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新作映画2024

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2024年の新作ベスト選考に関わる作品をまとめています。新作の定義は、今年も2022/2023/2024年製作の作品で自分が未見の作品です。
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#カンヌ映画祭2023

ジャン=ステファーヌ・ソヴェール『Asphalt City』危険な有色人種と思い悩む白人救世主

2023年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。ジャン=ステファーヌ・ソヴェール長編四作目。カンヌでのプレミア上映時は『Black Flies』という題名だったが、いつの間にか変更されていた。物語は新人救命救急士オリーが、ペアを組んだベテラン救命救急士ジーンと共に様々な現場を体験する、というもの。いきなり銃撃戦があった公園に行かされて呆然とするオリーは、その後も様々な現場で様々な患者と向き合っていく。凶暴な犬に噛まれたチンピラ集団、過酷な食肉工場で倒れた男、ランドリーで倒れたホーム

ジョナサン・グレイザー『関心領域』アウシュヴィッツの隣で暮らす一家の日常

2023年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。2024年アカデミー国際長編映画賞イギリス代表。ジョナサン・グレイザー長編四作目。1943年、アウシュヴィッツ強制収容所の所長ルドルフ・ヘスは妻ヘドヴィグと5人の子供たちと共に、収容所に隣接するモダンな邸宅に暮らしていた。物語の骨格だけ抜き出してくると、豪華な社宅に住む仕事熱心な夫、一世一代の大仕事、転勤を言い渡されて動揺する妻、自然環境の中で伸び伸びと暮らす子供たち、というありがちな中産階級の物語だが、それら全てがホロコーストと結び

ナンニ・モレッティ『チネチッタで会いましょう』自虐という体で若者に説教したいだけのモレッティ

2023年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。ナンニ・モレッティ長編14作目。カンヌでの上映前にイタリアで公開されており、その時は結構評判が良くて驚いたのだが、カンヌでは案の定けちょんけちょんに貶されていた。映画は映画監督に扮するモレッティが新作映画の準備をしているシーンで幕を開ける。1956年ハンガリー動乱の時期に、イタリア共産党クアルティッチョロ支部に招かれてローマに来たハンガリーのサーカス団の物語らしいが、開始5分で"イタリアに共産主義者いたんですか?!"とか言うアホな若い