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新作映画2024

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2024年の新作ベスト選考に関わる作品をまとめています。新作の定義は、今年も2022/2023/2024年製作の作品で自分が未見の作品です。
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#ベルリン映画祭2023

フィリップ・ガレル『ある人形使い一家の肖像』ガレル家子供世代の将来は如何に

2023年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。俳優になる10年前の1947年、フィリップ・ガレルの父モーリスは人形劇団に入団し活動していた。1950年にはクロード=アンドレ・メッサン、アラン・ルコワンと共に"Compagnie des Trois"を創設し、各地を公演して回った。本作品はそんなモーリスの経験を基にしているようだ。本作品に登場する劇団は家族経営であり、若い三人はフィリップ・ガレルの子供たち(ルイ、エステル、レナ)が演じている他、フィリップ自身ともいえる彼らの父親シ

エミリー・アテフ『密会 少女と馬飼いの男』ドイツ、おじさんに恋する少女の物語

2023年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。ダニエラ・クリエンによる同名小説の映画化作品。1990年夏、東ドイツの農村で暮らすマリアは写真家志望の恋人ヨハネスの家に居候していた。母親の勤めていた工場が東西統合によって閉鎖されてしまい、仕事にあぶれた母親は別れた夫の実家に居候していたからだ。そんな彼女は学校をサボっては昼間からドストエフスキーを読んで、ヨハネスの実家のブレンデル農場を手伝って過ごしている。ある日、近隣に暮らす独り身の農夫ヘンナーとばったり出くわし、その魅力に呑み

João Canijo『Bad Living』ポルトガル、愛が彷徨う迷宮ホテルで

傑作。2023年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。2024年アカデミー国際長編映画賞ポルトガル代表。ジョアン・カニホ(João Canijo)長編最新作二部作。同じ映画祭のエンカウンターズ部門に出品された『Living Bad』と対になっており、本作品ではホテル経営をする親子三代、同作ではそのホテルにやって来た客の目線で同じ時間の出来事を描いている。ホテルを経営する親子三代には極めて複雑な愛憎が渦巻いている。家長のサラはホテルのオーナーとして忙しく動き回る。その娘ピエダーデは