理することを始めた。さらに、毎年のようにこれらの管理表が書籍化されていた。この事業の流れがコンサルタントという職業を生み出した。つまり、彼女の直感どおり彼女の仕事は奴隷制度と歴史的に直結したものだった。そして、それはグローバル化した資本主義で世界を覆っている。

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