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新作映画2024

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2024年の新作ベスト選考に関わる作品をまとめています。新作の定義は、今年も2022/2023/2024年製作の作品で自分が未見の作品です。
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#ヴェネツィア映画祭2022

ローラ・ポイトラス『美と殺戮のすべて』それは姉の見た世界、私の歩んだ記憶

大傑作。2022年ヴェネツィア映画祭コンペ部門選出作品、金獅子受賞作。1965年に自殺した姉バーバラに捧げられた映画であり、原題も診断書に書かれた"彼女が見た世界"を指す言葉から取られている。それはある意味で、後に妹ナンが歩んだ人生そのものであり、すべてが姉の"物語"に帰着しているようにも見える。ナンは冒頭で、物語と記憶の違いを語っており、生の記憶を残すために写真を撮っているとしていたが、姉の人生については"姉の物語"としていることが、まさに本作品のすべてを表しているのではな

フレデリック・ワイズマン『A Couple』レフ・トルストイの夕食を作ったのは誰か?

2022年ヴェネツィア映画祭コンペ部門選出作品。フレデリック・ワイズマンの数少ない劇映画。物語はレフ・トルストイの妻ソフィア・トルストイの独白のみで構成されている。主演のナタリー・ブトゥフとは2012年にエミリー・ディキンソンについての舞台『The Belle of Amherst』を上演してからの仲であり、本作品の企画は共同製作者でもあるブトゥフの方から「ソフィア・トルストイの日記」を見せたことで始まったらしい。この日記というのが、結婚してから同じ家で暮らしているのに二人共